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浅慮


 10月24日。


 音読屋を営む者であれば、今回の音読の難易度が凄まじい事が理解できるはずだ。

 なぜなら今回ばかりは各派閥の利害関係を完全理解し、各派閥が何を目的として何を行って何を目的としているのかを読み切らなければならない。

 いつものように過激に音読、つまりオーレン公を擁護するような内容でやれば、僕が出版したマリア・アントワールとオーレン公についての内容のせいで、反貴族親民衆にはならず、今後の音読仕事に支障が出るし、かと言って普通に三部会開催を讃える方向でやれば、音読としてのエンタメ性が削がれる。


 「まず、皆さん、問題の所在をはっきりさせねばなりません!」


 だからここでやるべきなのは、馬鹿でもわかるように話を解体して、分かりやすく叩ける所を彼らに教える。今回の場合、三部会という主題をあえてほっぽりだして、王室の多すぎる支出額と250万ソレイユという大金を使ってオーレン公が王室に陰謀を仕掛けた所を取り上げる。

 というか今回の場合、分かりやすい悪者を作るにはこうするしかないんだ。


 「まずはこの国王への財政報告書!ここには王室の支出額があります!えぇ、皆さんもわかるでしょう!」


 「この国にける3割の金がここに消えているのです!それを王やオーレン公はずっと隠していた!」


 殆どが頷いているが、2割はまだ疑惑を持ちながら音読を聞いている。火を起こすにはまだ熱が足りない。


 「そうです!三部会の開催など、本来やるべであった事をやったに過ぎず、こんなにも大々的に発表することではありません!」


 「つまり、ですね。王は大々的な発表によって、不都合な事実をかき消そうとしているのです!」


 嫌な雰囲気だ。他の音読屋のやり方がまちまちだから、何を信じたらいいのか分かってないんだろう。

 だがこの状況は好機になる。彼らは度重なる情報の取捨選択によって脳疲労を起こしているのだからな。


 「えぇ、聡い皆様方でありましたら、もうお気付きでしょう!この新聞における問題の所在が!」


 ここで彼らを賢いと褒める。そうすると、この問題の所在が分からない=賢くない、と言う式が成り立つので、愚か者と罵られたくない彼らは自ら問題の所在について考える。そして僕は先ほど、王室の支出額の話を出したので、彼らはそこが問題の所在であると自ら気付いたと錯覚する。

 そうしたらもう熱は十分だ。だって自らが気付いた解は可愛いもので、どうしてもこれが正しいと確信してしまう。


 「そうです!この問題の所在は王やオーレン公が我々から搾り取った税を隠していたこと!更に我々の税で陰謀を行っていたこと!そしてそれを今更になって公開して!三部会開催という明るい話題で隠そうとしたことにあります!問題の所在はここなのです!」


 「えぇそうです!彼らは国を私物化しているのです!彼らの飯を作っているのは私達であるのに!彼らの家を作っているのも服を作っているのも私達なのに!」


 疑惑は無い。空気は熱い。火は起こった。あとは問題解決の手段を提示して、火を僕の利益の方に向かせる。


 「だからこそ!私は宣言します!三部会において、この国は貴様らだけのものではないと、この国の所有者はこの国に住まう全ての人々であると自覚させ、反省を促す事を!」


 「ですから皆様!私を三部会までお届けください!」


 最終的にはここだ。三部会への参加資格は平民の投票によって与えられる。


 「お前に投票するぞロベスピエール!」


 「貴族は反省しろ!」


 いいか、オーギュスト・ブルボン=ラソレイユ。お前は僕とオーレン公を出し抜いた気でいるんだろうが、こうやって自ら火を起こせぬのなら、民意の波に溺れるだけだ。


 その晩、興味がてらにパリス・ロイヤルに行ってみた。敗残兵がどんな顔してるのかが気になった、というよりかはオーレン公があれしきのことでくたばりきる訳がないと思っていたからだ。


 「よぉ、オーレン公。調子はどうです?」


 正直、門前払いされると思っていた。だってこれは完全に悪趣味な煽り行為なのだから。

 貴賓室に通され、そこでは既にオーレン公が上席に座っており、僕は下席に座る事になった。


 「まずは晩飯にしようか」


 何の故があってかは知らないが、オーレン公はこういう時毎回カレーを出してくる。今回は緑色カレーである。


 「いいでしょう、ところでこれ何です?」


 「ザグカレーさ。菜の花とかほうれん草をペースト状にして作るカレー」


 これは悪癖なのだが、僕の感覚にはサラダ以外の緑色の食べ物を食べ物と認識できない傾向がある。

 つまり、だ。何が言いたいかと言うと、あまり美味しそうな見た目をしていないと言いたいんだ。


 「なるほど、ではいただかせてもらいます」


 ナンをちぎり、その緑色のカレーをつけて、口に入れる。

 チーズのまろやかさとほうれん草のほんのりとした甘さ、そしてカレーの辛さが混じり合いなんとも言えないような味を作り出す。美味いといえば美味いと言えるが、正直に言って前食ったマトンカレーの方が好きかもしれない。


 「毒が入ってる、とは考えなかったのかい?」


 「貴方が僕を毒殺しようものなら、貴方は国王への対抗策を失ってしまうはずです。ですからあり得ないと判断しました」


 「どうだろう。正直言って、私にとって君は私の最終到達点の為にいたほうがいい程度の存在なんだ」


 「最終到達点ですか、僕は貴方のそれを知らないので分かりかねますが、民衆という支持母体を失った今、僕なしでそこに辿り着けるとは到底思えません」


 「君には話ていなかったね。私の最終到達点を」


 「私の最終到達点は戦争の無いユーロ、あるいは戦争の無いラソレイユなのさ。その為にはユーロ全域で、あるいはラソレイユ内で遍く国々の人とモノ、金と情報が生き来する必要がある」


 「見えてきませんね。そんなラソレイユ、あるいは世界を作るには、貴方が影響力を持たなければならない。

 はっきりと言わせていただきますが、私は戦争の無い世界になど微塵も興味はありませんよ。

 身分制度の完全破壊さえできればその後はどうでもいいので」


 「何も君にやれと言っているわけじゃないんだけどな」


 「ならそれこそ無理ですね。さっきも言いましたが、貴方は民衆という巨大な支持母体を失った。反国王の貴族だけで集まっても、国王の力すら凌駕できない。気そんな状況でどうやって己が理想を果たすんです?」


 「国王の力すら凌駕できない、か。君はここで間違えている。国王の力を凌駕する意味が無いんだ。

 つまり君は勘違いしているんだよ。私は最終到達点に向かって歩いているわけじゃないんだ。最終到達点に至るまでの流れを作っているのさ」


 ブラフに決まっている。一人で歴史を変えようなどとできるわけがない。だから強がりだ。そのはずなんだ、なのになぜ、こいつの底が見えない。


 「まったく荒唐無稽な話ですね。貴方は歴史を作ると驕っている。しかも自分一人で。そんなこと、できるわけがない」


 「一人ではないよ。私は運がいいからね、産まれた時代が味方なんだ」


 「時代が…?」


 「うん、時代がだよ。君もいずれ分かるはずさ」


 この貼り付けた微笑の底、そもそも底があるのかすら分からなかった。

 

ぶっちゃけ、味音痴すぎてザグカレー食った時の感想がこのまんまなんですよね。

外食する時に栄養とかあんま考えたくないから、今後ザグカレーを食べることはないでしょう多分。


あとこの時点でオーレン公を読み切れる人がいたらその人は占いとかやった方がいいと思います。

そのレベルでオーレン公には自信があります。

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