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その26

その26

ギルマスのアマルダから依頼を受けた三日後、リタ、セージの二人の女の子と、アズミ、カズ達のそりの合わない気まずい旅が始まった。

依頼の内容は、ムルガの村の近くで気付かない内に魔物が大量に発生していて、スタンピードを避けるために、慌てて冒険者に動員をかけるというもの。依頼のギルドはガルドの町のギルドであるが、緊急のためあちこちのギルドに声かけているので、現地に出張所のようなものを作って、そこで全て対応している。おかげで、冒険者は直接現地に行けば調整はしてもらえるとの事である。

カズとアズミだけならばカナを早朝出て、ムルガには夕方に着く。しかし、女の子二人と一緒のため、次の日の昼頃になりそうである。

後衛職の、しかも女の子の場合、接近戦になった場合、身の安全は前衛に守ってもらうものだと考える子が多いらしい。だが、カズには女の子の面倒を見るというマメさも、面倒見の良さも持ち合わせていない。元引き籠りのカズとしては女の子のご機嫌取りは勘弁してほしい所である。最終的に自分の身を守るのは自分自身であるべきだと思う。

せめて逃げるぐらいの体力は持っていて欲しい。この二人は、特に魔法使いのリタは体力が・・・こんなにモタモタ歩いていたんでは、逃げ足が心もとない。

アドバイスの一つぐらいしておくべきなのだろうが、うかつにカズが口にすると、捻くれてしまって、かえって逆効果になりそうで、うかつに口に出せない。

「アズミ~、チャンスが有ったらそれとなく言って置いてくれよォ~。」

カズが情けなそうな愚痴を漏らすが、冒険者とは基本自己責任で、余計な事を言う必要はないのだが、かと言って、見え見えの危険を何も言わずに通り過ぎるのも、何かあったときに心苦しい。

その辺がカズらしい、弱気で、複雑で、グチャグチャな男心の胸の内と言うやつである。

昼飯は別々にとる事に成った。もちろん女の子二人チームの希望である。が、リタとセージが見逃していたことが有った。カズたちが収納バッグを持っていると言う事である。収納を持たず、体力も心もとない彼女たちは、途中で獲物を狩る余裕もなく、調味料さえ碌に持てないので、食事は貧相にならざるを得ない。冒険者定番、カチカチクロパン&超塩辛い干し肉の湯戻しスープである。

収納が有れば、たとえば、町の屋台で買った串焼きなどをそのまま放り込む事も出来るし、食堂で弁当を作ってもらって、それを持参することもできる。

今回はそこまでの事はしていなかったが、いや、屋台の串焼きは外せないので、買って有ったが、調味料もしっかり持参しているし、パンは白いパンで、お肉は干し肉と言うより、立派なベーコンである。それに歩きがのんびりなので、適当に山菜も摘んであるし、油もあるし、鍋もある。

昼飯とはいえ、それなりに料理を作っていたら、女の子チームの視線がバチバチ刺さってくる。山菜のてんぷらと肉の串揚げを差し入れたら、多少表情は柔らかくなって、俺はともかくアズミには普通に話すようになった。

ま、と言う事で、夕飯は一緒に取る事に成った。

ただし、夕方たどり着いた村で借りた納屋は女性オンリーで、俺は一人寂しくテント暮らしになる。感覚的に合わないとは言え、どうしてこんなに嫌われなければならないのか、いや、カズとしては変に気を使わなくて済む分、一人の方が気楽ではあるのだが、仕事として考えてみると、どう考えてもこの仕事、割に合わない。

村の近くの川べりに生えている茅を刈って、束を作り、それをさらに繋げてマット、敷布団のようなものを作る。あとは食事を作れば野営の準備は完了する。

小さな村なので、大勢で多量の食料を調達しようとすれば問題が起こるが、我々は四人と少人数。鳥1羽と、芋、葉物野菜少々、後は果物数個、このぐらいの買い物ならば、現金収入になってかえって村人には喜ばれる。

肉は保存食のベーコンと村で買った鶏肉、スープは鶏がらで取って、ベーコンの欠片と芋、葉物野菜、塩、胡椒もどきで味付け、葉物の残りはサラダにして、後は各自持参のパンの食事。

やはり、収納はチートである。スパイス、調味料を持ち込めるだけで、例えば野営をするにしても、魔物の肉の空揚げや、山菜のてんぷら、灰汁の少ない山菜が手に入れば、サラダだって出来てしまう。

と、言う訳で、カズだけは蚊帳の外になりつつも、女の子たちにとっては十分楽しげな、焚火を囲んでのお食事会が終わって、二次会の女子会を楽しむべく邪魔者の居ない納屋に引っ込んでいった。

ほぼ暗くなったとはいえ、まだ寝るには早い。食事の調理に使った焚火の明かりを頼りに、カズは日課となっている刀の素振りをする。始めは型から入って、最後はオーガと1対3のイメージトレーニングである。ウルフ系の魔物ならば連携を取って襲ってくる。それは脅威ではあるのだが、逆に襲い掛かってくるパターンが出来上がる。なるべく周りを取り囲むように布陣し、一斉同時に飛び掛かるか、あるいは正面の個体が飛び掛かるふりで気を引いて、周りの左右が飛び掛かってくる。

カズとしては布陣させないように、常に1対1で当たれるように動く。

しかし、オークやオーガは連携を使わないので、戦闘の形は成り行きになってしまう。集団戦術で襲ってこないので、その分楽と言えば楽なのだが、事前のイメージトレーニングはやり難い。考え付くあらゆるパターンを練習するしかない。

アズミのように瞬間でシュミレーションして、最適解を導く事が出来れば良いが、人間には無理である。

「そろそろ考えなければならないか…。」

カズが呟いたのは”明鏡止水”」とか”無念無想”とか、古の剣豪伝に伝わる武術の精神状態の事である。一度は座禅の真似事などして、試しては見たものの”無念無想”どころか、雑念の塊りになってしまって挫折している。しかし、そろそろ、もう1度考えてみる頃なのかもしれない。

場所は変わって、こちらは納屋の中の女子会である。

「ねえねえ、アズミってなんでカズみたいな冴えないのとくっ付いてるの?」

「どこまで進んでる関係? やちゃってるう? みたいな。」

女子会とくれば恋バナである。アズミとカズは恋人ではないが、微妙な距離感が返って他人の興味をひいたりする。

「え~、別に面白い事なんかないわよ。幼馴染の腐れ縁ってやつかな。あんた達だって”ダカンの明星”と組むつもりだったんでしょ。」

「だってね~、ローダーとかカッコいいし、『お嬢さん可愛いね。今度の依頼はご一緒しませんか。』とか言われて、リタ、キュンキュンしちゃう。」

胸の前で両手を握りしめた、リタのあからさまなぶりっ子ポーズに、アズミもちょっと引き気味である。

「かっこいいもキュンキュンもいいけど、カズにボコボコにされてるんじゃ話にならないじゃない。」

「それね、ちょっと信じられないんだけど。ギルマスには"ダカン”はやめとけ言われるし、本人に確認しようと思ったら消えちゃてるし・・・。」

「"ダカン”ってBよね、D級に負けるなんて信じられないんだけど。」

セージも口をはさむ。

「私もね、おかしいと思ってギルマスに聞いたんだけど、”体よく追っ払われたんじゃないか。”って。」

「追っ払われるって?」

「B級を追っ払うの?」

「それね、出禁にするほどはっきり悪さするわけじゃないけど、ギルドの雰囲気をぶち壊すような人にやるらしいわよ。良さげな補助なんかつけて、無理やり実績をつけさせて、”お前、見込み有るからよそを回って武者修行して来い。”みたいな。ランクを上げる代わりに2~3年外に放り出されるらしい。」

「え~、ローダーってそんな変な人じゃないわ。カッコいいし、優しいし。」

リタには信じられないようだが、ローダーがビビアンにも、アズミにも、女の子とみれば片っ端から声を掛けているのは事実であり、カズにボコられたのもまた事実である。要するに人を見る目がない、と、言うか、それって冒険者に求めるものと違くない?

「かっこいいとか、優しいとか、街中ならともかく・・・・。」

アズミの声もちょっと呆れ気味である。

「街中ではいいとこのお嬢様とかでないと、いい男は捕まらないのよ。冒険者だったら、女の子少ないからモテるし、将来A級なんて当たりくじ引けば一攫千金も有るし・・・。」

これは単に考え方の違いと言うべきなのだろうか? 冒険者が、こんなチャラチャラしちゃってて良いのか? ただ言える事は、冒険者はあくまで自己責任と言う事である。

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