第3話 神様の再会。
この町にはたくさんの神社がたくさんある。それもかなり近い位置で。
だからこそ、神様のご近所付き合いがあるのではないか、と昔から噂されているのだ。ただ、実際に行われているのはご近所付き合いなんて可愛いものではなく、どの神社が一番盛り上がっているかの競争なのである。
元々小さい神社はそこまで競争心が高くはないのだが、広い、大きな上位の神社は我が一番だと全く譲らない。東西南北の4大神社も長いこと争った挙句、みんな違ってみんないいという結論を叩きだした。最近の一等賞のない運動会みたいだ。
ただ、4大神社以外から何か言われるとものすごい形相でおこったそうな。僕らの代ではない、先代であるかさえあやしい。もっともっと前の話ではあるのだが。
下位の神社が上位の神社にたてつくものではない、とそういう思想が流行っていたのだとか。師匠からの受け売りである。
では今はどうなのか。
南千枝神はとてもそういうことを気にしていると思う。自分が神になった責任感からかは知らないが、下のものから同等に見られることを極端に嫌う。さびれた神社の神である僕に対してつっかかってくるのもそれが理由なのだろう。
北稲荷神である僕はもちろんそのような争いに興味なんかない。そもそも自分の神社を廃れさせようとする大馬鹿野郎なのだから当然である。先代北稲荷神、僕の師匠もそのような争いに興味はなかった。ただ、上位の神社はらしい立ちふるまいをしろと常々言っていたが。
争いには興味がないが、誇りは持っていたのかもしれない。僕とは違って。
そして東奥女神もそのような争いに興味はないのだろう。真面目に4大神社として頑張ろうという気はあるのだろうが、必要以上に自分の力を使わない。
そして西大和神。争いには興味がないんだろうけれど・・・正直ここと争うぐらいなら争い自体をやめたくなるような、そんな神社であった。
というのが実際のところである。
下位の神社では今も頻繁に争いが行われているのだが、昨日話した烽火神のようにそんなものには興味がないという神もいる。
結局は神次第で神社次第なのである。
普通神社がさびれたのなら争ってでも自分の神社の地位を守るべきではあるのだろうけど、僕にはやはりそういうことは向いていない。
「で、どこに行くんですか」
ふとここで思考をやめ、東奥女神に何をするのか聞いてみた。
現在、僕は東奥女神に連れられて町に来ている。目的は遊びだということしか聞いていない。あとは・・・死んだ神社。廃れてしまった神社を見学しに、行くのである。
「遊びによ。どうせ最近神社から出てないんでしょ。あんたの顔を見たいという神もいるはずよ。みんな心配してるんだから」
それはそうだろう。僕はもともとあの神社の神になるような神ではなかったのだから。
「三月見神社。三月見神に会っていないんでしょう」
「三月見・・・」
僕の幼馴染である。
小さい頃、僕と東奥女神と三月見神の3人で遊んでいたこともあった。というか、神社の近所付き合いと言われているここらではほとんどの神と幼馴染みたいなものなのだ。もちろん、年代が同じなら、の話しだが。
「最近北稲荷神の顔を見ていないってつまんなさそうにしてたわ」
「そういえば・・・」
そういえば、僕が北稲荷神になってから一度も会っていないな。
「ほら、もう着いたわよ」
そう言って指さした先にあったのは綺麗な神社だった。鳥居の色がとても鮮やかで、歴史ある神社のうちの1つとは思えない。そして神々しさも失ってはいない。相変わらずの綺麗好きっぷり。
僕が神になる少し前に神になった、三月見神。久しぶりだ。
「三月見神、北稲荷神を連れて来たわよ」
まるで僕がものかのように言う。実際ものみたいなものだけど、どうせ断れないようなものだったし。
しばらくすると神社に風が吹いた。それは少し肌寒い今日のような日でも心地よいと感じられるようなもので・・・。
「久しぶりです、三月見神」
三月見神が現れたという象徴でもあるのだった。
「うん!久しぶりー、今は北稲荷神だっけ?うんうん、大きくなったね北稲荷神くん」
と、まるで久々に会う親戚のような口調でそういうのであった。
声はどこか子供っぽく、活発で元気。それは成長した今でも変わらないっぽい。そして相変わらずの君付け。神という名前自体がすでにくん、やら、ちゃんと同じ意味合いみたいなものなんだけど。
「元気そうでなによりです」
と言ったところで三月見神は東奥女神を見た。
「なんで敬語なの?」
「自虐みたいなものよ、きっとね」
という短い会話をかわすのであった。
「なんで敬語なの?」
「なんでと言われましても・・・三月見神、神社の格が違いますから」
「うん?なんでなんで。だってどう考えても三月の神社よりもそっちのが格上じゃん。それだったら三月が敬語使わなきゃいけないぐらいだよ」
と本当に不思議そうに首をかしげる。
三月見神は自分のことを名前で言う。昔は名前が違っていたから一人称が三月ではなかったような気もするが、もう昔の名前を思い出せない。
そしてこいつは頑なに敬語を使わない。それは格上だろうが関係ない。その分、みんなと仲良く、みんなと親しいムードメーカーのような神である。
こいつぐらいじゃないだろうか、あの西大和神と仲良しなのは。
「今、僕の神社は廃れかけているので、すでに弟子もいませんし」
「弟子はうちも少ないけどなー」
まぁ、4大神社が弟子多すぎるぐらいだからな。
普通2ケタもいかないぐらいだと思うんだけど、4大神社は3ケタ、下手すると4ケタぐらいまでいくところもある。うちの神社は3ケタぐらいだったかなぁ。
「ま、いいや。久々に会えたし。でも神社再興した時には敬語外してね」
「いえ・・・」
目を逸らす。
ん?とまた三月見神は首をかしげた。
「こいつ、神社を再興する気なんかさらさらないわよ」
「え?」
あっさりばらされた・・・。
「えぇえええ!なんで、なんで!だってあの北稲荷神社でしょ!4大神社の!なんで再興しないの!?」
ほら、うるさい。
三月見神はもちろん師匠とも知り合いである。だからこその驚きなのだろう。しかしだったら僕が北稲荷神になったときも驚いて欲しかった。知り合いから聞いた情報だとこいつはまるで驚くことなく、にへへ、と笑ったそうだ。近所付き合いの情報はなめられない。
「それに先代になんて言うつもりなの!」
「いや、師匠はすでに僕がどうするつもりなのか知っていたと思います」
あの人が知らずに僕に神の座を渡すわけがない。神社を潰し、神の力で人を救おうとしているからあえて神の座を渡したのだろう。
「先代に怒られそうだけどなー。あの神社可愛くて好きだったのに」
「可愛い・・・?」
感性が分からない。
「その後はどうするの?もし、神社を潰すとして、その後。どこかに弟子入りしたりするの?」
「一応はそう考えています」
「じゃあもし行くあてがないならうちにきなよ。えへ、月見暇しなさそうだし!」
「三月見神、自分の暇つぶしのために神社潰すことを肯定しないの」
こういうやつなのである。
他のことはどうでもよくて、自分が楽しめればそれいい。それだけの神なのである。
「そういえばこいつ、神の力で人を幸せにするとか言ってんのよ」
「なんで全部赤裸々に伝えちゃうんですか!」
東奥女神・・・口が軽すぎ。
「それってでも禁止されてなかったっけ?大分前に月見もやって月見の師匠に怒られたことあるし」
「やったんですか!?」
すでにやってたのかよ。
「うん、軽いことだけどね。でもそれだけでもこっぴどく怒られたなぁ。神楽島神社のことを考えればそこまで怒ることも納得だけど」
「神楽島神社・・・?」
聞いたことのない名前が出てきたので思わず口に出してしまう。
「やっぱり知らなかったのね。神楽島神社のこと」
「割と有名な話だとは思うんだけど、先代北稲荷神とか知ってそうじゃない?」
「いや、師匠からは何も聞いてません・・・」
恐らくあえて話さなかったのだろう。そんなに有名な話なら師匠が知らないはずがない。むしろ知らなくていいようなどうでもいいことも知っているぐらいなのだから。
「神楽島神社、今現在まだ残っている有名な、死んだ神社よ」
今回は少し短めで。次回はもう少し長くなると思います。
ファンタジーバトルとかそういうかっこいいのも書いてみたいのですが戦闘描写などが苦手なのでなかなか・・・。
それでこういうバトルとかがない物語ばかりになってしまいます。
どうにかしたいとは思っているんですけれど・・・。
一応バトル系のものも書いているので頑張りたいと思います。
ではまた次回。




