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1章     その1


乳白色の淡い光の中に意識は浮かび上がる。


「和雄さま、おめざめですか?」


”レディあずみ3世”の声である。言葉は疑問形であるが、目覚めていることは、いや、私の生理状態はすべて把握したうえでの、儀礼的あるいはこの先の行動を促すためのつなぎの言葉である。


前世のスパコンの名前は”あずみちゃん2号”であった。


別に私はロリコンではない。これは生まれる予定であった娘の名前を付けただけである。


なぜ予定なのかと言えば生まれなかったからであり、なぜ生まれなかったかと言えば結婚しなかったから。なぜ結婚しなかったのかと言えば、要するに振られたからである。


なぜ結婚もしていないのに娘の名前まで決めていたかと言えば、それは私が生物であり、生物の第一義は子孫を残すことであるので、その程度の思い入れは当然なのである。


で、今度のスパコンの名前であるが、とうぜん娘の名前はゆずれない。しかし、今度もちゃんづけではいかにもなので、少しだけ格調高く「レディーあずみ3世」とする。


通称は”レディー”でいいだろう。


乳白色に柔らかく光っていた人体生成用のコクーンの壁が透明に変わり、カプセルの扉が開かれる。


コクーンを出て最初に気が付いたのは自身が裸であることであった。コクーンは衣類まで生成してくれないので当たり前である。で、つい思わず言ってしまったのが、


「レディー、俺のパンツはどこだ?」


「・・・・・・・・・・」


新しい人生の第一声がこれである。まずい、非常にまずい、美しくないのである。だいたい前世の研究室を丸パクリしてきたので、仮眠所のタンスの中に衣類が入っていることは知っていたはずである。


俺を作るために転送されたデーターにあやまりがなかったか?オツムの仕上げに失敗したのではないか?急に寒気を覚える和雄であった。


「和雄様、とにかく基礎体力を上げてください。武術や魔法も覚えなければなりませんが、いまはそれ以前の状態です。」


つまり、この世界はかなり危険な場所なので、危険を乗り越えるために当然そこに住む人間の体力も高いのだそうだ。


「誠に残念ですが、和雄様の基礎体力はこの世界の10歳児レベル。生存能力はほぼ最底辺でございます。」


”へっ?”である。異世界に来たら有り余る魔力を使って、無双して、ついでに余裕で魔王にでもなってやろうと思っていたのに何か話が違う。魔王どころか昔のいじめられっ子に逆戻りの予感がする。


「あの~、わたくしめ、魔力たくさんと注文していたので、魔法で何とかならないかとォ~・・・・・。」


つい、いじめられっ子の本性が出て下の方からコンピューターにお伺いを立てる和雄である。


「ご理解いただけると思いますが、魔力だけあってもすぐ魔法が使えるわけではありません。私どもの使う魔法は地球における科学の知識をベースにしています。明確なイメージ化が必須ですが、相当訓練してもイメージの複雑なものは人間には苦しいかと‥‥」


レディーの説明によると、この世界の余剰次元は前世のものより丸められ方がかなり緩く、凝縮された場所のダークマターやダークエネルギーは緩んだ余剰次元に漏れ出し、やがて魔力となってこの世界に戻ってくるのだそうだ。


この魔力と言うのは余剰次元の影響を強く受けて現次元と余剰次元の中間的な性格を持つために非常に不安定で、論理的な方向性と、明確なイメージを与えてやると、その方向性に沿って現次元の現象や物質に姿を変えて安定化しようとする。まあ、過冷却の水がちょっとの刺激で氷になるようなものである。


つまりそれが魔法を発動すると言う事になるわけだが、スパコンのレディーならば有り余るメモリーを使って、論理化もイメージの鮮鋭化も余裕であるが、比較的簡単なイメージならばともかく、複雑なものになると人間には手に余るのである。


ただし、人間の中には写真のように鮮明な記憶を持つ個体も確認されているので、その辺を詰めていけば将来的にはそこそこの魔法はつかえるだろう・・・多分・・と言う事で、


「今はとにかく基礎体力をゴリゴリ上げてください。」


と強く言われてしまった。は~、お先真っ暗である。大嫌いな体力造りなどを死ぬ気でやらないと、このさき生きていけそうもない。大魔力を使っての天下無双ははるか未来のはかなき夢となってしまった。


「それから、和雄様、私のアバターを造ることにしましたので、ご了承ください。」


「え~っと、アバターってたしかネズミとカラスが居たはずだけど。」


言ってしまってからこりゃちょっとまずかったかな?とは思った。思ったけど遅かった。


「私がネズミとカラスですって!!ありえない!!あれは人間のそばまで行って情報を取るためだけのその場しのぎの端末です!!」


「だいたい2、3日前まではあなただって私のメモリーの片隅でくすぶっていた出来の悪いデーターの塊だったくせに、私がネズミってありえないの!!」


は~、完全に怒らせてしまった。いきなり和雄様からあなたに格下げで、クズデーターで作られたダメ男みたいに言われてしまったけど、まあ確かに一時的とはいえ地球から送られてきた私のデーターはスパコン”レディー”に格納されていたわけで、そのデーターをレディーに好き勝手にチューンナップさせていたら、苦労もなく魔王でもなんでもなれていただろうけど、それってもはや私じゃなくね?と思って止めさせたのだけれど、どこまでいじったら私で無くなるとか明確な線引きなんて無いんだよな~‥‥とか、考えていたら、


「あなたの才能では普通にやって2~30年頑張ってやっと人並みってレベルなので、訓練時間を確保するために、とりあえず老化を止めてあります。」


とか、サラッと言われてしまった。けど、それって要するに不老不死になったと言う事?それって、もはや俺は俺じゃ無くね?と思ってしまいましたが、私としてもとりあえず長生きはしたかったので考えないことにします。


で、レディーの言うには現時点ではちょっと外に出るにしても護衛は必要だし、体力アップや武術の訓練にしても、相手やコーチが必須との事で人型のアバターを造らない選択肢はないとの事でした。


「明日から覚悟してください!」とか、がっつり言われてしまった。それで取りあえず腹筋100回、腕立て伏せ100回を仰せつかった訳ですが、腹筋50回で力尽きて寝てしまいました。






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