逆転
___________はるか上空
ディオが放った白い光___”圧縮熱電”が空獏を貫き、空獏は霧となって消えた。その霧の一部を御河とディオが吸ってしまった。その瞬間、頭に流れる2人のものではない記憶。
『・・・お前、欲がないな。』
あれはちょうど4年前、まだ桜の蕾が青い頃か。あの方が私の住む森にやって来たのは。
『何者だ。』
『フッ。怪しいものではない。お前は、なぜ欲が消えた?』
そう微笑みながらあの方は問いてきた。なぜ?この世は裏切りに満ちているからだ。
『教えて何になる。』
『たしかに。この世は裏切りに満ちているからね。君の警戒は正しいよ。』
この言葉を聞いた時、我王はこの方だと悟った。絶対に裏切らないと。
『お前、いや貴方様は欲を持ち続けるですか?』
『貴方様はやめてくれよ。僕はずっと欲を持ち続けるよ。・・・親友のためにもね。』
あの方の笑顔はとても眩しかった。我に向けて笑うのが勿体ないほどに。
《僕の計画を実行する時が来たね。まさか実行できるなんて思っていなかったけど。その名も”窮地に立たせて覚醒作戦!”あの子は半分人間だし、まだ最強じゃないからね。》
絶妙に名前がダサい。が、あの方なのだから実現してしまうだろう。我はあの方の忠実なしもべだ。たとえあの方が私を捨て駒にしようと役に立てるのなら、どうなってもいい。
《ごめんね。本当は違う者が良かったんだけど、ちょうどよく実力を測ってくれる者がいなくてさ。》
『お役に立てるだけで光栄です。この力、貴方様のために。』
《懐かしいねぇ。今まで色々あったな。よろしく頼んだぞ。》
我に返る御河とディオ。空中は相変わらず寒く酸素が薄い。風も強いので呼吸すら困難。そんなところで神力がつきたら2人は死んでしまう。
「落下してるぞ、御河!着地はお前の水神術で・・・。御河?」
俺達は落下していく。その速度は上がっていくばかりだ。このまま行けば衝突し瀕死になるだろう。先の戦闘で御河の脳はもう限界だ!俺がどうにかしないと。御河の近くに行き、抱きかかえる。
地上まで10000m 考えろ、俺。
地上まで8000m 考えろ、俺。
地上まで4000m 考えろ、俺!!!
地上まで3000m
「・・・起きろ、御河! このままじゃ二人まとめて肉塊だぞ!」
叩きつけるような暴風の中、ディオは巨大な翼を強引に固定し、空気の壁を必死に受け止める。翼の根元が悲鳴を上げ、関節が外れそうなほどの衝撃。
下層の雲を突き抜け、地上の景色が恐ろしい速さで迫ってくる。
地上まで2000m
地上まで1500m
「御河ッ!!」
地上の木々が個別の枝葉として見え始めたその瞬間、御河の脳は再起動した。
地上まで800m
「取得済神術_____”疾夕空凪”!!!」
地上に暴風が叩きつけられると同時に御河とディオは滑らかに着地した。神術を発動した御河の綺麗な青い髪は一瞬、夕方のようなオレンジ色で照らされた。
『"水膜圧煙(すいまくあつえん"』
水で実体化した煙が上之と家満登を襲う。
「煙で内側から、水で個体化して外側からってずるだろぉ。」
煙はなんとかできているが風の威力が弱まってきている。持久戦はまずいな。追い詰めるための弱点・・・。
『禍福一転の技よ。』
禍福一転・・・。そうだ!!!
「家満登!水だ!水で煙を重くすれば攻撃が通るし内臓破壊もなくなる!」
「ッ!そこまでの神力は残ってない!」
どうすれば・・・!
っ!?結界が破れた。と思ったら、燻り人形の煙が水で実体化し、そこにディオの拳が貫通していた。
『クソがっ!っ。空獏様、今会いに・・・。』
「大丈夫か!?」
「いや、御河さんこそ。」
ボロボロの御河さんが駆け寄ってくる。
「え?あ、あーーー。」
「・・・ぶっ倒れた。・・・ともあれ、終わったな!休もうか。」
《良いねぇ。それでこそ君だよ。そして僕を・・・。》
おまけ話
【燻り人形】
あの方が空獏へ贈った初めてのプレゼントが、空獏の力に染まったもの。
生みの親である空獏に恩義を感じ、実力を伸ばし続けてきた。
燻り人形は空獏を。空獏はあの方を。
互いに誰かを守ろうとしていた彼らは、神の術に裁かれた先、地獄で再会できるのでしょうか。
___一方通行な愛が両思いになる確率は限りなく低いと言われている。




