その20
1度完結したのですが、「カクヨム」の方で書いていた続きがもうすぐ2章終わりまで行きそうなので、「なろう」でも続きを上げる事にしました。
宜しくお願いします。
サラサラと小雪の舞うアジトの広場で、私は今日も刀を振っている。
なぜこんな雪の日に?と思うかもしれないが、座禅を組んで無念無想の境地を体得しようとしたが、全然うまくいかないからである。
なぜ座禅?それは私がビビりであるから、”そこんところを何とかしろ!”とレディーからガリガリ、ゴリゴリ、強烈に、激烈に、問答無用で、かつ心からアドバイスされた結果である。
この所、先日のオーガとの戦いのデータをもとに、ヴァーチャルの映像を使って訓練を重ねているが、勝率は8割程度、オーガ10匹と戦ったら、2回ほど殺されることになり、危なすぎてとても刀だけでは実戦は出来ない。
まあ、今はまだ実力不足と言う事で、それはそれでいい。
問題なのは仮に不本意ながら間違って魔法なしの実戦に追い込まれてしまった場合、レディーは私がビビってしまって、勝率が10%程度まで落ちてしまうと考えている事である。
”俺、そこまで酷いか? 何とか50%ぐらいは行けないか?”と言う気はするのであるが、とにかく、メンタルの強化=昔ながらの座禅と言う事に成り、早速試してみた結果早くも挫折したわけである。
だいたい、無念無想で、何も考えまいと思って座っていればそれはもう、雑念が湧いて来て下さいと言うようなものである。理論的当然の帰結として挫折する。うん、これは私の責任ではない。
まあ、そう言う訳で小雪の舞う中、刀を振っているわけであるが、意外とこれが私には合っている気がする。
座って何も考えまいとすると、よけい色々な雑念が湧いてきて、雑念の塊になってしまうが、風の中で刀を振っていると、色々な思いは流れの表面をサラサラと流れて行って、色々あるのは分かっていながらもそれほど気にならなくなる。
これがメンタル強化につながるのか少々心持たないが、まあ、どうでもいい。
ゆっくりと深く吸う冬の大気は細胞の1つ1つまで覚醒させ、鋭く長く吐く呼気の中に、己を解き放つとき、”ああ、これはこれで有りなのかも知れない"と感じてしまう。
季節の風の中で舞うように刀を振りながら日を重ね、季節を重ね、年を重ねて、そして老いてゆくものならば、それはそれで、私の様な日陰なものにとって、一つの幸せと言えるかもしれない。
ただ、それをそう言い切ってしまうには、私の精神はともかく、私の15歳と言う肉体年齢はあまりにも若すぎるのだが。
*
凍てつく冬の白い景色は、やがて若葉の春へと変わり、照り付ける夏の日差しに刃をきらめかせると、季節はいくつもの重なりを造って、やがて1年がたち、2年がたち、3度目の春を迎えた時、我々は 明日、山を下りる事になった。
第1章完




