EPISODE:35 前夜祭
審査の結果が出た。
ウチのクラスがぶっちぎりで優勝だった。
朔夜が戦った相手については、やはり質問責めにあった。
クラスの実行委員長がマイクを向けられてオタオタしていた。
俺は横から委員長のマイクを奪った。
「これはサプライズのアドリブでした。俺がアヒルの透明浮き輪を用意しました」と説明した。
クラスの実行委員が『勝手なことを』と目で訴えていた。
「首を刎ねる相手がアリスというのは、私ちょっと嫌だったの」
朔夜が隣でそう続けると、途端に好意的な視線に変わった。
表彰には朔夜と桜井が代表で上がった。
真っ赤で豪奢なドレスの朔夜と、青と白で清楚なワンピースの桜井。
朔夜コール、桜井コールが上級生の間から巻き起こった。
野太いコールが地鳴りのように響いた。
演説台の階段を上がるふたりの様子に、今度は甲高い悲鳴が上がった。
(また妖魔か!?)
身構えた俺だったが、理由を理解して目眩がした。
桜井が朔夜の手を握って、腕を絡めるように登壇していた。
女子の甲高い絶叫に、男子の野太いコールが重なった。
何かが刺さった連中だ。
(あれ?)
俺は今、何かを思い出しかけていた。
ついこの前だ。
思い出せ、俺。
背中を爪先でなぞられるような悪寒。
最優先事項だ、思い出せ。
「......きさま。しきさまー」
騒がしい声の中、朔夜の声が真っ直ぐ届いた。
顔を上げるとまだ手を繋いでいるふたり。
(!?そうだ、ジャージ泥棒だ)
アイツ、俺の手を払って朔夜の手を握って......
岡田(仮)は妖魔とは別に、警戒すべき存在かもしれない。
俺はそんな危機感を覚えていた。
そして今、近くにいるような予感めいた確信があった。
「朔夜!!」
俺は生徒たちをかき分けて朔夜の所へ急いだ。
先輩達に囲まれていた朔夜が「指揮様!」と俺を呼んで走って来た。
俺は酷いブーイングと恨みの視線を背中に浴びながら、朔夜を人気の無い場所に連れ出した。
校舎裏の非常階段下。
俺はここで先日の岡田(仮)の話をした。
朔夜の反応は素っ気なく「最初は指揮様のストーカーだったのにね」と言った。
「えっ!?」
俺が驚いていると「せっかくモテてたのに気付かないなんてもったいない」と、揶揄うように笑った。
そして「でもね」と続けた。
「岡田(仮)が次に姿を現すのは、私の前なのかしら?」
悪寒が走った。
ライバルの排除——
おそらく岡田(仮)は正常な思考回路ではない。
サイコパス思想の持ち主だろう。
「桜井さん!!」
思わず出した大声が、鉄階段とコンクリートの壁にこだました。
生ぬるい風が、僅かにカビ臭さを運ぶ。
「探そう」
そう言うと朔夜は力強く頷いてくれた。
俺たちは二手に別れて桜井さんを探すことにした。
(クラスメイトの誰かと居てくれ)
俺はそう心に強く願って駆け出した。




