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比翼の朔夜  作者: 浅見カフカ


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EPISODE:34 行灯行列

時計のウサギは陸上部の斎藤が務めた。

一万メートルを得意とする選手だ。

当初は着ぐるみという設定だったが、運動量を考えると危険だとストップが掛かった。

——という事で、バニーガールの格好をさせられている。

ちなみに斎藤は男子だ。

別な意味で危険だと思ったの俺だけではないと思う。

時計ウサギは行列先頭から後ろ、更には山車の上に乗ったりと大忙しだ。


アリス役の桜井さんは踊りながら先頭を歩いていた。

他のクラスにもファンが居るようで、沢山のスマホ向けられていた。

きっとそういうのに慣れているのだろう。

笑顔で手を振ったりする姿は、アイドルさながらだった。


ときおり帽子屋やチェシャ猫の招きで山車に上がって、より一層の声援を貰っていた。

対して俺たちトランプ兵は、ただダラダラ山車の周りを行進していた。

誰からの注目も声援も無く。


ひときわ大きな歓声が上がった。

山車の上に赤いドレスの裾が見えた。

真打ちの登場だ。

「首を刎ねてしまいなさい!!」

沿道に朔夜の声が響いた。

それを合図に数体のトランプ兵がアリスに近付く。

手筈通り、剣の舞が流れた。

踊りながら逃げ惑うアリスに合わせて、俺たちトランプ兵が剣や手を触れないように動かす。

クルクルと回りながら、トランプ兵の間をすり抜けるアリス。

沿道からの拍手喝采。

チェシャ猫が山車の上から縄ばしごを下ろした。

離れるトランプ兵。

時計ウサギと帽子屋がアリスを引き上げた。

悪くないシーンの筈だが、笑いが起こる。

——時計ウサギ、お前だ。


そうして山車の上でアリスと女王が対峙してクライマックス。

「きゃぁぁぁ」

悲鳴だ。

これは台本に無い。

見上げた俺は「ウソだろ」と、思わず声を漏らした。

アリスの周りに妖魔が居た。

半透明のスライム状。

大きなナメクジのように山車の上を這っていた。


(どうする?)

俺が朔夜を見上げると「首を刎ねておしまい!」朔夜は再び大きな声で言うと、俺に向かって手を出した。

俺が朔夜にアルミホイルを巻いたダンボールの剣を投げ渡すと、朔夜はその陰に太刀を顕現させた。

夕刻から始まった行灯行列。

朔夜のドレスをより一層の赤に染め上げた夕陽が、剣を振るい舞う朔夜を炎のように見せた。

妖魔は朔夜が踊る度に、夕陽色の体液を散らして果てる。

俺たちにとって、ツイていたことがある。

妖魔が俺の居場所を知らずに朔夜を襲っていた。

これは朔夜にとって最高に戦いやすかっただろう。

俺はBGM班に合図をすると、朔夜の戦闘シーンを盛り上げさせた

剣の舞が再び流れた。

歓声が更に大きくなった。

朔夜がアリスの腰に左手を回した。

何かを指示しているのだろうか?

アリスの顔の間近に、朔夜の顔が寄った。

「キャー」

沿道の女子から別の意味の悲鳴が上がった。

朔夜はアリスを片手で抱き寄せ、妖魔との殺陣たてを演じた

剣の切っ先が妖魔の皮膜を切り裂く。

BGMに合わせて、切り結ぶように剣を振るった。

最後の一匹を薙ぎ、蹴り落とした。

ここで剣の舞の休符。

腰が抜けたアリスを片手で抱きかかえると、朔夜は山車から飛び降りた。

そこがちょうどゴールのグラウンド。

着地の瞬間、演奏が同時に終わった。

観客も先生達も演出だと思い込んでいて、大変な拍手が巻き起こった。

ハートの女王がアリスを降ろした。

もう台本はめちゃくちゃだったが、チェシャ猫と帽子屋、時計ウサギがふたりに駆け寄った。

手を繋ぎ踊る。

——なるほど。

察したトランプ兵達も、五人を囲むように踊ってアドリブの大団円で行列を締めた。


真っ赤な夕陽は沈み、蒼いとばりが周囲に満ちた。

LEDの点滅が、俺たちの影を幻燈のように照らしていた。




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