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比翼の朔夜  作者: 浅見カフカ


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EPISODE:74 番狂わせ

夜刀が倒れた。

朔夜様が向けた切っ先から、明確な殺意を感じた。

一連の体捌きも強烈な殺気も——

私の時には手加減していたのね。

まるで子供をあやす様に。


それでも——

私は矢をつがえて弾き絞った。

矢尻の先に朔夜様を捉えた。

「好きよ、朔夜様」

弦から指を離すと同時に私は飛んだ。

矢は真っ直ぐに、狙い通りに朔夜様の元へ。

その後ろを私は追った。



夜刀の目から力は失われていなかった。

切っ先を向けられ、死が迎えに来る寸前にあって尚。

「お互い覚悟の上か」

私は渾身の突きを放った。

右腕が砕けようが構わない。

夜刀の頭蓋さえ貫けばいい。

ヒュン。

耳元を風が抜けた。

刹那——

金属の甲高い音が響き、切っ先の軌道が逸れた。

矢だった。

太刀の軌道を変えた矢は自らも起動を変えて地面に突き刺さった。

私の太刀は夜刀の頬を掠めた。

長い銀髪が数本舞った。

ならばこのまま横に薙ぐ!

骨が軋んだ。

捉えた!!

確信と同時に一陣の風。

私の太刀を弓で受ける少女が、目の前に居た。

「花音」

「朔夜様」

花音の弓は乾いた枝のように折れ、花音自身の右腕も不自然に曲がっていた。

漆黒のドレスが裂けた下から白い物が見えた。

互いに名を呼びあった後の静寂。

「よくやった」

花音の腹を食い破るように、三叉槍の切っ先が現れた。

躱せない——

三又の中央が眉間を目掛け、伸びて来た。

こんなにゆっくりと見えているのに、身体はそれ以上に動かなかった。

「朔夜ー!」

磯城様の絶叫が聞こえた。

花音は口から血を吹き出しながら、こちらへ手を伸ばしていた。



「あのバカ」

朔夜と夜刀の間に花音が割って入った。

「ケーキセット食いに来いっていったじゃねぇか」

俺は握り締めていた手を広げた。

そこには式神の護符。

花音が俺の手を繋いだ時に返してきたものだ。

逃げろって意味だったんだろうけど、逃げないのが男の子。

俺は式神に息を吹き掛けると、その背に乗って飛んだ。

「夜刀、花音も朔夜も殺させねぇぞ」



真横から衝撃を受けた。

予期していない方向からの衝撃に、右腕は完全に折れた。

そのまま地面に転がった視線の先、三叉槍が空を突いたまま止まっていた。

「花音!花音は!?」

取り乱す私に「紙切れ一枚を破かれたくらいで大袈裟だな、朔夜」と少年が笑っていた。

ああ、これはいつか私が彼に見せた戦い方。

三叉槍の柄には破れた式神がぶら下がっていた。


八咫烏が気絶した花音をそっと下ろした。

見ると腕の骨折までは現実だった。

折れた骨が皮膚を突き破って露出していた。

「開放骨折......」

ベルベットのドレスが血を吸い取って、漆黒をどす黒く塗り替えていった。

それは絶望の色だった。





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