第八章(1)
初めて知った気持ちが当たり前の日々に溶け込んで、新しい新鮮な空気がいつも胸に吸い込まれる。
初めて知った自分が笑っていたから、すうと深呼吸してまた微笑んだ。
気が付いたら掌の上には大切なものが溢れそうになっている。
それら全てを守りたい。
大切な大切な宝物。
守ってあげたい宝物。
ゆらゆらそよぐ水面の波紋は清らかな音を鳴らしながら広がっていく。そうして誰かに届いた波紋はまた幾重にも誰かへ繋がる。
どこまでもどこまでも広がって、ゆらゆらぽかぽかとしたカラフェの中に心地よく鳴り響く。
交わしたさりげない言葉、勇気を出して伝えてみた大切な言葉、どれも同じくらいに大切にこころに仕舞われていく。
ひとつひとつが新鮮で、新しく変わり続ける時間を共有したら、そこにはいつも満開の花が笑っていた。綺麗だねとみんなで見つめて、次の蕾が開く時を待つ。
いつか全ての蕾が咲いたら、どんな自分が待っているのだろう。
遠くて近い未来、グラスを傾け合ったなら、芳しい馨りが広がって、懐かしみを覚えながら今を祝福し合うのだろう。
鮮明に変わっていく想いがグラスに注がれ、鮮やかに今を見守る色を湛えていた。




