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深窓の令嬢に、令状を。  作者: いちご少々
1 深窓の令嬢の真相
2/4

3LDKのお姫様 2

 一階ではパパとママが仲睦まじく朝食を取っていた。


「あ・な・た♡」

「は・に・い♡」


 なんてやりとりはもう何千回見たことか。見ているだけでお腹がいっぱいになってくる。


「はいはい、ご馳走様。」、

「あら、朝ご飯もう終わったの?」

「終ってないよ!ちょっと待って、顔洗ってくる!」


 結婚してからかれこれ10年以上たつというのに未だにコレだ。


 (こんなパパも元は名のある貴族だったというから驚くよね?)


 パパは目立つような浪費癖みたいなのはなかったのだけど、困った人を放っては置けないお人よしで。よく人の役に立とうとしては大金を使い、結局は住んでいた大きなお屋敷も売ってしまって。けれど、ママはそんなパパが大好きで、エクレアは小さい頃からそういった惚気話を聞かされていた。


 でも、エクレアはその話を聞く度に『幸福の王子』という童話を思い出す。困った人たちに宝石を渡し続け、最後にはみすぼらしくなって不幸になった王子の像の話。


 パパとママはお屋敷を手放した後も幸せが続いているようだけど、お話の王子と同じように貧乏になってしまったのは事実。貴族の生活が出来なくなったエクレアは、こうして庶民と同じ暮らしを強いられてるのだけど。


(こんな世界っておかしいよね?人を幸せにした人が不幸になる世界って、ぜえったい間違ってる。)


「どうしたの?えっちゃん。ぼーっとして。ご飯、冷めちゃうわよ?」

「ううん、なんでもない!」


 ママの一言で、下を向いていたエクレアは暖かいご飯を頬張る。おいしい、のだけど、毎朝代わり映えのしないメニューに、変わらないふつーの味。


 (私だって五つ星の料理人が用意したごちそうを毎日食べたいよ!)


 しかし、時は来た。妃候補に選ばれたのだ!


 もし試練を無事突破できれば、こんな小さい一軒家とはお別れ。王宮暮らしに戻れるし、それだけじゃない。その中でも優秀な成績を収めて一番になれば、かっこいい王子様と結婚できて、きれいな服を着て、おいしいものを食べて、生活できる。もうママの洗面所や、パパのトイレも待たなくていい。


 食事を終えたエクレアはそんな夢のような暮らしを想像しながら、召使いがいればやらなくてもいい歯磨きをしたり、洗濯物からハンカチを取ってきたりして、学校へ行く準備を済ませる。


 そしてこの指輪。エクレアは指輪に紐を通して、ネックレスのように首にかけた。


(だから、王子様にもらったこの指輪は、誰にも渡さない。パパとママの様にはならない。わたしの幸せは、わたしだけのものだから!)


 エクレアは指輪をぎゅっと握りしめると、服の中に入れ、元気よく家を出た。


「パパ、ママ、いってきま~す!」

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