その9
「和雄様、お早うございます。訓練のお時間です。」
本当はそろそろ訓練の成果を見るために、下級の魔物討伐など始める予定だったのだ。しかし、レディーの奴、このまえのチャンバラごっこで体当たりされた事で火が付いてしまって、私の筋肉の動きから事前に察知、回避に夢中に…”コンピューターってこんな事に夢中になったりするのか?知らんけど。”
それでも俺の体当たりが成功して、レディーを抑え込んだ時に
「鎧を引っぺがして、チューしちゃうぞ!!」とおどかしたら、
「キャー!!自分の娘相手に何てこと言うんですか!!」
「エッチ!!変態!!すけべ!!」
言われて思わず血の気が引いてしまう。いや、レディーの言い方がちょっとわざとらしいとは思ったよ、でもひょっとして俺の遺伝子データーを使ってアバターを造っていたら、本物の娘になりはしないか?冷や汗をかきながら恐る恐る聞いてみたら、
「そんな訳ないじゃないですか!」
即否定されて、ホッとしたよ、まあ、顔も全然似てないし、確かにそんな訳ないよな。レディーの奴、絶対、俺の遺伝子データーなどクズだとしか思ってないし。それなのになぜレディーが俺の娘かと言うと、”レディーあずみ3世”の”あずみ”が生まれたら娘に付けるはずの名前だったから。たしかに生まれなかった娘の代わりと言う立ち位置でもあったし、血がつながっていないのを良い事に、見た目がかわいいからと言って、襲い掛かってしまうのは恥知らずと言われても仕方がない。
しかし、レディーの奴もいい加減俺の事をおちょくるのは止めてほしい。柔軟体操で前屈をする時など、
「パパ、わたし、あなたの娘なんだからね~、エッチなこと考えちゃダメなんだよ~。」
とか言いつつ、背中を押す時にわざと胸を押し付けてくる。これ絶対俺の事をおちょくって楽しんでる。
それでなぜレディーが柔軟体操に入れ上げているかと言うと、俺に”影抜き”と言う技と”燕返し”を覚えさせたかったから。
”燕返し”は言わずと知れた佐々木小次郎の必殺剣、とにかく見た目がかっこいい。インパクトあるし、強そう。
”影抜き”は刀同士ガキッと切り結ぶと見せて、影でも切ったようにするっとすり抜けて相手の懐に入り込む技。
この世界の剣は色々種類があって、中には幅が日本刀の5倍ぐらいある、見た目は剣、じっしつ斧みたいな奴もあるので、いくら日本刀が優秀と言ってっも、それとまともに切り結ぶのは無理、と言う事で、どうしても相手の剣をすり抜けて懐に入り込む技術が必要になる。
この技を成立させるには体の柔軟さ、特に肩甲骨の柔らかさと体軸の強さが必要だそうで、切り結ぶと見える瞬間、ふにゃっと小さくウェーブをかけてすり抜ける。
決まるとかなり格好がいい。だからレディーが夢中になる。俺は苦労する。チャンチャン。
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