クラセアル国
クラセアル
ディカルタ大陸の西に位置するクラセアルは南を海に、東と北を山麓に囲われた豊かな国である。
主な特産品は南海で捕れる新鮮な魚介類と山から伐採される木材、それから領地などから収穫される甘い果物と、土地に恵まれに恵まれすぎた国だった。
当然そんな国が他国から狙われないはずもないのだがクラセアルには二十七の騎士団が存在し、それぞれがクラセアルの領地一つ一つへと置かれ他国からの進行や魔物による被害を防いでいる。
さらにクラセアルは貿易にも強く南にある海より多くの国々へと国交の手を伸ばしており、ある国へは木材を、ある国へは食材を、または優秀な人材をと、今クラセアルが落ちればそれぞれの国にも多大なる被害が出ることは間違いない。
そんなクラセアルの西にある王都『ラクラス』
この街には王の住まう城が西側中央にあり、そこから南側を商業地区、東側を住居地区、北側を貴族などの居住区とした街全体を高い塀と深い堀で囲む一大都市だった。
宿屋『カッツァ』は南大通りに入り口を構え宿泊部屋を五十も持つラクラス一の宿泊施設としてその名を馳せ、今年十五歳となるアミルはそこに下働きとして二年前より住み込んでいた。
アミルの生まれは王都ラクラスより東に出て馬でも三日はかかるであろう農村で、夏から秋にかけて収穫される甘酸っぱい黄色い果物『キファ』の産地だった。
三年前、両親の死により一人となったアミルは父方の叔母を頼りにラクラスへとやって来て『カッツァ』に身を寄せることとなる。
宿屋を切り盛りする叔母・セファラはとても豪快で面倒見もよく、街での暮らしに戸惑うアミルに破顔一笑すると大きな声を上げた。
「大丈夫!アンタのことはアタシがちゃんと面倒見てあげるからね!その代わりしっかり働いてもらうよ!」
三十も後半となるセファラは縦にも横にも幅が広く、よく焼けた黒い肌もあってまるで太陽のような人だとアミルは思った。
父もまた縦にも大きく横幅もあったのだがセファラのようにふくよかと言ったものではなく岩のような筋肉の持ち主で、豪快に笑うセファラとは違いいつも不機嫌そうな顔をしていた。
一瞬本当にこの人は自分の叔母なのだろうかと疑ってしまったのだがアミルや父と同じ若草色の瞳であることに気づき、ふと両親を思い出してしまい店先で号泣してしまったのは良い思い出だ。
この日泣きじゃくるアミルの肩を抱くセファラをはじめ、これから生活を共にする『カッツァ』の従業員たちはアミルを暖かく迎え入れたのだった。




