その28
その28
朝、朝食を済ませると臨時ギルドに向かう。
”う~ん、混んでる。”
”ついでに、やはりアズミがめちゃ目立っている。やっぱりゴスロリはやりすぎで有る。”
あちこちから声が掛かる前に、あわてて依頼の紙を引っぺがして、ドドドド! 足音も高く受付のカウンターに向かう。それにもかかわらずダマスが、
「アズミとカズは正式にはまだD級だな。二人だけでは心もとないから臨時のパーティーとか組んだらどうだ?」
とか言われて、それまで緩めに取り囲んでいた人の輪が、ギギギギっと縮まって来る。
「いや、練習したい戦い方が有るので、二人だけでお願いします!!!。」
もう、泡を食って言い募るが、嘘じゃない! 嘘じゃない! ついでに言い訳でもない! 言い訳にしか聞こえないけど。
と、言う事で、焦ってアズミの手を引っ張って、ギルドを飛び出してきた。
これは後日談であるが、アズミのゴスロリの反響がすごすぎるので、カズはアズミに平身低頭して、以前の地味目の服装に戻ってもらった。すると、臨時ギルドでそれを見た冒険者から大バッシングを受ける事に成った。
いわく、
「女の子が着たい物も着せないなんてサイテー。」
だそうで、そう言われれば確かそうでは有るが、でも、それも程度問題で、カズとしては
”あんなに騒がれたんじゃ仕方ないだろ。”
と、言いたい所では有るが、
”それも含めて男の甲斐性ってもんだろ。”
と言われてしまうと、黙るしかない。結局カズはまたまたアズミに平身低頭して、元のゴスロリに戻ってもらう事に成る。
と、まあ、これはあくまでも後日談であって、現在、アズミとカズは森に向かっている。
このまま放っておけばスタンピードに成りそうなぐらい、スタンピード寸前と言う事もあって、森の魔物の影が濃い。
臨時ギルドのダマスからは、D級なので無理をしないように、上級の魔物や数が多い場合には逃げるように言われているが、いや、グリフォンとか、サーペイントとか出てきらら即逃げるけど、さすがにそんなのが出とかは聞いてないし、オークの数が多いだけなら、今日はそのための練習目的だし、その辺の判断は自己責任だと思う。
森の中は魔素が濃くなっているせいか、相変わらずおかしな生き物がうごめいている。巨大なスライムだの、でかいナメクジだの、お化けキノコ? 2メートルもあるミミズだとか、これってみんな魔物の分類なのだろうか?
おかしな生き物はいやいやでも討伐するしかない。オークやオーガもいつもだとそれほど群れる事は無く、1匹か2匹づつ出てくるのだが、今日は4~5匹、多い時は10匹ぐらいまとめて出てくる。
いきなり10匹を相手にするのはさすがにやり過ぎなので、最初は3匹でやる。
”えっ、何をやるって? 練習したい戦い方が有るって言ったでしょ、嘘じゃない、ちゃんと嘘じゃなくて、昨日作ったドラゴンブレスの唐辛子玉、あいつで多数の魔物を同時に相手にできるか検証したかったのだ。”
「ブロー!」
5メートルほど近づいたところで生活魔法の風を吹かせながら、唐辛子玉を投げつける。
アズミには少し横の方から唐辛子粉の広がり方、投げる方向とかをチェックしてもらう。
チョット距離を取り過ぎたせいか、反応が出るのが遅い。ワンテンポ、いやツーテンポぐらい遅れて、”あれ!失敗か!?”と焦った頃になって、目を瞬かせ、喉をかきむしって、いきなりオークがのたうち回り始める。
風の流れに乗って唐辛子が広がるのに意外と時間がかかるらしい。もっと近づいて、ひもの長さも短くするか? でも、多数の魔物を相手にするには近づきすぎるのは拙かろう。こういうものだと思って使うしかない。
「ブロー!」
「ブロー!」
しっかり唐辛子粉を吹き払ってから、オークを処理する。
効果のほどは申し分ない。問題は効果が出るまでの時間と、そのあとしっかり粉を吹き払うのに時間がかかること、そう言う物だと思って扱うしかない。
最初は3匹、二回目は5匹、途中で出会った1~2匹のオークやオーガは唐辛子を使わずに倒して、三度目の唐辛子は9匹の群れだった。
しかし、この戦い方は何と言うか、卑劣だ。卑怯で卑劣だ。
魔物は、目、鼻、喉をやられて、得物をやみくもに振り回すものはいるものの、ほとんど戦闘不能な状態である。中には目が見えず、頭をあちこちぶつけながら、よろよろ逃げ出すものもいる。
それを追いかけて行って、後ろから切りつけるのである。これはやっぱり卑怯だろう。とくに、争いに巻き込まれて、のたうち回るホーンラビットなどを倒す図などは、絶対にこちらの方が悪辣非道の輩にしか見えない。
ついアズミにブチブチこぼすと、
「あら、カズって、異世界にきて魔物相手に無双するのが夢じゃなかったの?」
と、返されてしまった。
”えっ、そうか、今、俺は無双してるのか? "
そう言えば、そうかも知れない。ちょっとやり方が残念な気がするが、そう言われるとそんな気がしてくる。
「技が何と言うか、ちょっと残念な気がするけど、魔法で弱らせてから、討伐とかは普通にあるから、魔法で良くて、トウガラシで悪いとかはないと思うよ。
見た目がちょっと残念な所が有るけど…。」
まあ、やはり言われて見るとそんな気がしなくもない。でも、ちょっと卑怯な気がするけれど、相手が魔物だから・・・良いよね。無双だよ、無双。
50匹ぐらい倒した気にになって、やり過ぎもまずいと思って引き揚げてきたが、討伐した魔物の魔石は43個で、思ったよりも少なかった。
しかし、まだそれでも多すぎたようで、ギルドに行くと、臨時ギルドのダマスから、
「まだD級の、いわば初心者なんだから、無茶な討伐はしないように。」
と、お小言を戴いてしまった。身の程をわきまえた行動をしないと、周りに迷惑を及ぼしかねない、と言う事らしい。
これから先、このエリアでずっと過ごすならば、ドラゴンブレスの唐辛子玉の事を話して、ギルドの了解を取るべきなのだろうが、あと一週間もいないのに手の内を晒してしまうのは考え物なので、黙って話を聞いておくことにした。まあ、基本的にギルドの姿勢としては正しいので仕方がない。
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