その8
その8
「アズミ、マクロスはなんて言ってた?」
戻ってきたアズミに聞くと、
「ちょっと言い過ぎた、わりい。だって。」
「本人それで謝ったつもりなんだろうな。」
「これに懲りてちょっとは大人しくなると良いのだがな。
ところで、カズ、俺と一本やるか?」
「有難うございます。お願いします。(本当はおっかないんでやりたくないですけど‥)
ダンさんはずいぶん親切ですけど、このギルドの教育係みたいな事やっているんですか? 」
「いや、そう言う訳じゃないんだが‥‥、ギルマスには昔世話になったもんで、つい、な。」
広場の中央に出て木刀を構える。
「おう、いつでもいいぞ。」
ダンの声がかかる。
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「オイ! いつまでグルグルしてるんだ! 練習にならんぞ!」
呆れたようにダンの声がかかる。
いや、打ち込もうとはしてる。これでも精いっぱい打ち込もうとしているのだが・・・・・
気合をかけて、刀を振りかぶって、飛び込んで行って、それでもダンの間合いぎりぎりになると、体の方が勝手に飛び退って、逃げ出してしまう。
結果、ダンのまわりをグルグル回るだけになってしまう。我ながらなんとも情けない姿である。これなら、ゴーラやロビンの方がもっとマシだろう。マクロスが俺の事をクズだと言っていたが、ある意味とても正しかったのかもしれない。
まるで目が無い訳ではない。・・・・・理論的には。まだお互い様子見の段階である。ここで十文字に刃を切り結びに行けば、ダンは受けるはずである。
木剣とは言えダンの大剣は二メートルに近い、幅も木刀の三倍以上ある。十文字に切り結べば、圧倒的に大剣の方が有利である。カズがなぜ不利な戦い方をするのか疑問はあるにしても、上手としては、一度は受けて見せるはずである。
ならば”巻き打ち返し”が使えるはずである。
いくらガタイの良いダンと言えど、ガタイだけで言えばオーガよりも大分劣る。理屈で言えば、二本目は無理でも初見ならば対オーガ用の技は通用するはずなのだ。
にもかかわらず、いざ切り込もうとすると、俺の身体はビビって、勝手に逃げ出してしまう。
もうやけクソである。目をつぶってでも切り込んでいかざるを得ない。
「行きます!!。」
声を出して、無理やり自分を切り込まざるを得ないように追い込む。
それだけでは足りなくて、
「一、二の、三! ヤー! 」
一、二の、三、そこまでしないと飛び込めないのだ、これが剣の練習か? と言いたくなるが、どうせ飛び込むタイミングはバレバレである。実質的なデメリットはない、とは言え、なんともみっともない状況である。
ダンの剣は大剣である。オーガと同じくカズの刀より遠くまで届く。飛び込んで行くのはカズでも、剣を先に振り始めるのはダンである。
ダンの袈裟切りに合わせて、一瞬切り結ぶと見せて、すり抜けざまに大剣を進行方向にはじき出す。”やった! ”と思った瞬間、刀が吹き飛ばされた。
一瞬何が起きたか理解できなかった。有り得ないと思った。空白の一瞬の後、やっと足でけり飛ばされたことが理解できた。
おそらくダンは大剣に巻きをかけられた瞬間、切り返しが間に合わないと判断して、踏み込みながら剣をはじかれた方向に身体をひねって、足で俺の刀を蹴り飛ばしたのだろう。
あわてて吹っ飛んで行った刀を拾いに走った。後ろから切り掛かられるかと思ったが、ちゃんと構えるまで待ってもらえた。
「今の技は何だ?いきなり隠し玉か?」
ダンが聞いてきた。
「いや、対オーガ用の技です。必殺技のつもりだったんですがね。」
「ふーん、なかなかな技だな。危うく一本持っていかれるところだった。」
それなりに評価されてちょっと気分はよくなったけれど、もうそのあとはもうボロボロで、つねにダンの間合いにつかまったまま、こちらの間合いに詰めることも、ダンの間合いから逃げることも出来ずに、良いようにあしらわれる。
間合いを詰めようと飛び込もうとすると、同時に弧を書くように回り込まれて、間を取られる。ダンの間合いから逃げようとすると、同時に距離を詰められて、ダンの間合いから逃げる事が出来ない。つねにダンの間合いにつかまったまま、こちらは刀を振ることも出来ず、かと言って、ダンの大剣とまともに切り結ぶことも出来ず、ひたすら躱そうともがき続けて、ついにヘロヘロになって、崩れ落ちてしまった。
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