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エピローグ

「それはまた、随分と大変だったんだな」


 隣を歩く我が親友、一条二郎に彼が不在だった時の出来事を伝えると、二郎は他人事のようにぼやく。


「まだ話は終わってない。アブソーバーを倒して終わりならともかく、周りには暴れている鬼や機械人形が残ってたからな。そいつらも倒さないといけなかったんだぜ」


 アブソーバーが爆散した後、俺の視界に入ってきたのは鬼や機械人形と戦うクロガネや雉鳴さん。

 そして、JDF隊員の姿だった。

 ストームガールや桃太郎さんは無理するなと言ってくれたけど、流石に目の前で暴れている奴等を放置する訳にもいかない。

 結局、全員倒すまで戦い抜く事になってしまった。


「まさか、俺がハワイに行ってる間にそんな事になるなんてな。それはそうとショウ、お土産渡しとくよ」


 二郎は思い出したかのようにそう言うと、此方に紙袋を差し出してくる。

 ……二郎が商店街の福引きで特賞を引き当て、夏休みの一週間ほど家族でハワイ旅行に出掛けてる間、俺は一人でヒーロー活動を続けていた。

 先日のノワールガイストとの戦いも、その一週間の間に起きた出来事だ。


「態々悪いな、気を遣ってもらって――おい、何で素直に渡そうとしない?」


 紙袋を受け取ろうとすると手を伸ばすが、二郎はヒョイと手を上げて俺の手をかわす。


「いや、タダで渡すのもなんだしな。俺にもなにか見返りがあってもいいだろう?」


 成る程、そういうことかよ。


「……この野郎。まあいい、今度俺が旅行に行ったときになにか買って――」


「それはいいからさ、それよりもストームガールのサインとか貰ってきてくれないか? 俺、彼女のファンなんだよ」


 二郎は俺の言葉を遮り、食い気味に自分の要求を伝えてくる。

 まあ、普段からこいつには何かと世話になっているし、少しくらいお礼しても構わない……俺に出来る範囲ならな。


「無理。彼女の連絡先、知らないから」


 ストームガールみたいなスーパーヒーローのサインなんて、所詮ローカルヒーローの俺が貰える訳無い。


「何でだ? 同じチームとして一緒に悪党と戦った仲だし、これから協力することもあるだろ」


 ……残っていた鬼や機械人形を倒しきりノワールガイストとの戦いを終えた後、俺は再びJDFの支部へと連れていかれた。

 そして二郎の言う通り、ヒーローチームへの勧誘は受けたのだ。


「……何か勘違いしてるみたいだから訂正しておくけど、俺は彼等のチームには入ってないから、連絡先は知らない。そもそも、お前のイチオシは俺じゃなかったのか?」


 チームに加わる事自体はやぶさかでは無かったが、上からの指示に従ってヒーロー活動をするのは性に合わないとか、自由に活動できなくなるなど色んな理由もあり、俺はJDFの誘いを断る事にしたのだ。

 ……加入する為の条件の一つである正体を明かすというのは絶対に受け入れる事はできなかったし、それさえなければ受けていたかもしれないがもう終わった話だ。


「ショウがブレイズライダーって知る前はそうだったけどさ、ファンである以前に親友だという感情が先にきて、どうにも推しきれなくなった。そもそも、俺がサインしてくれと言っても断るだろ」


「そりゃそうだ。そういうファンサービスみたいなのはやらない事にしているからな……基本的に」


 ……肩から掛けている鞄の中身である、ブレイズドライバーに意識を向けながら返事をする。

 先程ファンサービスしないとは言ったが基本的にと付け加えた以上、やむを得ずサインしたりする事はあるのだ。

 先程勧誘を受けた話の続きになるが、JDFからしてみれば俺は強力な超能力を持つ俺を野放しにはできないらしく話が拗れそうになったところを、多田博士が助け船を出してくれたおかげで無事に帰してもらうことができた。

 その見返りにと何故か俺のサインを要求された訳だが、話を丸く収めてくれた上に新しいスーツまで作ってくれたし、その対価としては安いものだろう。

 そして五月蠅くなるのがわかりきっているから、サインした事は二郎には内緒にしてある。

 一応多田博士から連絡をとれるようにと通信端末も貰ったが俺から連絡する事はないだろうし、二郎と多田博士が顔を合わせる事もない。

 バレる心配はないだろう。


「それはそうと、どこに向かってるんだ? 今日は勉強会っていう話だけど、図書館はこっちじゃないだろ?」


 とはいえ、俺がボロを出さないとも限らないし、ここいらで話題を変えるべく問いかける。

 そもそも二郎から勉強に誘われたから、今日こうやって一緒に歩いている訳だ。


「勉強会をするのは、うちの学校一の天才の家だよ」


 そういえば、期末試験の時に二郎が勉強を教わってたな。


「……二郎の成績は良くなったよな? なんでまだ勉強を教えてもらうんだ?」


「そう、俺の成績自体は上がった。だけど、彼女が思っていたよりも低かったらしくて、根本から鍛え直してやるだとさ。それは構わないんだけど、どうせなら人の多い方が楽しいだろうし、お前を誘った訳だ」


 ……俺は道連れに選ばれた訳か。

 今から帰ってもいいのだが、俺も夏休みの課題がまだ終わってないし、ここは大人しく付いていく事にしよう。

 しかし、未だに信じられない。

 学生の身分でありながら、既に何処かの会社で色々な発明をしているような天才が同級生で、ましてやそんな人が二郎のような奴に勉強を教えてるなんて。

 ……最近、そんな人に会ったような気がするな。


「教えて貰った住所によると、そろそろ到着だ」


 二郎はスマホを弄って画面を確認しながら、俺に話しかけてくる。

 ……何故だろう、嫌な予感がしてきた。


「なあ、勉強を教えてくれた子の名前って――」


「おっ、この家だな――どうした?」


 どうやら教えられた住所にたどり着いたらしく、俺の話を聞くよりも早く二郎がインターホンを鳴らす。


「……いや、何でもないから気にするな」


 知り合い同士が面識を持っているなんて、そんな事はそうないだろう。

 ……自分のの考えすぎだと納得させていると、一軒家の扉が開いて少女が俺達を出迎えた。


「やあ。二人とも、暑い中よく来てくれたね。立ち話も何だし、家の中に入ってくれ」


 事実は小説より奇なりとはよく言ったもの。

 目の前に現れたのは、先日会ったばかりの多田博士その人だった。

 これはまた、面倒な事になりそうだな。

GUH5 ゲットアップヒーローズ これにて完結です。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

ブクマ・ポイント・感想をもらえれば筆者のモチベーションが上がるので非常にありがたいです。

次回作のGUH6 ブレイズライダー3 音速の貴公子は来週日曜日の昼十二時から投稿するので、よろしくおねがいします。

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