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省庁大連立包囲構想


 高等法院パルルマン。要するに最高裁判所だが、彼らはヴァルサイエーズに敵対している。それは何故か?

 豪遊する貴族共を咎めるため?はたまた借金まみれなのに贅沢し続ける王室を嫌悪しているからか?

 違う。

 高等法院は売官制により貴族足り得た法服貴族、つまりヴァルサイエーズに属さない貴族が主となっている組織あり、彼らは既得権益が奪われるのを恐れてヴァルサイエーズと敵対しているのだ。


 「どうです、魅力的な提案でしょう?」


 そして今、僕は高級料亭ガロンヌにて高等法院の首領ドンブリッソー・ピエール・ブリッツと穏便な話合いをしている。


 「魅力的?何処がだ。法も知らずしてエガリテなどと名乗る呆け者と協力することの何が魅力的なのかわからん」


 ヴァルサイエーズしか見えていない癖に法の護り手を語るとは何事かと言いたくなるが、辞めておこう。今はオーレン公と高等法院をくっつける事に集中するんだ。


 「むしろ私から君に魅力的な提案をしてやろうか」


 「君の官職を買ってやるってのはどうだ?」


 硬いステーキと別に美味くもないワイン。こんなもの食べたくなんてないんだが今は食べなければならない。だがそれも目の前の褐色肌の男とて同じだろう。


 「官職ならありますよ、処刑人という官職が」


 「処刑人?あんな邪悪な官職にしがみついて何になるんだ?」


 こと男、余程視野が狭いと見える。ヴァルサイエーズが恐ろしすぎて自らの恐ろしさも邪悪さも忘れている。

 だって処刑人は殺せと命令された罪人しか殺せない。それに比べてお前らは罪人を殺せと命令する立場にある。どちらが邪悪かなんて日を見るより明らかだろう。


 「死を与える死神よりも死を告げる死神の方が僕には邪悪にみえますよ」


 「ガキが、お前遠視だろ。だって近場が見えてないからな」


 理想とか正義とかではなく給与を見ろと言いたいだろうが、残念ながら僕はお金にはあまり興味が無い。それで揺らぐ訳がないんだ。


 「逆に貴方は近場しか見えて居ないように思えます」


 いかん、駄目だな。まだ感情と言葉を完全に切り離す事が出来ていない。未熟だな、僕も。


 「国王陛下ももうお年です。新たなる政権の出鼻を挫く、その意味を過小に見過ぎているようで」

 

 「政権に打撃を与える為に貴様やオーレン公のような獅子身中の虫を取り込むなど馬鹿げている」


 笑えるな、高等法院は自分を獅子だと思ってるらしい。僕から見れば高等法院もオーレン公も狸野郎にしか見えない。

 でも狸である故に次のこの手には逆らえない


 「いつ私がオーレン公の味方であると言いましたか?」


 「なに?」


 「オーレン公を失脚させる手があります」


 僕がその言葉を発した時、背後から声がする。そしてその声の主は信じられない男だった。


 「それは本当か?ロベスピエール」


 そう、裏切りの近衛兵隊長、コトデー・マリー・バルバトスであった。


 「コトデー、あんたがどうしてここに?」


 僕は驚きのあまり、思考より先に声が出た。


 「どうして?そりゃ決まってんだろ、俺がこのおっさんとグルだからさ」


 「は?あんたオーレン公の…」


 嘘だ。だってあのマリア・アントワールをヴァルサイエーズに移送する計画、あれはオーレン公が仕組んだものじゃないか


 「お前と同じ。互いに利用し合ってただけさ」


 「なら教えろ!あの計画は何だったんだ?」


 「ロマンスによる破滅かな。アントワールは放蕩馬鹿娘だと噂があったものでな、お前のようなイケメンに惚れさせて破滅させたら面白いだろう。とオーレン公は言っていた。馬鹿みたいな話だよな」


 馬鹿過ぎないか、あまりにも。確かに彼女は放蕩娘かもしれない。高いドレスだって何着も買っているし、自分が数週間滞在するだけの地に宮殿を建てさせた。でも彼女は簡単に人に惚れるような人ではない。


 「で、俺は言ったぞ。次はお前の番だ。お前はどうやってオーレン公を失脚させるつもりだ?」


 僕は今回の事件の"おおまかな"顛末とそれを利用した悪魔の一手を語った。そしてその方法を取るにあたって高等法院がやるべき事も。


 「…悪魔みたいな手口だな」


 「一人の女に全てを押し付けようって正直どうかと思うぜ」


 正直その手口の卑劣さについては思いついた僕ですらどうかと思っている。

 …永らく大人の世界で行き続けてしまった弊害だな。己の道徳やら信条やらをかなぐり捨てて非人な手法を思い付けるし実行もできる。


 「ですが確実でしょうし、なにより新国王の治世に与える影響は測り知れない」


 「お前はそれでいいのか?結構仲良かっただろう」


 なぜ知ってるのか、それを問うのは無粋だな。


 「目的の為ならば個人的な感情や関係など切り捨てられるべきでしょう」


 ブリッソー・ピエール・ブリッソーに向かって手を伸ばす、すると彼はその手を取ってくれた。

 ここにおいて高等法院とオーレン公の協力が、この国の2つの悪意が結ばれたのだ


 「まるで14世陛下だな」


 「僕がですか?」


 「俺から見たお前は無私のマキャベリストに見える。俺はお前が嫌いだぜ」


 マキャベリスト、つまり目的遂行の為ならばどんな不道徳な行為も厭わない奴ら。

 そう、だな。今の僕はそう見えるだろうな。

 

 「そうですか、僕は健啖家なのでわかりかねます」


 ともかく交渉は成立だな。あとはゆっくりこの硬い肉でも食って、としたいがその前にもう一つやりたいことがある。


 「ブリッソー・ブリッツ様、貴方は後ほどオーレン公と書簡の交換をして詳細な情報の照合行うでしょう。その時、貴方が大蔵省を引き込もうと思い付いたらアンサングに法務省を通して連絡いただきたい」


 「大蔵省に法務省…なるほど、14世陛下の逆をやるということだ」


 太陽王オーギュスト14世はラソレイユ史上最も偉大な王となれた、それは何故か。

 オーギュスト14世は王権以外の全ての権力を弱体化させ封殺することができたからだ。

 僕が彼らとやろうとしているのはその逆、王権を全ての権力で包囲し封殺するのだ。


 「そうです。さしずめ省庁大連立包囲と言った所でしょうか」


 そう、これさえ完成してしまえば新たに生まれるオーギュスト16世の治世を流産にできる。そしてラソレイユという国家の主権が王から組織に降りてくるのだ。

 そうして初めて僕の計画の第一段階が完了される。

 

 

この時代のフランスに省庁みたいな概念はなく、大臣はあくまで王の家臣という扱いでした。


ではなぜラソレイユに省庁があるかと言うとそっちのほうが政治劇が映えるかなと思ったからです。


補完としてはアリス4世の時代で省庁を作成したが、オーギュスト13世と14世の流れを経て縮小、15世の時に少しずつ息を吹き返してきたって感じです


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