EPISODE:63 桜
朔夜ちゃんが狼狽している。
こんな姿、初めて見た。
ビリーが姿を消した。
昨日のバイト終わりから、自宅にも戻っていない。
ご家族もマスターも随分心配していた。
そして今日、花音ちゃんもお店に来なかった。
「ゴメン文乃。今日はこれで解散にしよう」
朔夜ちゃんに両手を合わせてお願いされた。
これはもう仕方ない。
花音ちゃんとのLINEも繋がらなかった。
三貴子お姉様と会ってから、様子が違ったかも。
朔夜ちゃんのお友達だから、やっぱりそういう系?
また二人が戦うのかな。
イヤだなぁ。
Wyatt&Billyでまた三人がいいな。
でも——
ビリーがなんとかしてくれるんじゃないかな。
私はなんとなく楽観していた。
そして(どうしてビリー?)って、自分でも少し驚いた。
どうしようかな。
今日は一人になっちゃった。
二人が仲直り出来た用の、三人お揃いのアクセでも買いに行こうかなぁ。
駅ビルのプチプラアクセを、おひとり様しよう。
言っても仕方ないけれど、三人でワイワイ選びたかったな。
石畳を模した歩行者専用道路。
駅に続くこの道の両側は、お洒落で少しお高い店が多い。
カフェもWyatt&Billyより数百円高い。
気合を入れて映えを気取る時に、オープンテラスで自撮りに使ったこともある。
【いいね】が付けば付くほど虚しくなったのは、三人で遊ぶようになってからだ。
「こんにちは」
「......」
「今ひとりかな」
ナンパ。
いつもは適当にあしらうんだけど、足を止めてしまった。
「ひとりです。ダメですか?友達一緒じゃなきゃダメですか?」
「あ、いや、どうしたの?」
「一緒に居たい友達が、一緒に居られないのがそんなにダメですか!?」
泣き叫ぶように言った。
周りの人達が足を止めて、遠巻きに見ている。
「なんかやべぇよ、アンタ」
ナンパ男はそれだけ言うと、慌てて走って行った。
涙目で周囲を見回すと、野次馬たちは蜘蛛の子を散らすように去って行った。
好奇の目は未だ向けられているような気がした。
でも、走ったら負けな気がして、私は歩いた。
顔を上げて堂々と。
ネックレスを三つ買った。
桜をモチーフにしたお揃いの。
重なった三つの桜を、真珠が繋ぐデザイン可愛かった。
朔夜ちゃんって桜のイメージ。
私の苗字の桜井。
そして花音ちゃん。
うんうん、これは私たちにピッタリだ。
仲直りしたら——
そう思ったけれど、買ってしまうと早く渡したい。
でも、何処にいるか分からなかった。
(やっぱりついて行くべきだった)
そう思った時、サコッシュの中で指が何かに触れた。
(えっ、どうして?)
驚きはしたけれど、これは僥倖だった。




