その10
その10
”蒼天の銀翼”のダンにしばし面倒を見てもらう事になって、取りあえず2度ほど魔物狩りに同行する事になった。当然無給の見習い兼荷物持ちと言う立ち位置である。
通常のパーティーが魔物をどう狩るのかまるで分らないので、その辺を教えてもらう事になったが、最初は2、3日の遠征で、で何を持っていくか、その辺すら知らないので、教えてもらう事になる。
まず、防具は必要との事だが、この町は小さいのでまともな武具が売っていない。中古の皮鎧を買って手直ししてもらう。出来上がるまでに三日ほどかかるので出発は四日後になった。
それから、テントに水筒、布団兼用の防寒シート、携帯食料、携帯用の食器、あれもこれもと思っていたらどんどん荷物が増えてしまう。それにこれらを収納する背嚢も必要である。たかだか2、3日にどれだけ荷物が必要なんだ。これで、魔物を狩ると、それも荷物になる。持てるのか?オレ、頭が痛い。早いところ何とか収納魔法を大っぴらに使えるようにしたい。
それから中級のポーションを1個は持つべき、と言われた。”えっ、ポーション? ”厨二病全盛だった頃聞きなれた名前がふいに出てきて、思わず心が熱くなる。
”有るのか、この世界にポーション有るのか!” 作り方は知らないけど。
やっと雑用から解放されて、むかしのアジトに転移する。これで晴れて魔力による身体強化の練習ができる。
「まず、物理的に刀を強化します。」
アズミに言われて、思わず頭上に”?”を浮かべてしまう。
すべての物質は通常分子同士の結びつきや結晶構造に多くの傷を抱えている。物体が破壊される場合、その傷が起点になって崩壊が始まる。その傷をなくしてしまえば、ものによって100倍、大抵は10倍以上の強化が見込まれる。
我々の刀は傷も含めて、オリジナルをデッドコピーして有るので、それを手直しして、内部構造から無傷にするそうだ。
さらに、これを魔力で強化すれば、斧のような大剣を相手にしても十分切り結ぶ事が出来るそうだ‥‥体力さえあれば。
と、言う事で一番つらくて面白くもない体力強化から始まる。ランニングとか、うさぎ跳びとか、ローラーをゴロゴロして、腹筋も鍛えて、敏捷性を上げるのにジグザグ飛び・・・ついでに、今まではゆっくり振る刀の素振りの時だけに意識していた魔力の流れを通常の体力強化の時も行うようにした。
何でこう一番重要な事って面白くないのだろう。
唯一の楽しみは風呂の後にアズミがしてくれるマッサージ、気持ちよくて途中で寝てしまうので、無理やり起こされてベッドに放り込まれるのが地獄。
次の日には刀の調整が終わったので、取りあえず振ってみる。
振ってみると何故かやたらに調子がいい。”これって、内部的な傷がなくなったせいか? 傷が無くなると魔力の流れもスムーズになるのか?” 魔力を流す練習をしたからと言って、昨日一日で俺自身の調子がこれほど上がるとは思えない。
と、言う事は、ひょっとしてこれは人間の身体にも言える事じゃないか? 当たり前と言えば当たり前な考えだが、人間の身体にも傷と言うか、魔力をスムーズに流すのを抵抗する要素が有って、それをならしていけば今までの様にただひたすら力業で少しでも多く魔力を流そうとしていたよりもうまく流れそうな気がする。
やる事はそれほど変わらないが、とにかく大事なのはイメージである。太極拳もどきでゆっくり刀を振る時、魔力を流れの引っ掛かりのある所を平らに平らに、滑らかになるようにイメージして流していく。
ゆっくりした素振りで魔力を流すのは以前からやっていたが、”蒼天の銀翼”のダンからはその他に、早い動きで真っ向から切り下げながら気合と同時に魔力も込める練習法を教わる。
魔力を込めた場所を強化をイメージしながら、刀だけ、手だけ、足だけ、上半身、下半身、全身と瞬間的に魔力を爆発的に込める。
さらに次の日には刀、刀と手、刀と上半身、刀と全身と強化する場所を変えながら、鉄の棒で岩をぶっ叩いて袈裟切りで魔力を込める練習する。
そこまで進んだところで”蒼天の銀翼”との魔物狩りの日を迎えた。まだ、真剣を使うところまで行ってないので、成果のほどは分からないが、たった二、三日の強化なので、期待するのは欲張りすぎだろう。
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