その11
その11
昨日は夕方にアジトから戻って、手直ししていた皮鎧を受け取った。
朝からギルドに集合、”蒼天の銀翼”のメンバーとめぼしい依頼を眺めているが、華々しい依頼はない。この辺りではあまり大物の魔獣は出ないので、まとまった稼ぎを期待するときには2、3日の遠征は当たり前で、今回の遠征も三日ほど前に受けた二泊三日のものだそうだ。
内容は小さな村の近くの森で魔物が増えてきたので駆除してほしいというもの。ゴブリンが巣を造っているらしいのと、オークやオーガも少数見えるそうだ。
「おう、みんな集まってるな。」
”蒼天の銀翼”のダンが入ってきた。
「取りあえず、紹介だ。今回見習いで同行するカズと、そっちのちっこい女の子がアズミだ。こいつを舐めてかかると、ちょっと面倒な事になる。気を付けろ。」
まあ、評価されるのはアズミだよな、当たり前だけど。
「よろしくお願いします。」
俺とアズミは声をそろえて、取りあえず挨拶する。
「それから、”蒼天の銀翼”のメンバーだが、盾を持ってるのがラムダ、こっちの弓役がネルトス、もう一人奥にいる弓がビート、こいつは剣と弓の両方使う。剣士がカイル。俺の事はもう知ってるはずなのでパス。
今日は移動だけなので、依頼については道々話す。と、言う事で出発する。」
道々話すとは言われたが、道中はある程度列がばらけているし、歩きながらだと話しにくいので、依頼の説明は昼めしの時間になった。
ゴブリンの巣と思しきものは大体位置が分かっているので、最初にそこを叩く。作戦は現場の状況を見てからきめる。基本的に”蒼天の銀翼”は魔法使いが居ないので、遠距離広範囲のせん滅が出来ない。ゴブリンをなるべく小さなグループに分散させて、個別に叩くのが望ましいとの事だった。
オークとオーガについてはハッキリしたことが分かっていないので、指定された森の範囲を巡回して、出会ったものだけを倒せばいいそうだ。
何とか夕暮れには村につきそうだったが、行く先の村が小さく宿もない、おまけに飯屋もない、無理してたどり着く必要もない。手違いで遅くなると、暗くなっての旅は危険なのとで、むしろ野宿の方が安全、と言う事で早めに野宿の準備をする。
焚火を囲んで、黒パンと干し肉を戻したスープで食事をとる。ちょっと気になった事が有った。
”蒼天の銀翼”のメンバーは手持ちの荷物が少なくて、”さすがベテランは旅慣れていると思った。コツを聞いてみる。
そしたら何と、メンバーのビートが収納バッグを持っていて、他のメンバーは一人になっても生き延びるだけの非常用の荷物しかもっていないことが分かった。それなら俺たち荷物持ちなんていらないんじゃね。
それよりも”有るのか! 収納魔術とかバッグとか有るのか!” ポーションに続く厨二病的逸品、どんなに苦労しても絶対、何とか見つけなければならないと、親の仇みたいに思っていた収納バッグが目の前にある。もう、死に物狂いで、必死になって食いついていくことになる。
「我々のチームの別名って知っているか?」
ビートが言った。
「”蒼天の銀翼”の他に二つ名が有るんですか?」
「二つ名ってわけじゃあないが、あだ名だ。”ご隠居クラブ”っつうんだ。」
「ご隠居ってほど皆さんご老人じゃないと思いますが。」
「いや、冒険者なんて言うのは大体、まともな奴は30から35ぐらいまでに小金をためて、止める奴が大半だ。”蒼天の銀翼”は昔からあるチームではなくて、みんな解散したチームの残りかすの寄せ集めなんだ。
何でそんなチームが出来たのかと言うと、その大きな理由の一つが俺が収納バックを持っていたからだ。こいつが有れば数をこなせばいいので、無理して大物の魔獣を倒す必要がなくなる。遠出も楽だ。年をとっても、カナの様に強い魔物がいない町でもやっていける。
もっとも、一番の理由は年をとっても一定数、冒険者の生活に未練を持つも物がいると言う事なんだが。」
「あの、この収納バックって、どうやって手に入れるんですか?」
「ああ、これか? 遺跡で見つけた。昔、このチームに入る前、砂漠の中の古代遺跡に巣くうキングスパイダーをやっつけに行ったときに見つけた。」
「収納バッグって割と出回っているんですか?」
「いや、古代遺物の中では多い方だが、古代遺物自体がそれほど発見されないので、割と珍しい。だいたい、収納バッグは高価なので、こいつを見つけると金に換えて、冒険者をやめる奴もいて、冒険者で持っている奴は少ないぞ。」
「なんか見たことあるような気がするんですけど、ちょっと見せてもらっていいですか?」
アズミが割って入る。
「ねえ、カズ、カズのお父さんの遺品にこんなバッグなかった? あっ、すいません。カズの亡くなったお父さんて、アマチュアの古代遺跡探検家みたいなことをしてたんです。
で、使い物にならない遺物とかゴロゴロしてて、その中にぼろいバッグが有ったような…。」
「なんか何分ガラクタだらけだから…有るかどうかわからないけど、今度小屋に戻ったら探してみよう。」
”むふふ、これで収納バッグを使える筋道が出来た。アズミ! グッドジョブ!”
「ところで、このバッグの使い方ってどうするんですか?」
少々というより、かなりしつこく聞く事になって、不興を買いそうな気がもするが、ここはとにかく、多少無理してでも聞いておきたい。
「入れる時はそのまま入れればいい。出す時は出したい品物を思い浮かべて手を突っ込む。
バカには使えんぞ! 入れたものを忘れてしまうと永久に出せない!」
「おい、変な冗談はやめろ。本気にしてるじゃないか。」
剣士のカイルが口を出してきた。
「あは、冗談冗談、あまり真剣になって聞いてくるんでちょっとからかいたくなった。
でも、うかつにバカが使うのはやばいのは本当だ。
忘れてしまったものを出すには全部出しすればいいんだが、狭い部屋でそれをやって、出てきた荷物に押しつぶされて死にそうになった奴がいる。」
「おう、そのバカの名前はたしか”蒼天の銀翼”のビートとか言わなかったか?」
カイルにまぜっかえされて、
「あいつは顔は抜群なんだが、オツムがちょっとだけ緩いんだよなあ~。」
本人が言っているのだから世話がないのだが、どうもこれがこのチームのジョークのセンスと言う奴らしい。
心からそのジョークに付き合えればいいのだが、収納バッグの情報が親の仇なみなの重要事項で、それだけの余裕がない。ひきつった愛想笑いを浮かべつつ、取りあえず何とか乗り切ってホッと一息ついた。
*




