アウステルリッツ二帝一統決戦
アウステルリッツにおける星戦、あるいはアウステルリッツニ帝一統決戦とは、近世ユーロにおけるパクセーラソレーズ(ラソイユによる平和)を決定付けた戦いであると同時に世界の半分を支配した男、大帝ラパイヨーネ伝説の序章と呼ぶべき戦いである。
ラパイヨーネ視点
1789年、花月2日。アウステルリッツ村の西、ブルーノ市。
神聖帝国、ルーシー、オルストリカの三国連合軍は事前の予想通り北のシュローズ高原に陣を構えている。数は約13万であり、彼我の戦力差は6万である。またB軍が合流しても依然3万の差がある。
「どうしたもんですかねぇ、ラパイヨーネ元帥閣下。大統領閣下がぶっ倒れたとなれたとなりゃ、B軍の援護が望めないでしょうし」
薄暗い部屋で周辺地図を眺めながら短髪ノッポの青年、タヴーはそう言った。
「タヴー、奴は冷酷な男だ。目的と効率の為なら死ねと言える。もちろん、自分にもな。だから奴は必ず来る」
何より来なければ私はこの戦争の段階で英雄となり多大な影響力を持つことになり、私の勝利が確定する。だから奴は絶対に来なければならない。
「それにだ、タヴー。この戦いは勝てる」
「根拠は何です?」
「勘だ。強いてあげるなら連合軍の組織体制そのものか」
「私が思うに、連合軍には常軌を逸した策を取れないし理解できない」
タヴーは顎に指を当て、目を瞑り考える。しばらくの沈黙の後、彼は語り出した。
「…戯けた動きをして困惑を誘って、その乱れを突くって訳ですか?正直こんな子供騙し、刺さるとは思えませんけど」
「いや刺さる。よく考えてみろ、タヴー。連合軍と我ら太陽大陸軍の違いは何だ?」
「名前。あと構成要因、あとは…まさか精神的優越とか言い出すんじゃないでしょうね」
「そう、精神的優越だ。我々は国家存亡を賭けて、このラパイヨーネというただ一人のカリスマ指揮官の下で戦っている。よって一つの個体で、一枚岩でいられる。
だが対して連合軍はどうだろうか。彼らには我らを打ち砕くという目的はあれど、指揮官も言語もバラバラであり、この戦いは勝ち戦と鷹を括っているから、派閥争いだってする。つまり連合軍は我々と違いチグハグなのだ。だから一度衝撃を与えれば足並みを揃えられず混乱状態に陥り、機動力という面において圧倒的な不利を背負うことになる」
速さとは力だ。アウステルリッツではこの原理を利用して数的有利を覆す。つまり初動で困惑を作り出し、連合軍の足を奪い、速さで振り回して各個撃破という訳だ。
「でその肝心な一度の衝撃はどう与えるんです?」
「右翼の四千を私に貸せ。前進してから敗走を演じて追撃をさせる」
「いいですけど攻めにきますかね?」
「必ず攻める。奴らは砲兵の再配置が間に合わないと考えるからな。何せ奴らは知らんだろう。革命で使ったあの兵器を」
そして奴らが攻めてきた先、逃げ場は川だけ。ここで少なくとも2万は削れる。その後はどうするべきか。間髪入れず右翼を突撃させたい所だが…
「…左翼を薄くして中央に集中させませんか?オーレン公が元帥の見立て通りなら、不利地形からわざわざ攻めきた敵を見逃すとは思えません」
「そうしよう。では言い出しっぺの君に任せるよ」
「構いませんが、では元帥は何処を?」
「決まっている。中央だ」
「狡いですね相変わらず。英雄を独り占めですか」
「ラソレイユの最終的勝利の為の必須条件として必要ならば、それをするまでだろう?」
「そうですか。で、この作戦を詰めるのは午後の集会って事でいいんですね?」
「あぁ。お前は事前に他の将軍に説明しておけ。私はやらねばならぬ事がある」
タヴーに自分がやるべきだったことを託し、薄暗い部屋を自分一人にする。私は紙を取り出し、羽ペンである書簡を書いた。
休戦について
対革命大同盟の解散をしてくれるのであれば、この度の戦争について休戦を申し出たい。また上記が認められるのならば、ラソレイユ軍はアウステルリッツ地方からの撤退を行い、領土及び賠償金等の要求を一切行わないと誓う。
これの履行について、ブオナパルテ・ラパイヨーネは考えられるうるあらゆる手段を持ってして完遂すると星と神に誓う。
ラソレイユ唯一教会共和国、太陽大陸軍ブオナパルテ・ラパイヨーネ
この書簡を見れば敵はこう考える筈だ。
地形も不利だし肝心の総司令には休戦とクーデターの意思がある。つまり相手はこの戦いに勝機を見出していない。だから攻めに出て早急に奴らを滅ぼすべきだ。
こうなれば私の勝ちだ。まぁ、簡単にはこうならないかもしれないが、それでも連合軍の総意が割れてくれればそれで御の字。何せ割れたら割れたらで決定権は軍属では無い最高決定権を持つオルストリカ皇帝とルーシー皇帝に委ねられる。それは連合軍にとって致命的だろう。
「必要なことは全部やった。あとはどう転ぶか、だな」
花月は2日は4月の終わりあたりかな?




