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その6

その6

昨日の夕方カナの町に戻った。今日はギルドでベテラン冒険者を紹介してもらうつもりだが、 何分こちらも、紹介してもらう冒険者さんも、泊りがけで出かけているので、時間までは決められなかった。

駆け出しの方が後からノコノコでは具合が悪いので、朝からギルドに行ってみることにする。ちなみに、今日持っていく魔石は100個、オーガの魔石30個とオークの魔石が70個である。

俺とアズミで苦労して、ゼーゼー言いながら運んだ事になっている。本当は収納なので全然苦労はない。もとい、ギルドで収納から魔石を取り出すわけにもいかないので、宿からギルドまでは真面目に運んだ。本当に重くて苦労した。

カランコロンのドアを開けて、魔石を持っていく先は、あの美人だけれど怖いお姉さんだ。小さな町のギルドで、受付が一人だけなので仕方がないのだ。

「お早うございます。頼まれていた魔石です。」

「あ、どうも有り難う。確認しますので、こちらへどうぞ。」

なぜか今日はこの前ほどの塩対応ではない。いくらか愛想が良いとも言えなくもない。この前、刀を振ったのを見て、どうしようもないダメ男からまあまあ普通ぐらいのダメ男に格上げされたのかもしれない。

調子に乗るとギャンギャン咬みつかれそうなので、さりげない笑顔でスルーすることにする。美人のお姉さんが重そうに魔石を3回に分けて運ぶのもスルーすることにする。

駆け出しが変に美人さんの仕事に手を出すと、周りの視線が怖いのだ。

さっさと魔石の清算をしてほしい気はするのだが、朝のこの時間、冒険者の依頼を受け付けるのが忙しい時間で、魔石の清算は後回しになる。

俺とアズミははじめ隅っこのテーブルに座っていたが、依頼表示用のボードの前が空いてきたので、どんな依頼が有るのか見物しに行く。

オーガ、オーク、ゴブリンは常時依頼になっていて、オーガが討伐銀貨6枚、魔石は銀貨2枚。オークが討伐で銀貨2枚、魔石は銀貨1枚、肉は時価で買い取り。ゴブリンは壱分銀貨3枚+銅貨5枚となっていた。

初心者用の薬草採集の依頼は銀貨1枚と壱分銀貨5枚なので、ゴブリンはともかく、オーク、オーガとずいぶん値段が違う。

テーブルに戻って、

「何でだ? 」

と、独り言のとつもりで、ついもらすと、

「オーガとかはパーティーで討伐するからじゃないの?」

と、アズミから言われた。

そう言う事か、パーティーで頭割りするとそれほどの金額にはならないのか。

一人でぶちぶち言っていたら、カランコロンのドアが乱暴に開いて、五人ほどの冒険者が(乱入?ではないよな、)多分本人たちは普通のつもり? で入ってきた。

ぱっと見でやばそうな空気をまとった連中、何と言うか見た目だけですでに自己主張が強い。

一人はオークよりもちょっと小さいぐらいのやたらにガタイのいい男で、大剣を背中に背負っているし、でかい盾これ見よがしに持って居るのが一人、弓を持っていたり、ローブをまとった魔法使いらしかったり、まあ,それはそれで良いのだが、見てくれの割に実力は・・・・って感じの連中で、こういう連中に限って、自分より弱そうなやつを見ると絡んでくる。

まっすぐ受付の方に行ったのでホッとしていたら、話の合間にチラチラこちらの方を、いや、アズミの方を見ている。

あからさまに拙い状況である。ちらほら聞こえてくる話によると、ランクが上がって新しいカードを受け取りに来たらしい。C級とかいう言葉がわざとらしく大きめに聞こえてくる。

やっぱりと言うか、当然と言うか、カードを受け取るとその中のリーダーらしき男がこちらに歩いてくる。

「ねえ、君。」

”はあ”、ため息が出る。いよいよ揉め事の開始である。

「そちらの二人は新人さんなんだからね。いじめたりしたらダメですよ。」

受付のお姉さんが声をかけてくれるが、当然それで収まるはずはない。

「は~い。ちょっとお話をするだけです。」

お姉さんに対しては実にさわやかな良いお返事を返しつつ、アズミを見る目はジト目である。

「あの、妹に何か御用ですか?」

「妹? うそだろ! 全然似てないじゃん。ねえ君、うちのメンバーにならない?」

「いや、血は繋がっていません。義理の妹です。いろいろ言われて面倒になりそうなので、二人でパーティー作って、パーティー名を”義兄妹"とでもしようかと思って、なっ。」

話の後半はアズミに振ってしまったが、これでも俺としては一生懸命頑張っているのだ。

「はっ、取りあえず君には関係ないから。話が決まったらちゃんとお兄様にはご報告申し上げるから。ちょっと君、黙ってて。」

黙ってて、て言われてもそうは行くか! ほっといてもアズミは自分で何とかできるが、ここで俺がちゃんと”できる子”と言うところを見せないと、後でアズミのお叱りが怖いのだ。

「黙ってて、て言われても私の義理の妹の事ですし、パーティーにも関係する事なので、私は当事者のど真ん中ですから、黙ってる訳にはいきません。」

「あのね~、君より上級者で、先輩で、強くていい男のこの俺が、この子の為に、気を使ってあげてるんだから、ダメ男君な君は有難~く、この私の言う事を拝聴していれば良いの!」

何とも嫌ったらしい物言いの男である。もし、俺に妹がいて、こんな男が妹に言い寄ってきたら、いくら弱虫な俺でもぶん殴りたくなる。・・・出来たら。

「ちょっと! 黙って聞いていればいい気になって、私の兄貴分をダメ男って失礼すぎるでしょ! 誰かみたいに鼻っ柱だけの自惚れ屋よりもよっぽどましよ! 」

あ~、ついにアズミが火を噴いた。火を噴いたは良いけど、アズミ、これどうやって収めるつもりなんだ?

「おー、お嬢さん勇ましいねえ。失礼な物言いしたのは申し訳なかったけど、ダメな冒険者にはちゃんとダメな事をはっきりさせた方が、身の為なんだよ。なんなら訓練所でキッチリ教えてあげようか?」

こうなるよな、当然こうなる。ありきたりなテンプレの展開である。問題なのは見た目が貧弱だからと言って、舐めてかかって来た奴をボコこってしまうと、後々まで恨みを買う事になる。本当に面倒な事になってきた。

                         *


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