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比翼の朔夜  作者: 浅見カフカ


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EPISODE:62 モノローグ

「主賓をお迎えするわよ、夜刀」

大蛇達を従えた私は崖の上に立った。

眼下には開けた草原くさはら

朔夜様の位置が全て見渡せる。

仕掛けは十分に施した。

私は希代の悪辣な魔女として討たれる。

その為には、朔夜様に憐憫の感情のひとつも持たせてはいけない。

その為には星夜くん......いけない、違ったわ。


ふふ。

私の物語はそこから始まったのね。

優しい彼を好きになって、でも気持ちの伝え方も分からなくって。

そして、嫉妬を向けた正体不明の恋敵が貴女——朔夜様だった。


貴女の腕の中に抱きとめられた瞬間、全てを奪われてしまった。

ベルベットのような手触りの髪。

花のような芳しい香り。

桜の神様ですものね。

白くて柔らかな肌も、深く吸い込まれそうな瞳も、その全てが私を奪ったの。


そして、人としての生もあれから失った。

後悔はしていない。

夜刀と結んだ事も、妖魔の力を宿したことも......

この力を持てたから、朔夜様と交わる日常があったんだもの。

永遠の平行線なんて耐えられない。

交わった行方が、たとえ滅びだとしても私は幸せ。


「花音、感傷に浸るのはよせ」

夜刀が私の左腕を絞めた。

「乙女のセンチメンタルタイムの邪魔をするなんて無粋ね」

私が軽く口を尖らせると「ふざけて勝てる相手ではないぞ」と言った。

「本気でも勝てないわよ」

「勝てるさ、花音。夜刀神と魔女。向こうは神ひと柱のみだ」

「どうかしら」

私が冷ややかに笑って見せると「馬鹿なことは考えるな」と嗜められた。

「馬鹿なことをしたから、夜刀と一緒にいるんじゃないの」

ふんと鼻で笑われた。

私が死んだらそれは贄ってことになるのかな?

夜刀が私の亡骸を手に入れなければ、朔夜様の勝ちかな。

贄を手にした後の夜刀がどれだけ強くなるかは分からないし、それを見届ける術は私にないけど......


不意に右手に触れられた。

視線を見遣ると大蛇の一匹が頭を擦り付けていた。

ああ、よく懐いている子だ。

頭を撫でてやると尾をくねらせていた。

嬉しいのかしら?

そう思っていると、次々と大蛇たちが自分も撫でろと押し寄せ囲まれてしまった。

(ごめんなさい)

私はこれからこの子達を捨て駒にする。

きっと誰も生き残らないだろう。

朔夜様は壮麗で苛烈だ。

この子たちの存在を赦さない。

せめて天の国に召し上げてほしい。

貴女の桜を手向けてあげて。


地獄で焼かれるのは、私と夜刀だけでいい。


——ねぇ、夜刀。今日の私、綺麗かな?




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