Program1:Interference in space
――宇宙。それは私達、息をする者達の頭上で今も居座り続けている。遥か遠くに存在し、無限にも等しいその身を大きく広げ、漆黒の闇で辺りを染め、永遠と支配を続けていた。
全てのモノはその高さに屈服し、ただ仰ぐだけしかなかった。
決して入られる事のない領域。決して荒らされるはずがない領土。永遠の支配が続くと誰もが思っていた。
が、ある時何を思ったのか、その領域に踏み込む者が現れた。
――人。小さな箱庭で最も栄え、どの生物よりも優れた生き物だと自称する最も――痴がましい生き物。
その者達が未知なる場所に興味を抱き始めたのだ。
当初、誰もが容易だと考えていた。我々の力、知能を持ってすれば、直ぐに辿り着ける。
だが、それはすぐに気づかされる事になる。その遥か高さに――。決して楽ではない現実、無謀――挫折。
しかし、人は諦める事なくそれと向かい合った。幾日、幾年月、幾多にも及ぶ調査、開発、実験を繰り返し、そして数十年後……。
遂に人はその領域にまで手を伸ばす事に成功した。これは、箱庭に住む者達にとって新たなる可能性が生まれた瞬間でもあった。
だが、残念な事にその結果を不快に思う者が一人いた……。
――宇宙だ。宇宙は、私達人の干渉を頑なに断ったのだ。
そう、私達を迎え入れてくれたのは、母のような暖かさではなく、宇宙が解き放った極度の冷たさと息も出来ぬ漆黒だけだった。
息をするモノを拒絶する世界。その場所は正に、死とも呼べる場所。……私達の居場所など初めからありはしなかった。
目の前に突きつけられた現実に私達は絶望した。もはや、我々生き物は殻に籠もるしかないのだ。道が絶たれ、引き返そうとした。
その時だ、ある光が私達を迎えて入れてくれた。
その光は一つではなく、いくつにも点在し、死の世界を自由に駆け回っては、飲み込まれまいと辺りに眩い光りを散らばめている。
その姿に、私達の目は明かりを与えられ、凍えた身に暖かさが戻ってきた。
私達は気付かされた……、そこには冷たさや漆黒の闇だけではない。自身の小さな光を健気に灯らす小さな力、可能性が生き残っている事に……。
箱庭に戻った私達はすぐさま更なる死の世界へ干渉する為、再び、調査、実験、開発を繰り返した。
そして数百年後、私達は――成功した。