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比翼の朔夜  作者: 浅見カフカ


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EPISODE:70 五芒星

単調な景色の樹海。

八咫烏の導きが無ければ、無為に彷徨うことになっただろう。

それでも度重なる大蛇の襲撃に、進路を妨げられた。

単調だが、数を頼めば私の体力と時間を奪うに十分だった。

——?

数を頼むなら複数で掛かればいい。

一騎討ちなどと言う美学は、蛇蝎が持ち合わせているものではないだろう。

犬死が望みなら屠るだけだが......


樹上に潜む赤い目を見つけた。

私が太刀を構えた瞬間——

猛然と、一瞬で距離を詰めて襲撃を掛けて来た。

私にではない。

先を行く八咫烏が襲われた。

いけない!!

今までのは命を賭した偽計か。

導を失うわけにはいかない。

私は木々を蹴り、三角飛びで大蛇の頭上へ出た。

八咫烏も鼻先を蹴りあげて応戦している。

私は強く幹を蹴って、大蛇へと飛び降りた。

大蛇の眉間に太刀の切っ先を定めて構えた。

八咫烏の背後、大蛇の死角を飛んだ。

八咫烏は寸前まで大蛇を引き付けて、身をかわした。

その影から飛び込み、太刀の切っ先に力を込めた。

突然、磯城様の声が響いた。


「いけない、朔夜。殺してはダメだ!!」


私はその声に瞬時に反応した。

太刀の切っ先を逸らして、たいを捻り大蛇の脇を抜けた。

——はずだった。


大蛇は脇を抜ける私に向い、その巨体を自在にくねらせ迫ってきた。

そして——

自ら太刀に飛び込んだ。


眉間に切っ先が吸い込まれるように突き刺さった。

彼の脳幹にやいばしらせが訪れると同時に、全身の力が失われた。

巨大な鞭を叩きつけたような衝撃に、大地が揺れた。

同時に土埃が舞った。

私は太刀を引き抜き飛び退すさると体勢を低く構えた。

血飛沫が柱のように上がった。

土埃が大蛇の血を吸い取り、赤黒い泥となって流れた。

まるで濁流の川のように。

"掘られた溝の中"を。


磯城様が私を止めた理由を悟った。

大蛇たちの散発的な攻撃も、五匹目の大蛇の行動の理由も。

樹海に紫の光が立ち上がった。

大蛇が果てた五箇所を繋ぐように。


巨大な五芒星。

これは陰陽道の外法だ。

正道ではない。

大きな揺れと波動が倒木や岩を浮き上がらせた。

悪意に満ちた呪いが、天に向かって光を放っていた。


五体の大蛇を贄に五芒星が完成した。

いや——私が完成させてしまった。




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