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比翼の朔夜  作者: 浅見カフカ


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EPISODE:72 完全体

「磯城様、肩に!」

この場を離れようと駆けた。

だがもう既に逃げ場は無かった。

立ち上った紫の光は天まで達し、五芒星を描いた。

そしてこの紫の光が壁となって、私たちは狭い三角形の中に取り残された。


見上げると木々の隙間から、天が裂ける様が見えた。

そして光の壁越しの眼前では、大地が裂けた。

「なんという呪法か」

呻くように言葉が漏れた。

おそらくは天と地より使者が現れるだろう。

いや、聖者と亡者と呼ぶべきか。

神ならざる神が、神となる。

それを阻止出来ぬばかりか、呪法の手助けをしてしまった。

口惜しい。


裂け目から突風が吹いた。

周囲の木々がざわめき、枝が千切れた。

直後、大きなヲロチが勢いよく飛び出した。


天を見やるとその先に、輪郭だけが存在を主張する、名も魂も持たぬ神体があった。

ヲロチは大きく口を開くと、遥か上空で神体を呑み込んだ。

そしてそのまま木々をなぎ倒し、落下した。

土埃が舞い上がり、地を這うヲロチの身体が五芒星を破壊した。

「離れましょう、磯城様」

私は磯城様を連れてこの場を離れた。

ここではいつ、ヲロチの下敷きになるか分からない。

旋回する八咫烏の影が落ちた。

警戒を強めている。


ヲロチはやがて動きを止めると、浅い呼吸を始めた。

その縦の瞳からは思考が読み取れなかった。

次の瞬間——

ヲロチの顔が歪んだ。

横に引き伸ばされるように眉間が広がり、殺気が消えた。

そして眼球が飛び出し、引っ込み......爆ぜた。


その、胴だけが残った空洞の筒――

内側から、別の存在が踏み出した。

神体。

いや、夜刀だ。


まるで洞窟から出るように外へ踏み出すと、周囲を睥睨へいげいした。

最後にゆっくりと振り返ると、文字通り抜け殻となったヲロチに手のひらを向けた。

閃光に一瞬、目が眩んだ。

轟音と共に大地がえぐれ、ヲロチ身体が蒸発した。


「あの身体、私が受肉すれば良かったかな」

「磯城様、私はあのような殿方は好みではございませんわ」

助かった。

磯城様の仰る冗談に、固まっていた身体が動く。

「最近、フェルトが好みなのです」

一気に地面を蹴って、樹木の間を縫うように走った。


——ヒュン。

風を切る音が耳元をかすめた。

その先で数本の木が爆ぜて倒れた。

棗玉なつめだま程度の大きさで、この威力か」

肩の上で磯城様が呟いた。

「先程の大きな光よりも、連射するだけ厄介ですわ」


夜刀が広範囲に撃っているのは、私たちの位置を捕捉出来ていない証拠だ。

一気に樹海を出るべきか、一撃離脱を繰り返すか......

答えは決まっている。


【ぶん殴る】


受肉したならば都合がいい。

あの男への積年の怒りをぶつける絶好の機会だ。

「身体を得たこと、後悔なさい」

私が反転して夜刀へと切り込むと、察した八咫烏が急降下を始めた。


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