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神様のご近所付き合い。  作者: 花澤文化
近所の神社の神様達。
10/11

第9話 神様の事実。

 北稲荷神社は歴史を持つ。古くさびれてはいるがそれはイコール長い間神社として奉られてきたということに他ならない。僕はそんな神社が大嫌いだったけれど、四大神社のうちの1つということを少しだけ誇りに思っていたということは否定しない。しかしその四大神社というものもすでに廃れた考えである。

 東奥女神社は人を持つ。広さはかなり広い方ではあるのだが、それも一般神社と比べてのこと。四大神社の中にはそれよりも大きい神社がある。しかしここほど人が多い神社はないだろう。参拝客は修学旅行期間でもないのにかなり多く、定期的に通うもの、日課のように通うものなど後がたたない。

 南千枝神社は総合的な神社である。そこそこ歴史があり、そこそこ人が多く、そこそこ広い。とはいいつつ広さでいえば東奥女神社よりも広いぐらいだ。オールラウンダーで短所が無い神社といえる。強いて言うなら短所はあの神様自身だろうか。結局何を考えていたのか僕には分からない。

 そして。

 西大和神社。四大神社の中でも屈指の広さを誇るとても大きな神社だ。人も多く、歴史もある。しかしさびれた印象はない。人でにぎわっている印象のほうがやはり強い。そしてまだこの神社には特筆すべき点があった。それはこの神社の神様である。

 僕は一歩一歩先へと進み、門をくぐる。実は西大和神社自体に入ったのは少し前のことであり、それでもまだ神様のいる場所にはたどり着かないぐらい広いということだ。

 東奥女神ももう飽きてきたのかけだるそうに歩いている。別についてこなくてもいいのだが、そう言ってはいそうですかと言う事をきくような神様ではないことぐらい理解している。

「何をしてるの?」

 相変わらず人を驚かす事が好きなようで、神様のいる場所まで歩いていた僕の足はその声で止まった。しかし僕らには通用しない。もう慣れたものだから。

 後ろを振り向く。

「誰も驚かないんじゃん。つまんなーい」

 そういう神様がそこにいた。

「ご無沙汰してます、西大和神」

「久しぶりー。みんな元気してた?あたしはもう超元気!」

 それはみれば分かる。それぐらい西大和神は元気そうであった。悪意のない笑顔。純真無垢。そんな言葉が似合いそうなそんな神様。

「で、何しに来たの?遊びに来てくれたとか?」

 そのセリフに思わずぞっとする。

 それは僕だけでなく、東奥女神も同じようであった。思い起こされる過去の話。この西大和神と遊んで死にかけた思い出。本当に神様に死の概念がなくてよかったと思った。

 それともこういうやつがいるから死の概念がなくなったのだろうか。

「いえ、今日は別の用事がありまして・・・」

 遊びの方向に流れたらまずいと思い、僕はそこで言葉を挟む。

「用事?あたしに?」

「はい。僕の弟子を返してもらいにきました」

 単刀直入にごまかさずはっきりということによってこの神様からは好感が得られるのではないかと考えてのことだったが、実際それは当たりだった。好感を得る事ができた。

 それが失敗だったと気付いたのは、西大和神の不気味な笑顔を見てからだった。

「なぁんだ、やっぱり遊びにきたんじゃん」

 何も遊ぶとは鬼ごっことかそういうのでなくてもいい。西大和神が楽しめればそれが遊びとなってしまうのだ。遊びになって、結局僕らがケガをする。

「ようやく気付いたんだね、先代北稲荷神の言いたい事に」

「言いたい事なんかあの人は持ってませんよ。本当に大事なところに限ってあの人は説明不足なんですから、いつも」

 今はどこにいるのかも分からない僕の師匠。

 何をしているのだろうか。案外こうして奮闘している僕を見てくれているのかもしれない。だとするとあまり無様なところは見せられないなぁ。また怒られる。

「じゃ、弟子は返すね。もともとあたしのではないし」

 そのセリフに驚いた。

「はい・・・?その何もしなくていいということですか・・・?」

「何かするって、だから元からあたしのじゃないって言ってるじゃん」

 なんで北稲荷神が何かする必要があるの?と本当に分からないのか首をかしげていた。

「それはそうなんですけど・・・」

 てっきり返してほしければあたしと遊べ程度のことは言うかと思って覚悟していたのだけど。

「じゃあ、これ。証明証みたいなもの。これを持っていけば、弟子は君の神社に自動的に移動することになるよ。ほら、あたしが預かっている弟子多いからさ、ここでぞろぞろというわけにはね」

 最初から僕が来る事を見こしていたようにその証明証を出す。

 僕は軽く頭を下げながら、その証明証を受け取ろうと手を伸ばすと・・・。強力な風。この風は。

「風神様・・・?」

 僕と西大和神の間に風神様が割って入って来た。

「やっほー、風神じゃん。一日ぶりー」

「ああ、そうだな。一日ぶりだ、雷神」

 この2人のやりとりは実は珍しくない。風神様は風神を受け継いで、お酒を飲まなければまあ、普通にその職務を全うしている。だが、雷神こと西大和神は違う。

 雷神を受け継いでおきながら、面白そうという理由で西大和神社の後を継いだ。弟子入りなんかせず、力で本来の弟子たちを薙ぎ払い、無理やり神様になったのだ。

 だからこの西大和神の遊びは恐ろしい。雷を前提とした恐ろしいものなのだ。

 風神様と同格なのだが、しゃべりかたからなぜか若く、軽い感じがしてしまい、思わず気がゆるんでしまうのも雷神様の恐ろしいところかもしれない。

「んで、なーに慌ててるの?」

「お前のその証明証、儂から北稲荷神に渡そう」

「どうして?」

「お前が雷を準備している気配がしていたのでな、どうせ渡して気が緩んだ瞬間をばちばちといくつもりだったのだろう。無駄なことだ」

「ちっ、つまんねー。なんでお前が近くにいんのよ」

 と言いつつ、西大和神は風神様に証明証を渡す。

「ま、今回は邪魔が入ったけど、次は遊ぼうね、ばいばい」

 目の前から西大和神がすーっと透明になっていくように消えた。消えて見えなくなった。

「風神様、ありがとうございます」

「いいや、あいつのそういうところには儂も辟易としているからな。ほら、これを持ってさっさと神社に戻れ。これが最後なのだろう」





 北稲荷神社。

 僕はそこで力を確認する。今まで僕が得てきた力を確認していく。本当に最初とは比べ物にならないぐらい力が溢れてくる。

 これでこの神社がつぶれることはなくなった・・・はずだった。

「足りない・・・」

 力が足りなかった。しかし弟子はこれで全部のはずだ。じゃあなんで。もしかして・・・一度潰れる寸前までいったせいでさらなる力が必要となっているのではないだろうか。

 そんな話聞いたことないけれど、元々神社が潰れそうになることに直面することなんてあまりない。前例がなくてもしょうがないのかもしれない。

「どう・・・する・・・?」

 考えても、もう手はないし、時間も無い。はやくしなければこの神社は潰れてしまう。あの女の子の願いと共に消えてなくなってしまう・・・!

「あきらめるしかないのか・・・?」

「馬鹿者が」

 声が聞こえた。

おそらく次で終わりではないかな、と思います。まだ続きを書いていないのでなんとも言えない状況ではありますが。


短めにすぱっと終わらせるつもりだったのですが、案外時間がかかってしまいました。次の更新ははやめにしたいと思います。


ではまた次回。

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