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ヴァルサイエーズへ!!


 ラ・ファルトレス要塞襲撃で得た武器を民衆に供与し、国民の兵士、国民衛兵を設立した。これが指令第11号である。


 「国民衛兵よ!ヴァルサイエーズに銃を向けよ!」


 上品優雅だったあの庭には数百人の人々が押し寄せ、噴水を破壊し庭に火をつけ花を踏みにじる。


 「さぁ撃て!我らの敵を撃つのだ!もう二度と奪わせない為に!!」


 国民は叫び声の中、僕はヴァルサイエーズの中に住まうある貴族と目が合った。

 窓越しでもわかる、恐怖に支配された顔。瓦礫に押しつぶされて死ぬか、あるいは凌辱されて踏み潰されて死ぬか、想像してるんだろう。

 可哀想だ、本当に。しかし残念ながら、僕は正しいんだ。だから、貴方には死んでもらう。

 アデュー、マドモアゼル。


 「撃つのだ!!」


 数多もの砲撃がヴァルサイエーズの正面に降り注ぎ、50年物の血税の壁が悉く崩れ去る。黒煙と悲鳴、あの中はまさしく阿鼻叫喚だろう。

 さて、そろそろこれを言わなくてはならない。


 「民衆よ、あの女を見よ!あの女の血は何色か?私には赤い血に見える!!あの女の血は赤い血なのだ!赤い血を、我々と変わらぬ血を持っている!つまりあの女は我々と変わらぬのだ!!だからこそ罪深い!

 奴らは赤い血を持ちながら、人でありながら同じ人である我々から権利と財を奪った!傲慢にも奴らは神の真似事をしたのだ!!奴らを許すな!奴らは許されざるものなのだ!!」


 民衆は自分達と同じ血を流す貴族を見て、躊躇ってしまうだろう。だからこうやって、同じ血を持っているからこそ罪深いと論を展開する。


 「奴らを許さば、次に殺されるのは我々だ!!徹底的に奴らを滅するのだ!!」


 これで火は十分だろう。この地を焼き尽くすまで、火は消えることはない。

 だが、その確信は簡単に砕け散る。

 黒煙と瓦礫の山から、ある金髪の男が出てきたのだ。そして民衆はそれを見るやいなや構えた武器を地に向け、さっきまでの煩いばかりの怒号はどこえやら、小さなざわめきと困惑に取り憑かれた。


 「な!?」


 その男は質素な革の服を着て、革命の象徴であるフリジア帽を被っていた。その男こそ、この国の国王、オーギュスト・ブルボン=ラソレイユであった。


 「…上手いじゃないか」


 民衆と同じ装いをして深々とお辞儀をする王という構図。

 やられた。上手いとしか言いようがない。

 正直、今一番やられたくなかった手を打たれた。なにせこの構図を描かれれば、立憲君主制の風が吹いてしまう。それに少なくとも今日の火はこれで消えてしまった。だからこれ以上ヴァルサイエーズに攻め込むことはできない。

 やってくれたな、オーギュスト・ブルボン=ラソレイユ。




 オーギュスト・ブルボン=ラソレイユ視点


 三部会は失敗した。革命が起きた。

 でも私の人生はまだ続いてるし、シャルルもまだ産まれたばかり。

 それに三部会失敗だって悪い事ばかりじゃなかった。革命が起きて貴族や大臣が明確に詰みを認識して、各々国外逃亡の準備をし始めたおかげで私の仕事は少なくなった。だからこうやって、家族三人同じベットで寝ることだってできる。なんとお昼までね。

 と、そんな事を考えながら布団の中で眠い目を擦っていた時、激しく扉を叩く音がした。


 「国王陛下、ラ・ファルトレス要塞が陥落いたしました」


 「これは暴動ではなく、革命で御座います」


 「そうか、そうか。勝手に対処されよ」


 「こっ国王陛下…分かりました。近衛に対処させます」


 「そうしたまえ」


 もう一度僕は眠る事にする。きっと悪い夢なんだ、全てが。こんな可愛い子達が危なくなることなんてあり得ないのだから。

 二度目は二人の慌てる声で目覚めた。


 「殿下、あれを」


 彼女の指の先、窓の外を眺める。第三身分の民衆たちが列をなし、ヴァルサイエーズに武器を向ける。その武器の中には噂に聞いた八八式もあった。


 「指導者はロベスピエールか、やりかねんな。二人とも、今すぐ部屋を出て、できるだけ奥の方へ、私は少しやるべきことがある」


 妻と子を避難させ、従者を連れて芝居の準備をする。


 「馬小屋の下男の服を持ってこい。いま着ているやつだ。あとそうだな、フリジア帽も欲しい。いますぐ、10分以内に用意しろ」


 サン=ベルナール・ロベスピエールは苛烈な男だ。奴はこのまま熱を上げて、大火を持ってしてこのヴァルサイエーズに民衆をけしかける。それで私や貴族を根絶やしにする気だ。

 マリアとシャルルは殺させはしない。だから奴の起こした火を消してやるって言うんだ。


 「国王陛下、下男の服とフリジア帽にございます」


 泥だらけの服を着て、革命の象徴たるフリジア帽を被る。姿見に映る私の姿は何とも間抜けなもので、分かりやすく似合ってない。ヒョロガリな上に肌が白すぎるんだ。


 「国王陛下!!」


 大きな爆音が響くと同時に、従者の肉体が私を守る。幸い、着弾地点ではなかったので、埃を被るくらいで済んだ。


 「行ってくるよ」


 「な、何をなさる気で御座いますか?国王陛下」


 オーレン公、貴様が三部会でやった事をやらせてもらうぞ。


 「成すべきことだよ」


 瓦礫の海を泳ぎ、黒煙の中を口を押さえて進む。土と埃塗れになって、進み、一人民衆の前に出た。

 困惑と疑問、火を消して彼に残った最後の、ほんの少しの権威への傾倒を呼び起こす。

 その為にこの頭を下げる。王冠を戴いた頭を、この地上において最も高貴とされた頭を第三身分の彼らの前に下げるのだ。


 「国王は己の罪深さを認識された!」


 扇動者たるロベスピエールは苦虫を噛み潰したような顔をし、そしていつものように語り始める。


 「国王よ!貴方のこの行動を私は称賛しよう!!しかし!貴方が罪を省みないようであれば、我々は我々理念に従い抵抗をする!!その事をお忘れなきよう!!」


 利口な男だ。奴は負けを即座に認識して民衆を引かせる。

 ここまま奴と戦って、それで私が生き残れるのか?一時は勝ちを見据えれたが、その果てが今の状態だ。

 いっそ、逃げてしまった方がいいんじゃないか。義務や責任から逃げて、家族三人で生きていったほうが…

史実は王をパリに呼び戻しただけで終わりましたこんなドカドカはやってないです決して

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