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比翼の朔夜  作者: 浅見カフカ


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EPISODE:69 思案

「さて......」

花音が去った後、俺は行動を決めあぐねていた。

理由は単純至極。

洞窟の奥は行き止まりで、出口は崖の中腹に開いていた。

式神は拉致された時に、しっかりと没収されている。

つまり、花音が持ってきたメシを平らげてしまうと何もすることが無かった。

これでは助けを待つだけのお姫様だ。

来るのは口髭の配管工兄弟ではなく、神様とは贅沢な話だ。

——どうしたものか。



「お婆ちゃん、本当なの?」

ルリ子さんの昔話に、陽子さんが水を差した。

「本当よ。細かいところはあやふやなところもあるけれどね。恩賜公園での夜と、その時に出会った人が、あなたのお爺ちゃんと言うのは紛れもない事実よ」

「嘘じゃないと思います。私も朔夜ちゃんが大きな蛇と戦ったのを見ました。それに、今はきっと同級生の男の子を護っているんだと思います」

ルリ子さんの味方をして陽子さんに説明した。

陽子さんは少し黙ってから「ガソリン入れていい?」と言った。

拍子抜けした私たちは少しの休憩と、給油、そして食べるものを少々買うことにした。

式神さんがどこまで行くか、皆目見当もつかなかったから。


「文乃さん。式神ってどんな姿で飛んでるの?一反木綿みたいな?」

陽子さんの言葉に、つい笑ってしまった。

人形ひとがたです。けん玉を平べったく......影です。けん玉の影みたいな形!」

「こんな?」

陽子さんがメモ紙に描かれた絵を差し出した。

「そうです、これですよ。なんだ陽子さん、知ってるんじゃないですか」

私がそう言うと「ごめんなさい」とバツが悪そうな表情を見せた。

「実は本当に二人が同じものを見ているのか試したの。これはさっきお婆ちゃんに描いてもらったの」

陽子さんはそう言うと「本当に不思議なことってあるものなのねぇ」とひとしきり感心していた。



ここまで数体の大蛇を朔夜は屠った。

大蛇の攻撃は苛烈だった。

朔夜を仕留めてしまえば、私などどうとでもなる。

そんな意思をひしひしと感じた。

——そう、あからさまに。

あの狡猾な夜刀が?

どうして集団で襲わないのか?

勝利する可能性も、不意をついて私を害することも有り得るというのに.....,

何故だ?

何かがおかしい。

見落としている事実があるはずだ。


一体一体をぶつけて来る意味——

時間稼ぎだろうか?

夜刀は逃げようとしているのか?

それとも誘導?

我々を何処に誘い込もうと言うのか?

だが八咫烏様のお導きがある以上は、そんな姑息な企みなど意味を成さない。

考えろ、私。

私には私の戦い方があるはずだ。


——!?

まさか。

天啓を得たような閃きは、あまりに酷く、あまりに切ないものだった。

それが正しければあと一体の大蛇。

五体の大蛇で終わる。

そして今、五体目の大蛇に朔夜の刃が迫っていた。

「いけない、朔夜。殺してはダメだ!!」

絶叫が森にこだました。


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