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テルール=テルミドールの傲慢革命  作者: らのあお
アウステルリッツ二帝一統決戦
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戦争前夜

 戦友ではなく友人としてのサン=ベルナール・ロベスピエールは私に多くを教えてくれた。人の熱とその利用法もその一つである。


 「まず、君たちに話しておかねばならぬ事がある」


 夜飯後という思考力が落ちて尚且つ身体があったまっている時間、ここで兵たちを集める。


 「君らも馴染みだろう、このタヴーという男、彼についてだ」


 五百余の連隊長が集っているのだから春前といえど人熱で暖かい。


 「また、これは重要事項だから部下にも共有してくれ」


 疑問の雰囲気を作って一度熱を下げる。


 「さて、肝心の内容だがこいつの本性についてだ」


 私はニヤッと笑い、タヴーがげげっと言いながら顔を顰める。男所帯だからだろう、こういう悪い状態にはすぐに気づくしノリがいい。


 「元帥殿!タヴー将軍は何をやらかしたんです?」


 「待て待て!今から話すから」


 「その、どのやらかしでしょうか?」


 彼は恐る恐る聞いてくる。演技では無いから場が白けない。でもそれはそれとして私の意思を理解しているから、雰囲気に最適な行動をしてくれる。


 「まず一つ目、決してこいつに金を貸すな。こいつは私から1万ソレイユを借りた上で賭博に溶かして消しやがった。しかもだ、3日で消した」


 「次に二つ目。決して女を紹介するな。こいつ金目当てで結婚した前妻を捨てて若い女を娶りやがった。しかも私の妹だ。兄としてはこいつを決して許せない」


 「ラパイヨーネ、それは言わない約束でしょう!?」


 笑いが終わるまで沈黙。


 「そして最後に三つ。こいつはクズすぎて母親にすら見限られている。しかも赤子の頃からな。つまり根っからのストリート育ちって訳だ」


 タヴーを笑う目は尊敬の目に変わる。


 「諸君、もう分かっただろう。タヴーはストリート育ちであるし私はコルテの田舎者だ。つまり太陽大陸軍では誰もが将軍になれる。誰もが元帥になれる。そう、そこの君もそこのお前も全員そうだ!」


 野心というべきか。いや、そんな大それたものでは無い。とにかく誰かに認められなくてはならないという強迫観念にも似た承認欲求。誰しもが持っているそれを刺激する。


 「私は力あるものを認めよう!私について来れば将軍にしてやるし、太平洋の海だって見せてやる!だから諸君、私について来い!私のために死ね!そして私の為に手柄を立てて私の隣に登って来い!かのイスカンダルですら望めなかった景色を諸君に見せてやる!」


 熱に浮かされて叫ぶ兵士。これからの戦いは地獄だからこんな具合でないとやってられない。


 「さぁ飲め!」


 酒瓶をラッパ飲みして、私という存在がいかに身近な物なのかを彼らに知らしめる。何故なら良き父親を演じる事が支配する上で効率的だと知っているからだ。


 「さぁ!僕はジャガイモが好きだ!熱々のジャガイモを茹でよう!」


 軍歌であるジャガイモの歌を歌う。すると兵たちは合いの手を入れながら共に歌い始める。


 「ママとジャガイモも茹でよう!」


 「僕はジャガイモが好きだ、熱々のジャガイモを茹でよう」


 「友人よ進め!友人よ進め!友人よ勧め!」


 「でもオルストリカ人にあげるジャガイモはない」


 酒よ歌よと宴会は続き、兵たちは疲れてその場に眠った。


 「すまなかったな、タヴー」


 先ほどコケにした男はまだ起きており、ただ空を眺めていた。


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