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冷笑にさようなら


 まずはごめんなさい、これは僕の、テルールの人生を記したものになります



 山形在住27歳Fラン指定校大卒男性、無職童貞。


 まずなんで僕が無職で童貞なのかそれを話しておこうか。


 いじめ?いやそんなものはなかった。経済不況?いやいやそんな訳が無い。


 僕は頭が中途半端にいい癖にプライドが高かった。

 つまり芸術家気質のくせに評論家気質だったんだ。


 ある日ハロワにいけと言われたよ。

 でも芸術家気質の僕が"僕は普通の人生を歩めるほど普通の感性をしていない"と叫んだんだ。


 じゃあ社会のレールを外れて生きる為に努力しようとすると評論家気質の僕に"そんな絵とそんな文章で何になるんだ?とても人に見せて金取れるものじゃねぇよ"と言われるのが怖いから努力できない。


 とここまで書き連ねてきたが要は


 働きたくないから働かない理由を自分に見いだしている卑怯者ってことだ。


 とても同情できない愚かな怠け者。それでいて助けてくださいも言えないなら、いっそ死んだ方が皆の為になる。


 と、結局自慰行為だ。この文章もこの思考も全て全て"自分はなんて可哀想なんでしょう!"と思いながら枕を濡らす為の自慰行為だ。


 そんな事を考えながら今日も布団で枕を濡らしている。

 

 深い眠りに落ちた。夢は好きだ、自分では居られないから。


 ただ白いだけの世界。白以外は何も無い。


 「よ!叶えてやったぜ願い」


 そこにはシルエットだけの黒い奴が居た。

 でも分かる、こいつは紛れもなく僕だ。僕の形をしている。


 「おらぁ神様だ。お前の願いを叶えてやった。嬉しいか?」


 神様だと?ぼ、僕は信じないぞ、僕は無神論者だからな!


 「おっと!おらぁお前のこと何でも知ってる!お前自身は無神論者って言ってるけど、初詣とかクリスマスとかに行かない俗世離れした自分にアイデンティティを持ってるだけってこともな!」


 あっ…返す言葉もないかもな。確かに無神論者ならソシャゲのクリスマスイベントに一喜一憂するわけないし。

 

 でもだ、お前自分のこと神って言うけど神ってそんな厭味ったらしくて醜いのか?


 「上位者規定第3条より抜粋、ニンゲンを救う場合、ニンゲンの信ずる形となって顕現しなさい。ルールなんでな!」


 うわぁ、神様っぽくねーなんだそれ…てかそれこそ僕の姿ででくるのはおかしいだろ。


 「おかしくないね。中学三年生のお前自身がお前が信じてるものだっておら知ってるもん!」


 これ以上レスバしても意味がないな…話変えよっか。

 で何の理由があってお前は、神は俺の前に現れたんだ?


 「いやお前の願いを叶えてやろうかなって。異世界転生?って奴?くだらねえけどやってやるか」


 「行きたい世界となりたい自分を願えよ。心の奥底、本心でいきたいと思っている世界に、なりたい自分にしてやるよ」


 僕は願った。

 そうだな、世界は中世ヨーロッパ風、イタリアあたりで画家をやってみたい。いや魔法騎士になって剣と魔法で戦って女の人にチヤホヤされたい!

 地方領主ってのもいいなぁ、王様になってみたり…


 お前それ恥ずかしくねぇのか?


 明確で、致命的な失敗。根付いた冷笑思想は自分の願いすらも冷笑する。



 明確な失敗だ。



 「メルシー!メルシー!□□□」


 何処だ、ここは?何言ってたんだこいつら…


 「□□□!□□□□」


 金髪碧眼の女?無精髭の男?西洋人?

 

 うわなんだこの手気持ちわる!!ちっさ!

 うわこの足も…


 「□□□!□□□!」


 え、これ僕じゃね?


 


 1年後。


 僕、山形在住無しょ…訂正。ラソレイユ、パリス郊外在住男子1歳。

 その名もテルール=テルミドール・マクシミリアム。

 テルール、もしくはテルール・マクシミリアムと呼んでくれ。


 さて、ここまで"僕について"を読んでくれた人へ。

 ありがとう、よく読んでくれた。でもあと少しだけ頑張ってくれ。


 僕はあいつ、評論家の自分のせいで望んだ世界にも望んだ自分にもなれなかった。


 僕は中世フランスやらの世界を望んでいたのに舞台は近世フランス風革命前夜を添えて。


 魔法はあるけど普通の人ができるのは煙草に火をつけるくらい。

 ちょうど僕のお父さんがやってるみたいにな。

 一応賢者くらいなら大砲一発分の威力の魔法が撃てるらしい。

 でも街を滅ぼしたりは絶対にできない。


 で、僕自身になにか特別な才能は…わからない。ステータスと願ってもステータスとでないしね。

 でもこの調子だと多分無いんだろうな。


 くそうくそうくそう!あの評論家で冷笑主義の間抜け!お前を今から頭の中から追い出してやる。


 「テルール!何やってんの自分の頭を叩いて!だめでしょ!」


 この人が俺のお母さん。マリア・マリー・マクシミリアム。金髪碧眼の美人、専業主婦でお針子の手伝いとかしてる。


 「そんなに自分の頭をいじめたいなら今度お父さんと勉強しようか」


 でこの人が俺のお父さん。ロベス=テルミドール・マクシミリアム。無精髭を生やした、Theおっさんって感じの人。職業は弁護士で貧しい人の弁護を中心にやってる、めちゃくちゃ尊敬できる人。


 「うあ、うぇるしー!」


 さすがの僕でもこの状況になったら焦るよ。言葉も分からない上に、前世の知識からして時代が荒れるのは分かりきってる。明確に死が形と言葉を持ってそこに感じられるんだ。


 「マリア!マリアいまテルールがメルシーって!メルシーっていったよな。」


 言葉の練習をしよう。この世界の言葉を理解するんだ。そして今度こそ助けてくださいを言える人間になるんだ。


 「テルール、もう一度言ってみて!メルシーって!」


 それにほら、人を喜ばせる何ていつぶりだろう。

 産んでくれた人に対して何もできなかった僕とは違うということを人に、世界に証明したい。


 「うぇるしー!」


 メルシー、意味はありがとう。ここ数年、店員さんはおろか親にも言わなかった言葉。


 僕の人生はリスタートした。

 

 

 

 ラソレイユ語はほぼフランス語です

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