EPISODE:59 Killing Me Softly With His Song
犬神人——
過去からの刺客に射抜かれた気分だった。
まさかあの娘が犬神人で、夜刀と結ぶとは......
「これは因果か皮肉な運命か」
言葉が口を突いた。
円満院と潤童子を操り、茶々丸を希代の悪童に仕立て上げた外法の衆。
その末裔と再びまみえるとは。
——死は救いになるだろうか。
月読命の言葉をどう捉えるべきか。
磯城様ならどうするだろうか。
出口の無い迷宮。
答えを求め彷徨う夜。
見上げた星の瞬きも、やはり語ることはなかった。
「朔夜ちゃん」
「朔夜様」
両側から腕を組まれた。
屈託なく笑う文乃と、はにかむ花音。
目が合ったあと、花音は私の耳元に口を寄せた。
「朔夜様になら殺されてもいいわ」
囁きに振り向くと「でもね、お願い。時々思い出して。その時だけは、朔夜様は私だけのものだから」と言って腕を離した。
「いっけない、用事思い出しちゃった」
そう言って手を振ると、踵を返して駆けていった。
「なんだ、残念」
文乃が意外な言葉を口にした。
「最近ね、花音ちゃんとも仲良くなったの」
文乃は照れたように言うと「えへへ」と笑った。
「そう......ねぇ文乃」
私はひとつ質問を投げかけた。
「もし、私が居なくなっても花音と仲良く出来る?」
「えー、朔夜ちゃん転校とかヤダよー」
文乃は私の袖をつかんで、子供のように拗ねた。
「もしよ、も・し」
「うー」
抗議と疑惑視線を向けながら「花音ちゃんとはずっと友達だよ。だから居なくなるなんて言っちゃイヤ」と文乃は言って、再び袖を引いた。
「伸びるって文乃〜」
文乃は手を離さない。
「もう、アイスラテ奢るから」
「ケーキセットで」
「太るわよ」
そう言うと文乃は頬を膨らませて「太って重りになって捕まえるもん」と、声まで太らせて言った。
「あはははは」
思わず声を出して笑った。
私、最後にこんな風に笑ったのはいつだっただろう。
もう、答えは決まった。




