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神様のご近所付き合い。  作者: 花澤文化
プロローグ
1/11

北稲荷神。

 僕の生まれは特別だ。

 僕は北稲荷きたいなり神社というある神社に生まれた。それは限りなく地味で、他に有名な神社や寺があるこの京都では全く目立たない存在であった。近所の子供がお賽銭を投げたりしている程度であり、さびれた神社だった。

 それでも僕は特別だ。

 なぜならその神社自身が僕だからである。そのさびれた神社を前の神様から受け継いだ、8代目北稲荷神社の神様なのである。

 さびれた神社を継ぐことなど嫌でしかなかったわけだけど何がどうしてこうなったのか、知らず知らずのうちに僕はこの神社で神様をやっている。

 人は来る。子供ばかりで主に神社のまわりで遊んでいるだけだ。でもお客様である。お賽銭を投げれられようが投げられなかろうが、できる限り願いを叶えてあげたい。

 こんなさびれた神社にわざわざ来てくれているのだから。

 こういうことを言うとむやみやたらに神の力を使うんじゃないと先代の神様に怒られてしまう。実を言うと僕と先代である7代目、北稲荷神はあまり仲が良くない。師弟の関係なので仲がいいというのもどうにも変な話ではあるが。

 なぜならば、僕のやりたいことをさせてくれないから。

 神の力という便利なものがあるのならば、それを使ってみんなの願いを叶えればいいじゃないか。しかし先代北稲荷神はそれを大きく否定した。しかも大きな声で。

「ばかもん!」

 と叫んだ。

 懐かしい、というほど離れてはいない記憶。あの時は確かまた喧嘩になったんだっけ。

 先代北稲荷神は、

「勝手につかっていい力などではない!」

 とさらに叫ぶ。

 しかし北稲荷神、と反論しようとすると、

わしはすでに北稲荷神ではない。その名前はお前のものだ」

 その言葉には驚いた。

 僕はその時この神社を継ぐ気なんてさらさらなかったからだ。先代北稲荷神には多くの弟子がいた。僕のことをよく一番の問題児なんて言っていたから僕に継がせる気なんてさらさらないと思っていたのだ。だから安心しきっていた。

 頃合いを見計らって弟子をやめ、どこかもっと綺麗で美しい神社の神様に弟子入りでもしようかと企んでいた時期だったのに。

 なぜ、僕なんですか。自分でも言うのもなんですが僕は人に迷惑をかける、自分勝手に動く、あなたのことをあまり好いてはいないという後継ぎに一番向いていない人間です。

「そこまで自分で分かっておいて直す気がないというのも問題だな」

 すごくふてぶてしく、そう言った。

 でも僕も譲るわけにはいかない。

 北稲荷神、僕は他にやりたいことがあるのです。他の神社に行ってそこの神様になるというやりたいことが僕にはある。だから、ここの弟子をやめようと思うのです。

「何を言っている。これからはお前が師匠だ。弟子たちに色々と教えてやらなければいけない」

 ちなみにたくさんいる弟子の中でそこの神社になれるものは1人しかいない。人という単位で数えていいのかは分からないけれど。

 ここ、北稲荷神社はさびれているが伝統がどうの、老舗のようだ、だので多くの弟子たちが集まっている。僕はただの小汚い神社にしか見えないのに。

 北稲荷神、僕はここの神社をよく思っておりません。綺麗な美しい神社に行きたいのです。

「みてくればかり気にしおって。うちの神社は五百年を超える歴史を持つ。そんじょそこらの50年やらしか生きていない若造などに負けるような神社ではないわ」

 いえ、ですが、人の少なさが半端ないですし、神様になるっていうよりただのお留守番じゃないですか。僕にはみんなを幸せにするという夢があるのに、こんな神社では叶えられません。

「・・・・・北稲荷神」

 師匠は僕のことをそう呼んだ。

「全ての人を救うことなど不可能だ。だからといって一部の者を幸せにしていいというわけではない。神は平等でなければならないのだ」

 それじゃ本当にお留守番じゃないですか。

「そうじゃない。神社に神がいるかいないかでは大違いだ」

 なんなんですか、それ。

「その神社から負のパワーがでる。今はやりのまさに逆、逆パワースポットになってしまうのだ。いるだけで、世間に影響しない程度のプラスパワーを送れる。それだけでいい」

 そんなんじゃ誰も幸せになりません。不幸にもなりませんけれど、幸せでもないですよ。

「誰かを幸せにしたらその分の不幸がいつか来る。永遠にどうしようもないのだよ。本人にその不幸がいくのならばまだしも、他の人に不幸がいった場合それは人為的なことだ。神為的なことなのだ。殺人などの犯罪のように加害者と被害者という関係性になってしまう」

 強く、師匠は言い放つ。

「神が加害者になることは一番いけないことだ」

 師匠はそういうと任せたぞ、といいどこかへいってしまった。

 懐かしくもない記憶。

 できれば忘れたかった記憶。結局なぜ僕をここの後継ぎに選んだのかは分からないままだ。きっと他の弟子たちから反対もあっただろうにそれを乗り越えてまで僕を後継ぎにしたかったのか。

 もしかしてあの師匠野郎、僕に嫌がらせしたいだけじゃないだろうな・・・。

 今日もこうして時間が過ぎていく。

 まだ朝ということもあり子供たちはいない。恐らく学校とやらに行っているのだろう。こうなってしまっては本当に暇だ。僕にも弟子がいればお留守番を頼んで他の神社にでも遊びに行くというのに、師匠の弟子たちが別の神社へと全員去って行ってしまった。

 すなわち僕は現在1人なのだ。

 今日は何をして時間をつぶそうか。

まだ終わっていないシリーズもあるのにどうしても書きたくて書いてしまったお話です。

神様が主人公で姿かたちの描写もない少し変な感じだったと思います。


他の連載作品もある、ということからというわけではないのですが、このお話は短めです。

恐らく10話前後・・・続いても15とかじゃないかなぁと。

次のお話も連続で投稿します。

次のお話でこの物語の雰囲気をつかんでいただけたらと思います。


どうか、よろしくお願いします。


ではまた次回。

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