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第三審

 第二投票、国民投票をするべき否か、それについては語るまでもない。悠長に国民投票を行なっている余裕はラソイユにはないのだ。


 「これより第三投票に入らせていただきます。議題は王を処刑するべきか否かで御座います。ではサン=ベルナール・ロベスピエールさん、お願い致します」


 コトデーなき今、もはや敵はいない。あとは王を殺し、指令第33号を実施するだけだ。


 第一演説、モンターニュ派首領サン=ベルナール・ロベスピエール

 「王とは、その存在そのものが簒奪者に御座います。人々の主権の強盗であり、つまり罪人です」


 かつて父が処刑台で言い放った言葉。七年前において、誰も耳を貸さなかった言葉だ。だがもはや時代が違う。いや、時代を変えたからこそこの言葉は意味を成す。


 「またここにおいて、私は皆様に問わねばならぬことがあります。皆様、この世で最も神聖なものとは何と知り得ますか?王の肉体でしょうか?あるいはラソイユでしょうか?私はこう考えます。この世で最も神聖な行為とは自由を求める闘争そのものであると。そしてその神聖さの前ではどのような神聖さも無意味であると考えます。

 つまり、です。神聖なき王とは主権の簒奪者にして、自由を求める無辜の民を無慈悲にも弾丸で撃ち殺した大量殺人鬼であるのです。よって私はここに、簒奪者であり逃亡犯にして大量殺人犯であるオーギュスト・カペー氏にギロチンによる斬首を求刑致します」


 拍手喝采の嵐と巻き起こる議論の数。この部屋全体の呼吸数が増え、物理的な熱量が増えた故に故に蝋の溶けるスピードが早くなる。やはり父は口先だけの愚か者だな。時期を鑑みた訳でもなく、はたまた僕のように実績がある訳でもない癖に王は簒奪者と言い放った。正論だけで人々が靡くと勘違いした浅慮で下品で醜い男だ。


 第二演説、ガロンヌ派ブリッソー・ピエール・ブリッツ

 「私も皆様に問わねばならぬことが今し方できました。皆様、その拍手は何の拍手でしょうか?私には理解できません。何故ならあの男の言葉が私には理解できないからです。よく考えてみてください、皆様。王の神聖さについては法律において定義されていますが、自由を求める闘争を神聖であると定義する法律がどこにありましょうか?今一度考えてみてください、彼は一度たりとも法や理論に即した言論をしていません。口先だけの感情論者で御座います」


 拍手は無し、議論はありだが疑惑や困惑だけ。そうだ、お前はそう言わざるを得ない。だから詰みだ。だって次の反論について反論できる人材は居なくなっているのだから。


 第三演説、モンターニュ派ルイ・イトワールド・ルナ=ジャスティカ

 「皆様この男の、売官貴族ブリッソー・ピエール・ブリッツの言葉をお聞きしましたか?この男は感情論を理解できぬと言いました。つまりこの男はこの革命を、飢える民の嘆きが理解できぬのです。このような男に王の処刑の是非を語る資格はありません」


 感情論が根幹にある者は愚かだが、感情論を考慮できないのはそれよりも愚かである。という訳だ。しかしブリッソーからしてみれば、2700万の命を抱える国の行末を感情論だけで決めようと言うのかと反論できる。だが、これについては僕が出来ないようにした。


 第四演説、ガロンヌ派ゲオルグ・ダールトン

 「王は処刑するべきだ」


 議会は混乱する、特にガロンヌ派の方は。何せ味方だと思っていた人間が利敵を働いたのだから。


 「我々は荒れる時代に対して勇猛果敢かつ豪放磊落に、何より豪胆に挑まなければならない。故に王は死ぬべきだ。我々が更に豪胆である為に」


 彼はこう言った。他国の顔を伺って王を殺さぬくらいならば、王を殺して豪胆と他国に望むべきである。そしてそれはガロンヌの総意とは大きく異なるし、何よりモンターニュの総意よりも先鋭化したものであり、僕の思想と同意見だ。


 「な、何故だダールトン。何故裏切った」


 ブリッソー・ピエール・ブリッツは裏切り者ダールトンを責め立てる。そしてそれに対してダールトンは冷たくこう答えた。


 「コトデー無き今、誰が私の利益を保証するんです?」


 ダールトン、放埒放蕩で自己利益しか考えぬ身勝手な男。故に信頼できる。女と金さえ与えれば裏切ってこないのだから。


 「ダールトン、貴様はそれでも…」


 「為政者、ですか?では逆に私は貴方に問いましょう。他人の利益すら慮れない人間が為政者として務まるとお思いですか?」


 「ならばお前には務まると?」


 「はい。私は民衆が私に酒と女と金をくれるのならば、私は喜んで民衆の操り人間となります」


 売官貴族ブリッソー。彼は長い政治生活で、商人であった時の基本を忘れたらしい。貴方に食を与える人は貴方を支配するものであると言う基本中の基本を忘れてしまったようだ。


 「では双方の主張を確認致しましたので、第三投票を行わせていただきます。議題は王は処刑されるべきか否かで御座います」


 一人の男を、時代を終わらせる投票が開始される。

 誰もがその投票の重みを理解していたので、投票の終了までは8時間掛かった。


 第三投票 国王は処刑されるべきか否か。


 賛成票538票、反対票122票、棄権61票


 国王の処刑が決定された。

この辺執筆に使ってる端末変えたので空白の入れ方とか改行とかなんか変わってます

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