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その9

その9

「なにあれ、逃げ回ってばかりでまるで良いとこ無かったじゃない。」

アズミにディスられる。

「いや、この年ならこんなもんだろ。パッと見以上の腕はしてるぞ。」

「そうですか? 全然勝ち筋が見えないんですけど。」

「まだ身体が出来ていないし、経験が少ない。だが10年頑張れば俺ぐらいにはなれる。」

「はあ、あと10年もかかりますか‥‥。」

「おい、その物言いは俺に失礼だろ。俺の年を考えろ。お前は10年たっても23だろうが。」

ああそうか、そう考えると俺もそれほどクズではないのかも知れない。

と、思った瞬間、

「カズを鍛えたのはアズミの親爺か? しかし、カズみたいな弱虫をよくここまで鍛えたな。」

とダンに言われて一瞬で元のクズに叩き落された。

「ダンさん、ちょっとお聞きしたいんですけど。」

「おう、おう、何だ?」

「ダンさんのガタイはオークよりも小さいぐらいですよね。なのにオーガ並みに大剣を振り回せるのは何故ですか?」

俺の刀ではダンさんの剣は受けられない、今の状態で切り結んだら、瞬間で態勢を崩されて吹き飛んで終わってしまいまう。何よりあの斧みたいな大剣と、まともに十文字に切り結んだら刀が壊れてしまう。

かと言って、刀で受けずにただひたすら逃げ回るのも限界がある。もし、一瞬でも互角に切り結べるなら、一気に技の幅が広がる。

「まず、身体を造ることだな。カズが使う技はなかなか面白いが、身体の出来が今一つで、技が十分生きていない。

同じ技でもアズミが使った時は一味違って見えたぞ。

あと経験不足、これはどう仕様もない。経験を積むしかない。

それから魔力による身体強化だな。これはあくまでも付録だ。俺は魔法の属性は持っていないが、無属性の魔力でも身体強化ぐらいはできるから、

ま、それで底上げをしている。」

・・・・あっ、そう言えば身体に魔力をめぐらせると、身体でも刀でも切れが良くなった気がしていたが、でも、素振りとかしていた時にはちゃんと魔力を巡らせていたはずだぞ‥‥

「ダンさん、魔力による身体の強化ってどうするんですか?」

「おい、魔力でごまかすより、身体づくりが先だぞ。」

「はあ、それは解りますが、身体づくりは一生もんでしょ、身体が出来てから今度は魔力、って訳にはいかないですよ。」

「その通りっちゃあ、その通りなんだが、理屈っぽいな、お前、何と言うかめんどくさい奴だよな。」

「すいません、自分でもどうもそうらしいとは思っているんですが、頭で理解してからでなくては身体が付いて来てはくれないタイプなもんで‥‥どうもすいません。」

「まあ、言う事はその通りなんだが、つい魔力に逃げてしまって、身体づくりがおろそかになると、そこまでになってしまうからな。気をつけろよ。」

「ハイ、気を付けます。有難うございます。」

と、言う事でカズはダンに魔力による身体強化の方法を見せてもらう事になった。

その代わりと言っては何だが、ダンには”抜き”を教える事になる。

「カズ、随分と剣同士で切り結ぶ事にこだわっているが、切り結んだ後どうするつもりなんだ?」

と、聞かれたからである。あまり手の内を明かしたくない気持ちもあるが、こちらが魔力による身体の強化法を教えてもらう以上ある程度は仕方がない。

「抜き? 抜きってなんだ?」

この世界の剣術には抜きがないのか、それとも田舎の小さな町なので正式な剣術が伝わっていないのか、ダンぐらいのベテランでも”抜き”は知らないらしい。

「わかりやすい例で言うと、例えばですね、足を前に踏み出す場合、普通は後ろの足の筋肉を使って、身体を前に押し出しますね。

これを抜きを使った場合、前足の膝の力を”カクン”と抜く、すると身体が前に倒れそうになるので、反射的に後ろ足が前に出て、結果的に体が前に進むことになります。これが抜きによる飛込です。」

「まあ、そうなるのかな? でも、なぜそんな真似をする必要が有るのかわからないが・・・。」

「初動に筋肉を使わないので、動き出しが分かりにくいのと、極めるとスピードが速い‥‥らしいです。

俺は極めてないので、そんなに早くないですけど。」

「ふむ、そんなもんかな。ちょっと理解しがたいな。」

まあ、話だけ聞いても納得は出来ないだろうな。俺だって前世でユーチューブや、テレビの番組で見て居なければ半信半疑って所だと思う。

「俺では無理ですが、アズミなら出来るのでちょっとやってもらいましょう。」

と、言う事で、ダンとアズミで切り結びから抜きによる篭手うちの型をすることになった。

当然ながら、アズミにダンの剣は受けきれないので、一応受けたことにして切り結んだ形から始める。アズミもダンも右から左への袈裟切りでお互い十文字に切り結んだことにして、ここからアズミがダンの右篭手を狙う。

簡単に言えば、切り結んだあとからの影抜きである。影抜きは切り結ぶと見せながら、相手の剣を潜り抜ける技である。自分の刀を相手の剣に触れさせないため、相手の剣が自身の身体に触れないよう、間合いが遠い。

したがって相手のリーチが長い場合、抜いてもこちらの間合いに届かないことが有る。しかし、切り結んでいいならば、思い切り相手の懐に飛び込んで間合いを詰めてから抜く事が出来る。しかし・・・・

切り結んだ状態から相手の剣をかわしてから打ち込む、ちょっと考えてみると動きが複雑すぎて、技として成立しそうもないように思われる・・・・

が、ユーチューブで見た動画はその期待を見事に期待を裏切って衝撃的だった。かわす動作はまったく目視できず、”バン!”と足を踏み込む音と同時に篭手が決まっていた。

それも1度だけではなく5回ほどやって見せて、狙いが右篭手だけに制限されていたにもかかわらず、受け手は避けるどころか反応すらも出来ずにいる。

・・・・・それをアズミがやるわけである。見事にやって見せる訳である。俺なんかため息しか出ない。

それはダンも同じだと見えて、しばし唖然としていた。

「おい、嘘だろー、どうなってんだ・・・・。」

「股関節の抜きを使うと、こういう事が出来るそうです。」

「・・・大型の魔物をやる時は大剣の優位は揺るがないと思うが‥‥対人戦となると・・・ちょっと考えなければならんな‥‥。」

ベテランのダンをうならせて、いくぶん留飲を下げる。やったのがアズミでなくて俺だったら、思い切りどや顔が出来て自惚れられるのに残念である。

格上を呆然とさせ、自慢たらたらのどや顔を決める。これはもう男のロマンである。絶対この技を極めようと深く心に誓うカズである。

                *


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