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比翼の朔夜  作者: 浅見カフカ


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EPISODE:33 ハートの女王

「朔夜ちゃんは絶対貞子よ」

「ゾンビメイドしか勝たんって」

「ヴァンパイアは?」

教室の一角で女子が朔夜に群がっていた。

冥土カフェのコスで盛り上がっているようだ。

朔夜のことだ。

どうせ仏頂面、良くても無表情で、塗られるままにされているのだろう。


それを横目に俺たち裏方モブは、せっせとのこを引いて釘を打つだけだ。

「親方ぁ」

「なんでぃ指揮」

「コッチの墨と水お願い」

「おうよ!」

木島の呼び名はすっかり親方になっていた。

大工の親父さんに仕込まれたせいで、かなりの腕前だった。

水の入った管で均等な高さを測れるなんて、思いつきもしなかった。

タコ糸に分銅をつけたようなもので、垂直を見れる事も驚きだった。

水盛、下げ振りと教えてもらったけど、来週には忘れていると思う。

でもこういう物や、やり方があるってことは絶対忘れないだろうなと感じていた。

そっか、学祭って体験学習なんだ。

俺はなんとなく本質が見えた気がした。


「ほら、男子。サービスタイムよ」

不意に声をかけられて振り向くと、口の端から血を流した蒼白い顔で朔夜が立っていた。

浴衣を前帯で締めて、日本髪っぽく見えるように盛っていた。

(花魁?)と思った瞬間だった。

「ありんす」

朔夜の言葉に教室が揺れた。

男子全員の心臓が射抜かれていた。

ってか朔夜もノリノリだったんだな。

そんな様子に俺は少し嬉しくなった。


「仮縫い出来たよー」

そんな盛り上がりの中、行灯行列組が大声で入って来た。

大抵がトランプの絵でサンドイッチマンをするだけだが、数人は手の込んだ衣装になる。

例えば小柄で可愛い系の桜井さんはアリスの衣装。

我らが朔夜はトランプの女王で豪奢なドレスだ。


三日前、投票で女王に決まった時は正直吹いた。

本人はアリスを知らないらしく、相変わらずの無表情だった。

「悪役だよ」

俺がそう耳打ちすると、ふふんと何故か嬉しそうだった。

その日、帰宅してからずっとアリスの"絵本"の読み合わせに付き合わされた。

「せめてアリス・イン・ワンダーランドにしよう」と俺が懇願すると、エンドレスリピートで見る羽目になった。

嫌がらせかと途中で何度か朔夜を見ると、キラッキラの目でタブレットを観ていた。

「学祭、楽しみか?」

「そうね」

素っ気ない返事だった。


仮縫いの真っ赤なドレスを着た朔夜は、はにかむ様な笑顔を見せた。

風に裾を遊ばせて回る姿に、男子も女子も息を飲んだ。

「ウサギもネコもネズミも帽子屋も、みんな女王に付いちまったな」

俺の言葉は熱狂に飲まれて消えた。


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