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6:騒々しいクラスメイト


 教室の中は皆朝の眠さなど感じないように騒がしくしている。

 俺は自分の席、一番後ろの窓から二番目の席に着くと速攻で突っ伏した。

 あの後弁当作って学校の準備して登校してと色々していたら感じなかったがそれらが終わったら一気にまた疲れてきた。


「おはよう、晴希」


 顔を上げると涼が前の席座って話しかけてきていた。

 前の席の人は机に鞄がかかっているからもう登校はしているらしい。

 毎日いないように感じるが一体どこに行っているのだろうか。


「おはよう」


「それでさぁ、昨日行っても何にも会えなかったんだよね」


 いきなりその話題から始めるのか。

 涼はすごく残念そうな顔をしている。

 だけど、元気なみたいで安心した。ああいうやつとはむやみに会うものじゃないと昨日まざまざと感じさせられたからな。


「それはよかったな」


「よくないよ。会いたかったんだから」


 会わないほうがいい。と言いたいところだけど俺があったなんて言ったらうるさそうだからそこは黙っとこう。

 ふと窓の外を見る。空は青く澄み渡っていていかにもいい天気だ。

 視線を少し落とすと見える隣の席は空いている。元々一人ここにいたのだが夏休み前に引っ越してしまっていなくなった。

 昨日のこと、夢だったら嬉しかったなぁ。


「話聞いてるのか?」


「え、ごめん。なんの話?」


 涼は少し不貞腐れた顔をする。

 どうやら何かを言っていたみたいだが全然聞いてなかった。


「だから、今日も行こうかと思うんだけど」


「行かないからな」


「なんでさ。昨日来なかったんだからいいじゃん」


 昨日のことがあるからごめん被りたい。

 あんなことは二度とごめんだ。できればもう関わりたくない。


「お前もほどほどにしろよ」


「いいだろ、好きでやってんだから」


 それで自分を危険に合わせるのは良くないと思うんだが。

 こういうやつは一度痛い目を見ないとわからないのかな。できればそういうことにはあってほしくないけど。


「おーし、お前ら席につけー」


 教室の前の扉を開けて担任教師が入ってきた。片手にはいつものように名簿を持っている。

 時計を見るともうすぐ朝のホームルームの時間を示そうとしていた。教室内の生徒はそれぞれ自分の席に着く。

 まもなくチャイムが学校中に鳴り響いた。


「それじゃ、始めるぞー。最初に一番大きな連絡だ。よし、入ってこい」


 ガラガラという音でドアが開くと同じ高校の制服を着た生徒がいた。

 この学校内では見かけない。だけど見たことがある姿だ。

 教室中の視線、特に男子のものが一気にその姿へと向けられそれを離そうとしない。

 生徒は一歩一歩確実に前に進む。


「じゃあ、自己紹介してくれるか」


「はい!今日からこの学校で過ごす蒼花麗菜です!よろしくお願いします!」


 麗菜は行儀良く頭を下げる。俺は顔を逸らした。

 なんでここに麗菜がいるんだ。

 この学校に転校するなんて聞いてない。いや、昨日会ったばかりの人にそんな進んで話すものかと言われれば違う気がするが。

 でもできれば一言言っておいて欲しかった。言われたところでどうしようもないけど。

 いや待て、麗菜はどう見ても美少女だ。この学校何故か美形が多いけどそれでも上位に食い込んでくるだろう。

 それにあんな活発な性格なら人気が出るのは避けられないだろう。

 それ故に目立つのが嫌なため問題があるような気がしたがそんな人が俺みたいな普通のやつに話しかけたりするか?

 こっちからは周りにいつも人がいてそんなタイミングはないだろうし、あっちだってわざわざそんなことをする必要はないだろう。

 だから、問題はないはずだ。麗菜が変なことを言わなければ。

 昨日の感じからして嫌な予感がするが大丈夫だと信じよう。

 最近の嫌な予感よく当たるけど。


「あ、晴希さんじゃないですか!いやー、知ってる人と同じクラスになるなんて私運がいいですねー」


 麗菜は片手を頭の後ろにしながら笑顔で言う。

 終わった。

 教室の大半の視線が俺に向いた。男子なんて敵意丸出しのやつもいる。

 確実に後で絞められる予感しかしない。

 それにまだ嫌な予感がする。

 麗菜の席は一体どこだ?

 この教室に空いてる席なんて一つしか見当たらないがそんなまさかな。


「蒼花の席はちょうど菅橋の隣だな。知り合いらしいし、菅橋色々学校について教えてやれよ」


 そんなの他の人に頼んでください。たぶん麗菜なら喜んでやってくれる人たくさんいるんで。

 麗菜がゆっくりとこっちに歩いてくる。それに伴って俺に対する視線も増えていく。

 痛い、視線が痛い。こんなの初めてだ。

 今まで委員会もまともにやったことがない俺はたぶん過去一番注目されてる。できれば今すぐ逃げ出したい。


「よろしくお願いします。晴希さん」


 麗菜は席に着くと満面の笑みで話しかけてくる。

 もはやわざとやってる?そんなわけないだろうけどさ。


「よ、よろしく」


 俺が返すと麗菜は軽く頷いて席に座った。


「それじゃあ、連絡するぞー」


 教師の言葉で俺への視線は大半がなくなった。

 だけど、今だけなんだろうな。できることなら全部麗菜の方に行ってくれ。



 今、朝のホームルームが終わり一時間目までの休み時間、俺にとっては結構疲れる時間になりました。

 ホームルームが終わってからというものすぐに大半が麗菜のもとに向かい、一部の男子が俺のところに来た。


「それで、蒼花さんとはどういう関係なんだよ⁉︎」


「返答によっては」


 何されるんですか?ちょっと待って俺クラスメイトから何されようとしてるの?


「俺とれ、蒼花さんは昨日たまたま会っただけだ。道に迷ってたから道案内したぐらいで」


 うん、嘘は言ってない。昨日たまたま会って道案内したのは本当だから。

 それ以外に少々言いにくいことはあるがたぶんこいつらが想像しているものとは違うから問題ない。


「なんで、呼び方が違うんですか?昨日はちゃんと呼んでくれたのに」


 麗菜が話に入ってきて俺は胸ぐらを掴まれた。

 そこ今重要かな。

 俺と麗菜の関係を怪しまれないためにはこれがいいと思っただけなんだけど。

 理由を察してくれ、頼むから。


「お前、お前!」


「変な誤解をしないでくれ、蒼花さんとは何もないから」


「だから、どうして呼び方が違うんですか?」


 麗菜を取り囲んでいる女子たちからは「ヒュー、ヒュー」という声が、男子からは憎しみにも似た目を向けられた。

 どうしてこうなるんだ。俺は今までと同じように過ごそうとしただけなのに。


「今日転校してくるなんて言ってたっけ?」


「知らなかったんですか?せんせ、黒澄さんから聞いてると思ってました」


 なに、楓は知ってたってこと?

 頼むから言っといてくれよ。完全にこっちの都合だけどさ。覚悟を決める時間が欲しかった。

 ちょっと待てよ。楓って一体年齢はいくつなんだ?見た感じ同い年ぐらいだけど。


「なぁ、黒澄さんっていくつなんだ?」


「なんで黒澄さんまで名前呼びで?あと、女性の年齢を聞くのはどうなんですか?同い年ですけど」


 何故か胸ぐらを掴んでいる手に力が入った。

 やっぱり同い年なのか。嫌な予感がするな。

 そんな予感がしたから名字呼びにしたんだが。


「なぁ、もしかして一緒に転校してきたりなんて」


「はい!黒澄さんと一緒にです。クラスは違って残念ですが」


 あ、俺の学校生活終わった気がする。

 やっぱり、やっぱりなのか。一緒に転校してきてるのか。こんな時期に。


「おい、菅橋!お前その名前は一体誰なんだ⁉︎答えろ!おい!」


 クラスメイトに胸ぐらを掴まれて揺らされながら問い詰められている。

 ははっ、なんだか笑えてきたよ。

 こっちに関わってこないことを切に願うよ。あと二人にはあまり下手なこと言わないでほしい。

 特にあの件に関しては。俺は到底信じてはいないから。

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