その32
その32
たぶん逃げられた魔物もそこそこいたのではないかと思う。目に付く魔物は手あたり次第倒して、ダークベアや、ビッグボアなど、大型で滅茶苦茶タフな魔物は、アズミと連携して倒した。唐辛子を浴びて、ほぼ戦闘不能な状態の魔物なので、時間をかけてじわじわダメージを積み重ねていけば一人でも倒せるかもしれないが、あせって無理すると、魔物の爪がほんのちょっとかすめただけで、こちらには致命傷になってしまう。うかつに急所狙いで飛び込むわけにはいかないが、二人がかりなら、一人が手や足を切りつけて気を引いて、注意がそれたところを狙えば急所も狙える。
おかげでうじゃうじゃいた物も、それほど時間を掛けずに片付ける事が出来て、先に逃げたはずのセージとリタを追いかけた。
本当は魔物から魔石を回収したいのだが、今のあの二人ではゴブリンどころかホーンラビットが出てもやられかねない。せっかく助けたのに、最後の詰めが甘くて、死んでしまいましたではさすがに後味が悪くなってしまう。
魔力強化で走って行く。こういう時は魔力量が多いのが実感できて、厨二病的チート万歳と言う気分になる。何しろ、魔物を倒すときにも魔力は結構使ったので、普通の人だったら、とうに魔力切れを起こしているはずだ。
さほど走る間もなく、二人組は見つかった。やはりバテバテでまともに逃げる事はできないようだ。
「おい、大丈夫か? ケガはないんだな? 」
カズが声を掛けると、二人は崩れるように座り込んでしまう。
「ポーションとか持ってないの? 」
アズミが二人に声を掛ける。
アズミの言葉で、今までポーションの事はすっかり頭から抜け落ちていた事に初めて気づいたカズである。何しろ、カズもアズミもポーションは持ってはいるが、実際に使った事は無かった。日常使うには高価すぎるので、非常用のお守りになっている。
「すみません。持ってないです。」
「こんな調子ではどうしょうもない、これを使ってくれ。」
お守りのつもりで持っていたポーションを二人に1本づつ渡す。もったいない気はするが、背負って運んでいく気にはどうしてもなれなかった。
「ごめんなさい。どうもすいません。」
いちおうセージが謝りを入れてくるが、”謝るぐらいなら最初からもう少しまじめにやれよ”と言いたくなる。”男あさりに冒険者やるのはまだいい、しかし、魔物から逃げるだけの体力と、ポーションぐらいは持っておけ。”言いたくなるが、俺が言っても無駄だろうな。
いや、男漁りなんて言い方してはいけないな。伴侶を見つけるのは重要な事だし、ただ、何と言うか、男性の選び方にしても、冒険者をやる態度にしても、ひと言でいえば、いい加減で、舐めていると言う感じがして、もう少し、まじめにやれ! とか、地に足が着いた生き方をしろ! とか言いたくなってしまう。
何しろ、あの"ダカンの明星”に引っかかっているぐらいだから、問題があるのは自明である。
”ダカンに引っかかるぐらいなら、もう少し俺にも愛想よくしろ、なんて思っていないよ。本当だよ。”
まあ、本人たちにして見れば余計なことかもしれないが。せめて今回の事で、身に染みてくれると良いのだが。
ポーションを飲んでセージはほぼ復活したが、リタの方はまだ具合が悪そうだ。リタは体力の消耗だけではなく、魔法の使い過ぎで魔力切れを起こしているのだそうで、魔力回復用のポーションを飲むか一晩立たないと完全復活にはならないらしい。
”ほう、ほう、魔力ポーションなんて言うやつもあるんだ!”
思った以上にこの世界は・・・ラノベ的ファンタジー世界だなあと思ってしまう。こんな事、あっても良いのか? 有るんだから仕方がないが。
とにかく、リタの具合が悪いとは言え、いつまでもここで休んでいる訳にもいかず。少々無理してでも歩いてもらう事にする。
何とか立ち上がって歩き始めた時、森の中がざわつき始めたので、何事が起きたかと緊張したが、冒険者ギルドの救助隊が現れてほっと吐息をついた。
さすがにもうこれ以上魔物と遣り合うのはご遠慮願いたい。
「おーい、大丈夫か。」
「はーい、へばってはいますが、怪我は有りません。」
遠くの方から声が聞こえたので、アズミが返事を返す。
救援隊が現れてほっとしたのか、リタはまた座り込んでしまう。
「怪我は無ないんだな? すごい数の魔物が出たと報告が有ったが、どういう状況なんだ。」
ダマス自ら冒険者を引き連れて、救助に来たらしい。2~30人ぐらいの冒険者があとからぞろぞろ姿を見せた。
これなら、リタとセージはギルドに引き渡せる。これでやっとカナの町以来の腐れ縁から解放されそうで、ほっとした。
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