EPISODE:29 No.1ホストの俺が田舎に転生して純愛ライフを楽しむ
「星夜さん、今月もトップですね」
「ああ、ライバル心剥き出しの女達がこぞってドンペリ入れるからな」
「いやぁ、これでマジ枕やってないんですか?」
俺は馬鹿なことを聞いてくる聖を軽く蹴った。
「ばーか、ウチで枕やったらクビだぞ」
「そっすね」
「聖、お前やってないだろうな」
「俺はやってないっすけどね......」
聖は辺りを回すと声のトーンを落として「王牙さん、枕やってる上に売り掛け払えない客を風呂に斡旋してるって」
「マジか」
王牙は万年No2のホストだった。
最近は派閥作って嫌がらせしてくる男だった。
「星夜さん、王牙さんはなにか企んでる気がしますよ」
そう言うと聖は「アフター行ってきます」と言って店を出て行った
俺も片付けは新人とお茶引き達に任せると、聖に遅れて十分程遅れて外に出た。
エレベーターの回数表示が一階を示した。
扉が開いて外に出ようとしたとき、女が乗ってきをた。
軽くぶつかり「すみません」と言ったと思う。
でもよく分からなかった。
俺はそのままエレベーターの中に下半身を残したまま倒れていた。
脇腹から大量に血が流れだしていた。
——刺された!
そう理解した時には既に女は人混みに消えていった。
ただその寸前、女が誰かに嬉しそうに報告しているのが見えた。
なんとなくそれは王牙に見えた。
俺は女神にことの顛末の全てを話した。
女神は微笑むと俺に手をかざした。
「あなたにはシンセリティの加護を与えるわ」
「シンセリティ?」
「そうよ。誠実であれば貴方のステータスはチートになるの。ただ、不実になれば最弱よ。ミジンコにも負けるわ」
女神はそう言って俺を雲の上から突き落とした。
「なんだよこれ!?」
俺は途中で本を放り投げた。
アニメ化決定らしいが、文章能力が壊滅したこの小説がどうして選ばれたか意味が分からなかった。
それにしてもどうして俺の下駄箱にこれが入っていたのか?
意味がさっぱり分からなかった。
朔夜に渡してみたが手にした途端に「くだらない、時間の無駄」と、やはり放り投げた。
「少しは読めよ」
「一行読んだわよ」
なるほど。
そもそもチートとか都合がよすぎる。
弱い敵に圧勝して「俺TUEEEE」ってなんだよ?
強い敵にも圧勝して「俺最強」って子供か。
そもそもリアルにそんな話が.......居た。
俺の視線は当然朔夜に向いた。
「何よ」
「星夜様ぁー」
次の瞬間——俺の全弁慶が泣いた。
俺は足を引きづりながら本を拾うと、とりあえず図書室に向かった。
「No.1ホストの俺が田舎に転生して純愛ライフを楽しむってこの本なんだけど......」
「ああ、ホス愛ですね」
図書委員はそう短く略すと「どうしましたか?」と尋ねてきた。
「多分何かの間違いだと思うんだけど」と経緯を話すとパソコンにタイトルを入れ始めた。
長く打ち込んでいたのでPCの台帳は略していないのだろう。
「あー、ヒットしませんね。タグを剥がした形跡もありませんし、図書室の本ではないです」
そう言われて俺が少しように頭を搔くと「落とし物入れに入れたらどうです?」と素晴らしい解決策を提示してくれた。
その後は落とし物入れの台帳に短く『ホス愛 第一巻』と書いて正面玄関に向かった。
そこでは朔夜が俺を待つようにまだ立っていた。
なんとなく「待たせてごめん」と言うと「貴方、妖魔よりも厄介なのに狙われてるかもね」と意味ありげに笑った。




