その17
昨夜、この辺も初めて雪が降ってあたり一面白くなったが、日中の日差しでほとんどが消えて、今は日陰だった場所にところどころ白い塊が残るだけになった。
日中の鍛錬を終え、夕方の大気の中で、今は静かに刀を振っている。呼吸をめぐらせ、気をめぐらせ、魔力をめぐらせる。
つま先から指の先、さらに振っている刀の先まで力が満ちて、今なら軟鉄の棒ぐらいなら切れそうな気がする。
もっとも、この刀は”鉄砲切り”の二つ名がついていて、機関銃の銃身を切ったという逸話を持つ・・・・逸話を持つ刀のコピー品である。コピーではあるが、完全に分子レベルまでしっかりコピーして有るので性能は同じ・・・・はずである。で、達人ならばコンクリート用の鉄筋ぐらいは切れる・・・・はずなのである。
もちろん私はは達人ではない。しかし、最近刀に魔力をかよわせると、刀の状態が感じ取れるような気がして、しかも魔力をめぐらせると、刀が強く鋭くなるような気がするのである。
じじつ、最近はオークとやりあっても手応えがないほどすっぱり切れるし、オークの剣と打ち合っても刃こぼれも見られない。あながち勘違いとも思えないのである。
鉄などを面白半分に切ってしまうのは、何と言うか、刀に申し訳ない気がするのだが、その反面、どこまで刀に頼っていいものか、まじめに限界を知りたい気持ちはあるのである。
カラスの偵察によると、冬ごもり前の最後の餌集めか、大物の魔物が山を下りてきているようで、今までこの辺では見なかったオーガが近くまで来ているそうだ。
本格的に雪が積もってしまうと、どう対処するか状況が複雑になるので、明日、取りあえず戦ってみることになった。
相手が一匹だけなら遠距離からの魔術ならば問題ないだろう。問題は刀だけでどこまで行けるか?である。対オーガ用の剣技も一応、自分では割と様になってきたとは思う。
明日のオーガ討伐に向けて、今は心静かに・・・・とは行かず、いま心を乱しているのは対応ーガ用の剣技の名前である。”燕返し”、”虎切”に対応できる技と言う意味では”虎切返し”で良いのだが、もし、この先人里に降りて”虎切返し"の名前の由来を聞かれたりすると、場合によっては”燕返し”や”虎切”の説明までしなければならなくなるかもしれない。
うかつな相手に前世で名高い必殺剣の説明などしたくない。
で、ごく説明的な名前を付けるとすると、”巻き打ち返し”になるのだが、何かこう~、もうちょっとかっこいい名前が欲しいのだ。何しろ必殺剣”燕返し”を破るべく生まれた超必殺剣なのだ。
しかし、出てこない。どうにも思い浮かばない。仕方がないので取りあえず、本当に不本意ではあるが、”巻き打返し”としておく。まあ、やっていること自体それほど大した事はやっている訳でもないので、考えようによってはそれで良いのかもしれない。
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