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第二章(6)

 なずなと寛太はああだこうだ言いながらとても仲が良い。

 揃って寄り道をした帰り道、駅のホームで電車を待っていた。

 なずなが無理やり寛太を付き合わせて女の子向けの雑貨屋さんに行った帰り。文句をたらたら言いながらも寛太はいつもちゃんと付き合ってあげる。

「あ。キノちゃんだ、あれ」

「どこ!」

 嬉々としたなずなに、寛太は呆れではなく思わず関心してしまった。

「なずな、煩い。人の迷惑」

 苦言を吐いたものの、実際はそこまで大きな声を出したわけではない。なずなは律儀だったり礼儀正しかったりと、変わり者ながらもしっかりとした振る舞いも多い。

 迷惑だとお互いに言いながらも、気が楽だからなんだかんだでいつも一緒に居る。恋仲にならないのは、お互いに被ってきた迷惑からだ。絶対にあり得ないと二人とも心底思っている。範疇に入らないし、入りたくもない。

「ああ、キノちゃん可愛い!」

 向かいのホームを眺めながらきゃっきゃとそう言うなずなの目が和夫を捉えた。

「先輩かなあ? 級長会の」

 そうしてなずなと寛太は同じことを思い浮かべて顔を見合わせた。

「キノちゃんてこれからモテそう」

「これから必ずモテる気がする」

 そんな言葉を交わした後、寛太は可哀想な目でなずなを見た。なずなは可愛いのにとことんモテない。中身の問題によって。

「亜樹ちゃんじゃないけど、中身がなあ……」

 ぼそりした呟きに、何を言いたいのか悟ったなずなが寛太を睨み付けた。

「……あんたのせい」

「なんでもおれのせいにするなよ!」

 あちらのホームの方が先に電車が遣って来て、発車すると香夜子たちの姿は消えた。

「なんだか良い雰囲気だったよな。なずな、キノちゃん取られて、ざまあ」

 にやにやとそう言った寛太になずなが言った。

「キノちゃんが幸せなのが良いの!」

 やたらと嬉しそうな顔で言ったなずなが前向きに肩に掛けていたリュックを抱きしめている。

 横目に相変わらずだなあと微笑ましく思いながら、亜樹也は知っているのかなと寛太は首を傾げた。

 それからもう一度寛太は首を傾げた。

 なんだか胸の内が温かくなるような、けれどもきゅうっと締め付けられるような、矛盾したような感覚を覚えて戸惑ってしまった。

「……寛太っておバカ。気付いてないとか」

 そう呟いたなずなの声は電車の音に掻き消されて、寛太には聴こえていなかった。

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