刑務所帰りと自慢する男と話しながら、思ったこと
子供の頃。親父の海外の出張に、ついていったことがある。
南米の某所だ。
少し、宿舎を離れて、1人で街を見に行ったら、声を掛けられた。
「※×←W~~~~!」
(あれ、俺に言っているのか?え)
「銃?」
状況は、スラムというほどではない街だ。
痩せた男が、仕切りに、右腕で、拳銃を構え。左手で何か寄越せとジェスチャーしている。
何というか。腕の使い方が、日本人と違う。一言で言えば、良く動く。
すると、これまた痩せた人、白髪の爺さんが間に入って、
拳銃を持った男に、
「〇●※―――――――!!」
と叫んで、私に、あっち行け。とシィシィと仕草をしている。
男は、退散した。
爺さんは、まだ、シィシィとやっている。
男の方をジィと見ながら油断していない。
その後、記憶がない。ひたすら、会社が用意した宿舎に戻った。
後で、あの爺さんは助けてくれたのだと理解出来た。
後に、この話を銃に詳しい人に話をしたら、
「その男、拳銃を、このように持ってなかったか?」
モデルガンで構える。拳銃を横にしている奇妙な持ち方だ。
「はい、そうです」
「・・・そうか。この持ち方は、薬莢が下に行くようになっている。連射しやすい。本気で撃つつもりだったろうな。
しかし、まだ、優しい方だ。海外の強盗は、撃ってから、金を寄越せとなるからな。子供だから、いきなり撃つのを躊躇したかもな」
「なるほど」
・・・・
今、昔の事を思い出している。
何故なら、
何か緊張した状態になると、あの光景が思い出すようになった。理由は分からない。
目の前に、「刑務所帰りだ!」と自慢をする男に退場勧告をしている所だ。
「え~と、貴方は、この現場にはいられません。ご理解下さい」
「だから、何故だ?!刑務所帰りを差別するのか?」
「いいえ。刑務所帰りと自慢して、周りと仲良く出来ないからです。それに、吸ってはいけないところでタバコ吸っていますよね。注意しても改めませんよね。この宿舎は弊社が管理しています」
「クビなら、一月分の給料を越せ!」
「クビではありません。次の仕事は、所属している会社におたずね下さい」
ややこしいが、元請け企業として、現場作業員の宿舎を管理している。
そこの問題作業員の退去をお願いしている。
殴ってきたら、周りに人が大勢いるから、すぐに止めてくれるだろう。
と思っていると、割って入ってくる大柄な男がいた。この男の会社の社長のようだ。
「おい。お前だな。刑務所帰りと自慢している奴は?何で引っ張られた?入った刑務所は?」
この人は、元相撲取りだった人だ。
男は急にしどろもどろになる。
「え、え、あの、いろいろ人を欺して~」
「何だ。自分のくらった刑も知らないのか?判決主文だよ。何て裁判官は言ったのかと聞いている」
「え~と」
「刑務所に入ったは嘘だな。会社に連れて行け」
「ヒィ」
・・・
「有難うございます。助かりました」
「あんた。たいした度胸だな」
「いいえ。まだまだですよ。昔、助けてくれたお爺さんの足下に及びません」
「・・・そうか。善い爺さんだったんだな」
「ええ、名前も知りませんが・・」
人の本質は、性悪説と性善説あると、秦の始皇帝が出てくるマンガでもテーマになっているが、
あの爺さんの心根が悪で、教育によって、善の方に修正されたとは思えない。
元から、心の中に善が潜んでいたのではないか?
それに、
「ただいま。義母さん。義姉さん」
「お帰りなさい」
「早いわね」
「いつも、有難う」
「どうしたの」
「何よ」
家族に対して、性悪説は採りたくない。性善説で接したい。
国家や社会は性悪説で良いけど、家族などの小集団は、性善説だな。
と思う。