表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テルール=テルミドールの傲慢革命  作者: らのあお
アウステルリッツ二帝一統決戦
91/121

1日目


 軍馬は人よりも猛々しく、叫び恐る人を乗せながら叫ぶことなく進んでいく。

 千の騎兵で敵左翼4万に突撃する。


 「前進しろ!!」


 硝煙と血の臭い、鉄砲と嗎と骨の砕ける音。私、ラパイヨーネはどうしようもなく戦場が好きだ。この自分の才能を誇示できる空間が、自分の意思によって他人と世界の運命を捻じ曲げられる空間が心底好きだ。


 「臆するな!進め!!」


 敵兵4万の顔が見える。同じくユーロに住む人々だから我々と何ら変わらない顔をしている。昔、部下がこう言っていたのを思い出す。

 嫌になったんです。敵が同じ顔をしていたから、だから、この人にも愛する人とか嫌いな人とが居るんだろうなって。

 私にはこれがわからない。寧ろ敵が同じ顔をしていたことを喜ぶべきだ。だって人間は銃で撃てば殺せるじゃないか。


 「進め!」


 閃光が私の眉間目掛けて飛んでくる。死を目の前にして少し姿勢を下げて目を瞑った。

 閃光が貫いたのは帽子だけであり私には何の痛みもない。もう少し私の身長が高ければ死んでいた。その恐ろしい事実はこの脳味噌が快楽によって生の実感に変えてくれる。つまり生きていることに対して謙虚でいられるし、それでいてその感覚が気持ちがいい。


 「撃て!!」


 50m、確実に当たる距離。甲高いような音が幾重にも重なり、煙と血飛沫があたりを埋め尽くす。


 「母さん!!」


 オルストリカ語はわからない。しかし国が近いから言語が違っていても単語が同じだったりする。だから敵の言葉がわかってしまうし、故に敵に勝ったという快感がダイレクトに頭に入るので、脳の気持ちよさが加速する。


 「着剣用意!」


 銃を捨ててサーベルに持ち替える。そして目の前の引き攣った顔を切り裂いた。


 「あああっ!俺の右目!」


 そしてすかさず喉に突きを入れて楽に逝かせる。

 戦場は自由だが誉れはあるべきだ。名誉がなければ誰もこんな物好きにならない。だからせめて、自分が終わらせる運命には責任を持って名誉を与える。それが私の美学だ。


 「頃合いか」


 後ろの列の兵士が前に出ている。つまりあちらの指揮官が我々を迎え撃つと決めた訳だ。


 「撤退せよ!!」


 踵を返してその軍団から逃げる。予想通り、奴らは太鼓を鳴らしながら追いかけてくる。そして再装填された銃を逃げ惑う背中に向けて放つ。

 突撃の時は敵もビビって当たりももしない距離で撃ってしまうから殆ど死なないのだが、撤退となれば話は別だ。何人、何十人と死んでいく。


 「追え!奴らを殺せ!」


 敵の指揮官の号令、狙い通りだ。


 「ラパイヨーネ元帥!!」


 突撃の際、最後尾にいた奴から死んで行く。馬が十分に休まっていないからスピードが出ないのだ。


 「置いていかれるなよ!」


 しばらく走って味方歩兵三千の陣地まで辿り着く。


 「まだ撃つな!」


 私達を追撃する敵兵に気圧され引き金を引いてしまいそうな新兵を静止する。

 100、90、80…

 敵は我らを殺す為、太鼓を叩きながら近づいてくる。


 「まだだ」


 70、60m。今だ。敵の教練は50mを厳守としている、だから敵が前進し続けること、そしてこちらの鉄砲の方が性能が上であること、これらを加味したら60mで撃ち始めるのが最適なのだ。


 「構え」


 行軍を緩め始めるタイミング。指揮官が撃てと命令する一呼吸前。そこで撃つ。


 「撃て!」


 再び鉄砲の音。それらから発射される弾丸は死の壁を作り出し、敵の一団に浴びせる。運良く指揮官は倒れ、命令に混乱が生まれる。


 「20m後退し再装填を行え!」


 指揮官を無くした奴らができる行動、それは決死の反撃か逃亡だ。だから隊列を下げて、決死の反撃を避ける。


 「抜刀用意!20秒後突撃!」


 突出したカリスマが居なければ、陣形が崩れた時点で組織的戦闘が不可能になる。つまりここからは乱戦であるし、あるいは一方的な殺戮だ。だがともかく、追いかけてきた敵四千はここで終わりだ。


 「握り潰せ!!」


 戸惑う敵の軍団に突っ込んで行く。

 銃と戦術を使用した近代的な戦いからサーベルと徒手空拳を使った蛮族の乱戦へと変わった。


 「火蛇腹這剣(ヴォルゲンガノフ)


 自らのサーベルに火を纏わせる。別に威力が上がるわけでは無い、ただ、火というのは生物が本能的に恐る物であり、崇拝する物だ。だから味方にとっては鼓舞になり、敵にとっては恐怖になる。


 「ラソレイユのカエル野郎め!死ね!」


 脳天に落ちてくる敵の刃を寸前で避け、火の剣で心臓を刺す。そして剣を引き戻した時、その男の心臓が剣についてきた。

 丁度いい。

 この心臓を掲げ、こう唱える。


 「魔法激化(ラスフォルケンカタリオーラ)


 火は爆発し眩い閃光と激しい音が響いた。ただただ目立つ行動だが、それ故に意味がある。乱戦の中で敵も味方も私を見ているのだ。だからここで檄を飛ばす。


 「太陽大陸軍(グランソレアルメ)は無敵!!諸君らには史上最強の男、ラパイヨーネがついている!!」


 極限の状態において、精神は童心に戻る。それは私とて例外では無いし、特に新兵においてその傾向は顕著だ。だからこそ、ここで無敵と最強を使う。


 「ラ、ラパイヨーネ最強!!ラパイヨーネ地上最強!!」


 味方が私の名を叫んでいる。動き回っているから、個々人が熱を持っているし、戦場のせいで火はすでにあった。だからこそ、その大火は今この瞬間私のものだし、この戦場そのものが私のものだ。


 「さぁ諸君!この最強と共にある諸君もまた無敵最強である!だからこそ目の前にいる雑魚共を蹴散らすのだ!」


 相手の陣形は崩れ、こちらの指揮は上場。予定より早くこの場の勝利を得られそうだ。


 「オルストリカとルーシーのカスを殺せ!」


 乱戦になれば精神の差が如実に出る。事実、我が軍はものの40分でこの場の勝利を収め、味方千と引き換えに敵軍二千を葬った。しかしそれでも戦力差は覆らない。だからこの勝利を利用して敵左翼そのものを破壊しなければならない。


 「諸君オルストリカの旗を持て!追撃戦が継続しているように見せるのだ!」


 敵軍の旗を持ちながら後退することで追撃戦を演じる。こうすれば軍事的な知識が無い両皇帝は追撃を命じるだろう。そうしたならば、追撃に来た左翼を分断粉砕して数的有利を覆す。


徹底的に敵を、特にメンツを気にする皇帝を刺激して攻撃を命じさせようってのがラパイヨーネの作戦です

参考の戦術描写はキングダムです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ