ジャンク・ジェネリック・アカシック
歴史が刻まれる音と、刻む音は似ている。
フィルムに鋏を入れてると、そんなことを思う時がある。
日々刻まれていく色んな記録。言葉。行動。その結果。
それらを並べて選んで、切って貼る。そしてできあがった歴史にラベルを付けて収容する。世界記憶から歴史を切り出すのが私の仕事。
今やってるのは、その枝葉として切り落とした部分の廃棄作業だけど。
しゃきしゃきという小気味よい音と感触は、時計の針が進む音を想起させ、単調な作業に僅かな心地よさを提供してくれる。
最近の作業はデジタルが主流だし、その方が楽ではあるけど。私はフィルムでの作業が好きだ。
リールに巻かれた1秒24コマ。その弾力とつるりとした感触には歴史の手触りを感じるし、想いや言葉や行動が詰まった記録を刻むという行為には、えも言われぬ感覚があるというかエモいというか。ゴミ箱へワンクリックで済ますにはもったいない。
なんて語ってたら「君、おとなしい顔して破壊神の素質あるよね」と友人に言われた。
「まったく、ささやかな趣味――おっと。真面目に仕事してる私に対して失礼だよねえ」
なんて笑って、しゃきしゃきと心地良い音を感じながら。
私は今日も、刻まれた歴史を刻むのだ。
作業はフィルムでも書籍でも好きな形式で。
ラベルを付けて収容すれば、同一規格に変換される。