三部会、闘争
サン=ベルナール・ロベスピエール視点
総勢1015名がこの空間に集まる。幾らヴァルサイエーズが広いと言えど、この人数が発する熱は冷却しきれない。故に、容易に熱が火に変わりうる訳だが、この場においてそれは利点にはならない。むしろ、熱が火になった時点で三部会は失敗する。
だから、国王からしたら僕やオーレン公はとても恐ろしく映るだろう。なぜなら三部会の生殺与奪の権利を持っているということは、国王とその家族の生殺与奪の権利を持っている事になるからな。
「全ての身分の人々よ!私は諸君に感謝する!」
国王は開式宣言を行う。問題はここからの言い方だ。果たして、火を付けないように無難に行うか、それとも火を起こす危険を冒して三部会を成功に持っていこうとするのか。
「よくぞ三部会に集まってくれた!未曾有の国難を解決するには、諸君らの力が必要である!
だからこそ!このまたとない機会の前に我々は団結しなければならない!!貴族だけでなく、平民の力をもってして、この国難を解決するのだ!!」
少し温度が上がったな?国王め、暗に一人一票制に投票しろと示したのか。僕は元より、一人一票制に投票する気でいたからどうでもいいが、上辺従うと言ったオーレン公や野良貴族はどう思うだろうか。特に後者は心底穏やかじゃないだろう。
「では、国王な言葉と開式宣言を終わらせていただく。最後に一つ、私はこの三部会の成功を心より願っている」
随分と余念ないじゃないか、オーギュスト。野良貴族を刺激せず、執拗に牽制する。火の付くギリギリで踏みとどまってやがる。
…国王は着実に成長している。このまま国王が成長すれば、三部会を平穏に終わらせ、奴に崖っぷちの政策を連発させ続けて大改革を成すというのも難しくなるかもしれない。となると、僕の寿命の関係で一手打ち損じて負けるか?思いの外ギリギリになってしまう。
さて、どうしたものか。
「では各身分の宣誓に入ります。まず第三身分代表、サン=ベルナール・ロベスピエール様、宣誓をお願いします」
国王陛下、あんたが火遊びをする余裕があるってんのなら、僕もそうしてやろう。
「第三身分、いえ、国民代表サン=ベルナール・ロベスピエールで御座います。さて、私達平民は第一、第二身分を食わす者であるにも関わらず、200年間礼遇され、ここに至るで一度たりとも政治に参加する事を許されませんでした。
ですから、私はここで宣誓しなくてはならない。私達は決して貴方達に復讐など考えていない。私達はこの国難を解決し、貧しき人々を救済する事しか考えていないと。故に公正に、ただひたすら公正に為すべき事を為すと、神と人と星に宣誓致します。
加えて、第一、第二身分の皆さま方に置かれましても、公正な判断を行うように要求致します。
これが守れないようでは、我々とて、我々の宣誓に従いあらゆる場所で会議を開かなくてはならなくなってしまいますので」
さて、さすがの王も焦り顔か。なにせ僕は第一、第二身分の奴ら今まで不正に利益を享受して、それでいて第三身分を虐げてきた。だから今度こそ公正に事を成せ、さもなくば革命を起こすぞ、と宣言した訳だからな。
「で、では次に第一身分代表、アレクセイ・アンデルセン枢機卿閣下、お願いします」
堂々とした宣戦布告に司会も青褪めて途切れ途切れだ。
「はい、アレクセイ・アンデルセンで御座います。第三身分のサン=ベルナール・ロベスピエール様の要求を受け入れ、第一身分は公正な判断を行うと、神と星の名の下に誓います」
無難な返答だな。まぁ第一身分には元から期待していない。だれも影響力を持ってないからな。問題は第二身分だ。
「ありがとう御座いました。お次は第二身分の宣誓、ロイス=フィリップ・ヴァロワ・オルレアン公爵閣下、お願いします」
「第二身分、ロイス=フィリップ・ヴァロワ・オルレアンで御座います。さて、先程第三身分の代表のサン=ベルナール・ロベスピエール様は公正な判断を我々に要求しました。悲しいものですね、我ら貴族はノブレスオブリージュに従い、気高い義務を果たしてきたと言うのに。まぁ、平民には理解できぬことでしょう。
あぁ、平民の皆さま、そう声を荒らげないでくださいね。安心してください、我々第二身分は今まで通り、公正な判断を行います。
えぇ、別にこれは一身分一票制を宣言した訳ではありませんよ。ただ、ノブレスオブリージュに従い正しき判断を行うと宣言しただけで御座います」
道化め、思いっきり火遊びしにきたな。国王陛下の顔も僕の顔も、とにかくこの会場に居る連中の顔は穏やかじゃない。
「さて、これは宣誓と関係ない余談です。皆さんにおかれましてはもう気付いてる話になりますが、この三部会は単純明快で御座います。一人一票制か、あるいは一身分一票制か。それが全てで御座います。
お待ち下さい、司会様。私はこんなつまらない余談をしたいのではなく、ここからが面白い余談なのです。
さて、我々オーレン公の陣営では一人一票制の場合は右手で投票を、一身分一票制の場合は左手で投票する事を取り決めております。皆さん、迷ったらご参考にくださいね。
では、宣誓を終わらせていただきます」
爆弾発言も爆弾発言。熱によって火が、なんて通り越して灰の状態だ。
つまり、だ。オーレン公は一線越えた狂言を乱発することでこの場の熱を鎮めた。これは並大抵の技ではないし、まず思いついてもやらない。本当に失う者がない人間か自覚がない奴が使う技だ。
ではなぜそれをしたのか?三部会の勝敗なんてどうでもいいと考えているから、悪趣味にも両陣営を嘲り笑う為に行ったんだろう。
いや違うな。
奴はこの発言で今ある火を消して、次の火の種を蒔いた。国王から最も遠い場所、第三身分の場に。
つまり、だ。オーレン公は革命を望んでいるのではないか?その為にこうやって第三身分を怒らせて、三部会を失敗に持っていこうとしている。
だがこのやり方じゃあんたもギロチン送りのはず。
くそう、ここまで来ても見えないのか、オーレン公の最終到達点は。
「ありがとう御座います、各身分の宣誓が終了したので…あぁ、先程オーレン公の仰られた通り、投票方法についての投票を開始致します。お配りしたお手元の紙に氏名、投票方法を既述の下、投票箱にご投入御座います」
混沌の三部会の初戦にして最終決戦が幕を開けた。
セリフ
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解説
の流れをこの話だけで5回くらいやってる気がするんですがクドくないですか?




