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比翼の朔夜  作者: 浅見カフカ


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78/78

EPISODE:78 エピローグ

「最近、お客さん減ったねぇ」

開店前、マスターが寂しげに皿を拭いていた。

朔夜が去り、花音は入院、文乃は足繁く見舞いで、店から華が消えたせいだ。

俺はテラス席に【Reserve】のプレートを置いてテーブルを拭いた。

「また増えますって」

そう言いながら俺は、店のドアに掛かった札をクルッと【OPEN】に変えた。


カランカラン。

間もなくしてカウベルが鳴った。

「ご無沙汰ぁ」

文乃がマスターに手を振った。

その後ろで花音も手を振るが、まだ動きがぎこちなかった。

「なんか痛々しいから振るなよ」

俺がそう言うと「平気だもん」とあざとく拗ねた。

リザーブ席に案内した。

「なんだか懐かしく感じるね」

ふたりはそう言って、向かい合わせに座った。

「ケーキセットで良いかい?」

「はい」

二人の声が揃う。

「文乃はアイスティーで花音はホットコーヒー?」

「キリマンジャロで」

「今日のケーキはおまかせなんだけど、良いかな」

俺がそう言うと「選べないの?」と驚きと軽い抗議。

「まぁまぁ」

俺は軽くいなして「ケーキセット、アイスティーとキリマンジャロ」とカウンターに声を掛けた。


「花音ちゃんは珈琲好きだよね」

マスターは花音のオーダーにご機嫌だった。

花音はいつも豆を指定してオーダーする。

マンデリンだったり、コロンビアだったり......

煎り方や挽き方を指定することもあった。

色々試してマスターのやり方が一番いいと、最近はお任せだ。


さて——

サプライズの時間だ。

マスターを見ると、悪い笑みを浮かべていた。

俺はトレーに珈琲とアイスティーを。

マスターは俺の背に隠れてケーキを運んだ。


ふたりの前に珈琲とアイスティーを置いた。

そしてマスターが、ふたりの間にホールケーキをひとつ置いた。

イチゴと生クリームのケーキ。

中央のチョコのプレートに【花音ちゃん 退院おめでとう】とあった。


ふたりは立ち上がって驚くと、すかさずスマホでパシャパシャ撮り始めた。

俺とマスターは、苦笑いしながら「おめでとう」と言って下がった。


再びカウベルが鳴った。

ふたりに戦力ダウンしたが、やはりテラス効果だろうか。

初見の男がふたり——

初見だけど見覚えがあるのは何故だ?

なんのデジャ・ヴュだろうか。

席に案内しようとカウンターから出たところで、全てを理解した。


ふたりの後ろから美女がふたり。

朔夜と月読だった。

......と、言うことは男は磯城と夜刀!?

「奥」と朔夜に耳打ちしてテラス席を示した。


「キャー」だか「ギャー」だか。

悲鳴なのか歓声なのか分からない叫びが聞こえた。

マスターは、若干引きながらも嬉しそうだった。


「夜刀は神格剥奪で、人間にした」

月詠は夜刀の処分について話した。

「あんなイケメンじゃ処分にならないですよ。せめてブサよりのフツメンじゃないと!」

月詠の耳元で、囁きながらの全力抗議だった。

月詠は軽く吹き出すと「それでは花音が気の毒だろう」と真顔で言った。


当の夜刀は花音の隣で、いい雰囲気で座っている。

(いや、これ完全にご褒美じゃねぇか)

朔夜も磯城にベッタリだった。

(まぁ、新婚みたいなもんだしな)

「あ」

磯城が腰を浮かせた拍子に、尻のポケットにフェルトのアップリケが見えた。

「だって可愛かったから」

俺の声と視線に気付いた朔夜が、モジモジと言った。


「......とりあえず全員、珈琲でいいッスか」

なんかどうでも良くなってきた。

「アコーイラスコーコレアモヒーンティー」

「待て待て、一度に言うな。何言ってるか分からん」

「ビリーよ、何を不貞腐れておる。恋人が欲しいのなら妾が相手しようか」

月詠が何かを殺しそうなセーターを強調して、とんでもないことを言い出した。

俺が言葉に詰まっていると「あははは、冗談に決まっておろう。それに其方そなたの相手はそこで怖い目で妾を見ておるわ」と視線を遣った。


その先に、真っ赤な顔で俯く文乃が居た。



-了-




ご愛読ありがとうございました。


主人公の本名は......機会があればまた別のお話で。

実はこの作品は【花物語】という純文学を読んで貰いたくて書き始めたものでした。

でも、書いているうちに楽しくなって、当初の目的はすっかり忘れていました。

そしてキャラクター達にも愛着がわいてしまい、この大団円となりました。

いつかまた朔夜たちの物語を書けたら良いなと思っています。


それでは、また。


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