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テルール=テルミドールの傲慢革命  作者: らのあお
アウステルリッツ二帝一統決戦
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解釈違いだ


 頭は少しだけ痛いし、思考にも僅かにモヤがかかってる。加えて肺だって痛いし関節も痛む。本当に調子が悪い。


 「兵士諸君!君たちの目の前にあるのはオルストリカ帝国の帝都ウィンネスである!」


 だからと言って僕が彼らのの前に立って鼓舞しない理由にはならない。


 「まったく美しい都だ!しかし私は思う!このウィンネスは我らがパリスやアルビオンのロンディニオンと比べ明確に劣っている!それは何故か」


 言葉を転がせ。火を起こすんだ。戦争という特性上、元々一定の熱を持っているんだから革命の時よりも幾分も楽なはずだろ。


 「それは言葉が入り乱れているからだ!」


 それらしい理由をこじつけて敵を弱く見せる。いつもと同じやり方だ。


 「では諸君の言葉どうだ?このユーロで最も美しいラソレイユ語は分裂しているか?」


 いつものように疑問を問いてから解を思い浮かばせる。そしてそれを肯定する。勿論、解を思い浮かばぬものの為にサクラを使ってコソコソと解を話させる。いつもだ、本当にいつも通りのやり方だ。


 「否!諸君の言葉は流れる川のように一音一音が繋がって分たれない。故に我々はオルストリカなどという分裂した軍隊よりも強い!」


 火は起きている。だが一部、燃えてないところがある。それは知識階級から軍人になったインテリどもだ。彼らは教養としてオルストリカの文芸等を嗜んできた為、オルストリカ人が対して我々ラソレイユ人と対して違わないと知っている。だから今度は理屈を立ててアプローチをする。


 「想像してみろ!君の部下の上官が違う言語を話していて、それで作戦が成立とすると思うか?」


 「無理だ!オルストリカは戦略を立てれない。故に!戦略で上回る我らにオルストリカが勝てる道理はない!」


 「だからこそ諸君!ラソレイユの、太陽大陸軍(グランソレアルメ)の力を持ってしてウィンネスを滅ぼし、時代遅れのオルストリカにその最強たる力を思い知らせろ!」


 これで全ての人々の足元に火がついた。あとはこのままウィンネスにぶつけるだけだ。


 「オルストリカをぶっ潰せ!」


 サクラに叫ばせることで方向を決める。これでもう充分だ。僕のやるべきことはやった。いつも通りできた。

 演説から数時間経って戦争が始まる。まずは農民兵を突撃させ突撃させて橋頭堡を確保、その後に学者隊を前面に出して八八式の圧倒的な火力で制圧する。


 「戦況はどうかな、将軍」


 「問題はありません。想定通りの死傷者数で御座います」


 開戦から3時間、南の東の橋が落とされ彼の方角の先鋒が全滅。しかしその甲斐あって東に橋頭堡を確保し、そこから学者隊を投入し、この7割を失いつつも敵前線を突破。現在は市内での乱戦に発展している。


 「随分と多く見積もっていたものだな」


 「当然です。元々かなり無茶な作戦でしたから」


 「そうか、あと何時間で落ちそうだ?」


 「わかりません。すぐかもしれないし、半日後かもしれない。少なくとも、今日中か、それか明日のうちに落ちます」


 私は戦場において、士気を高める道具にしかならない。よって戦場を己の感覚としてしらないから、ただどこの部隊がどのくらい死んで、どの部隊だ敵のどの部隊を殺した、そんな感想しか抱けない。


 「大統領閣下、正直に言わせていただきます。私は貴方を軽蔑しますよ。如何に政治的な、あるいは私的な理由があっとして、そこには死んで兵士がいます。だからこんな無茶な戦いをして死んだ兵士に対して、そしてその遺族に対してどう頭を下げたらいいか、貴方には想像できないでしょう」


 「想像する必要がないからな。勲章でも授与しとけば納得はせずとも引き下がりはするだろ」


 「そうですね、私もそう思います。でもその勲章の価値を下げてしまったら意味がないでしょう。この戦いはきっと、後世に後ろ指を指される戦いでしょうから。特に戦史と学術史から」


 「勝ち続ければ問題はない、ラパイヨーネならそう言ったろ」


 「貴方はラパイヨーネ元帥ではない。きっと貴方は勝ち続けるラソレイユを許さないと私は読んでいます。それがラパイヨーネ元帥閣下を唯一抑える手ですから」


 この男、案外切れるじゃないか。僕がラパイヨーネに打つ手を予想している。しかしそれが何だ。この凡庸な男に何ができる。何よりそれを予想してラパイヨーネに伝えたとして、ラパイヨーネは方針を変えない。何故なら速さで破綻させる以外にラパイヨーネが取れる策がないから。


 「出世したいなら黙っておくことだ」


 「ご安心ください。私はラパイヨーネ元帥閣下を尊敬しておりますが、あの方も貴方と同じでいずれ劣化する人だ。だから私は静観に徹するとします」


 「劣化だと?私は君よりもずっと若いんだぞ」


 「事実でしょう。大統領閣下の能力は明確に落ちています。アナリースを奪還したあの日、街頭で音読を行っていたあの日、貴方は気付いていないでしょうが、私もあの場にいました。あの日から私は貴方を見ていました。しかし今日の貴方は何なんです?今日の演説、あれはわからない。貴方の演説はもっと私たちの感覚を刺激する演説だった」


 「それは君が私の最も上手く行った演説しか知らないからだ」


 私がそう言った時、将軍は軍人としての顔を忘れて、僕の胸ぐらを掴んで僕を睨んだ。


 「この際だから言わせてもらいますがね、さっきの演説、大統領閣下、貴方は流れるような美しいラソレイユ語と言った。それは事実だろうが、ラソレイユ語しか知らない一兵卒の彼らからしたら、感覚としてわからない話だ。昔の貴方なら、特に大統領となる直前の、国王やオーレン公とやり合ってた時のあんたなら絶対に使わなかった」


 厄介なもの好きめ。しかし指摘されてわかった。彼の言っている事はあながち間違いではないかもしれない。


 「落ち着け、将軍」


 彼を落ち着かせ、掴まれて皺皺になった胸元を整える。


 「私の能力が劣化している事、認めてやろう。ならばそれを自覚してより上策を打つだけだ」


 「最初は国王オーギュスト、次にコトデーら王党派、そして今回はオーレン公とラパイヨーネ、それで次は誰です?どこまで続けるんです?」


 「身分制度の早急の解体、違うな、全ての問題が解決されるまでだ」


 身分制度の早急なる解体。それは原点ではないにしろ、僕の始めの願いだ。しかし大戦争とリルー市を経て、人死にの数値を現実として噛み締めて理解した。もはや身分制度の解体だけでは命の対価にはならない。


 「失望しました。貴方も結局人だ。星遺物を回収して自己神格化を図っても、貴方の根源はラパイヨーネ元帥やそれら多くの人間と変わらない。能力は落ちるばかりなのに、理想は際限なく膨らんでいく」


 「だからなんだ。たとえ能力が落ちてるとして、私がそれをやらない理由にはならない。責任を果たさなくてはならないんだ」


 彼にそう言い放った時、ウィンネスではシューテーンファーン大聖堂の尖塔が折れて地に臥していた。


 「陥落しましたね」

あともうちょいで大戦争編は終わりです。

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