prologue:アリスと愉快な仲間達
光も拒絶する漆黒の闇。暗くも冷たく息も凍るその場所に、数多の星達が輝いていた。それらはまるで自分達の存在感を知らすように、光っては消えたりと点滅を繰り返し、静かに辺りを照らしていた。
そんな星達から隠れるようにして、一隻の戦艦がひっそりと闇に潜んでいた。闇を貫く光沢の白銀。鋭く尖った船首に長く伸びた船体は、まるで槍を連想させる。船央には十六門の砲台が備え付けられ、常に標的に狙いを定めていた。
――白銀の槍。そう呼ばれても過言ではない。
だがしかし……、今のその姿に、白銀の槍と呼ばれる面影は最早無かった。輝く装甲はボロボロに崩され、船体のあらゆる所には穴を空け、そこから火花を散らす。船央に備え付けられた十六門の砲台は今や七門までと数を減らし、どれも砲身を自由に折り曲げていた。
――折られた槍。そう、その名前こそ、今一番よく似合う。ボロボロに崩れた槍は、その場に停滞したまま動く気配がない。星は静かに揺らう――その時だ。突如、闇が揺れ、星達がざわめき始めた。
戦艦だ。現れた戦艦は、地響きのような轟音を上げ、闇に隠れた戦艦の横を通り過ぎていく。
しばらくし、宇宙にいつもの静けさが戻る。それを合図に崩れた槍は溶けるようにして、更に闇へと姿を消して行った――。