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3幕 ブレイズライダー2.5 ファースト・チェンジ(9)

「あら? 逃げられちゃったわ。中々いい男だったけど仕方ないわね。他の男を――」


「させない!」


 雉鳴が消えた事を惜しみながらも、周囲を見渡し次なる獲物を探すジェネラルG目掛け、上空からストームガールが突っ込んでいく。

 ストームガールの突撃をくらったジェネラルGは、何の因果か俺のいる方へと吹き飛ばされてきた。


「頼んだよ、ブレイズライダー!」

 こっちに飛んできたのは、どうやらストームガールの狙いどおりだったようだ。

 何の打ち合わせも無しに頼んだと言われても困るんだが、ヒーローとして信頼されている証だと思い、彼女の期待に応えるとしかない。

 結構な早さで迫るジェネラルGへと炎を宿した右足で蹴りつけ、地面に向けて叩きつける。

 そのまま地面に激突して気絶でもしてくれれば良かったのだが、ジェネラルGと地面の間に水塊がクッションのように割り込んだ。


「危ないところでしたね、ジェネラルGさん」


「あ、ありがとう、助かったわ。それにしても酷いわね! 乙女を蹴り飛ばすなんて、ヒーローの風上にもおけないんじゃないかしら!」


 ヴァッサに礼を言って起き上がったジェネラルGは、俺の事を非難しながら光線を放つ。


「乙女だろうが何だろうが、犯罪者相手に手加減なんてそうそうできねえよ!」


 ジェネラルGの言葉に反論しながら飛び退き、光線をか躱す。

 そもそも、あの野郎はどこからどう見ても乙女とは言えないだろ。


「いい加減諦めてその首を差し出せ! そうすればお前の悪行を三割増しで脚色して後世に残すのだけはやめてやろう!」


「何が悪行だ! ノワールガイストが世界を支配すれば、偉業として讃えられるに決まっている!」


 先程から小競り合いを続けていた桃太郎さんとダースオーガ。

 何度か刀と光剣を打ち合わせたあと、互いに飛び退き桃太郎さんは俺達の元へ。

 そして、ダースオーガはヴァッサ達の元へと着地する。


「貴方達、アテクシ達の相手をしていて良いのかしら? 彼等二人だけで、鬼と機械人形の猛攻を防げると思って?」


「一成君はともかく、雉鳴ならあの程度はものの数ではない」


 ジェネラルGの言葉に対して桃太郎さんは余程雉鳴さんを信頼しているのか、意に介する様子も無くさらりと答える。


「いや、一成と雉鳴さんの二人だけじゃ完璧に防げるかというと、少し難しいんじゃない? 負けはしないだろうけど、逃げられたら追い付けないかもね」


 ストームガールも桃太郎さんと同じような態度でそう口にするが、それはだお丈夫じゃないよな?

 ……というか、さっきから二人が口にしている一成って誰だ?


「……逃げ出した鬼や機械人形が近くの人を襲うのくらい、わかっていますよね? なんでそんなに落ち着いていられるんですか?」


 ヴァッサの言う通り。

 周りに被害が及ぶのなら、すぐさま二人の応援に向かうべきだろう。

 ……目の前の強敵三人が、それを許してくれればだが。

「ストームガールに桃太郎さん、あいつらは任せていいか? 俺も鬼と機械人形の相手を――」


「その必要は無いから大丈夫だよ、ブレイズライダー」


 クロガネ達の元に向かおうとした俺をストームガールが制すると同時に、鬼の悲鳴と機械人形の爆発音が響き渡る。


「JDF到着! これより市民の安全確保及び、ノワールガイストの撃退を開始する!」


 黒い戦闘服を身に纏ったJDFの隊員達が現れ、クロガネや雉鳴さんと一緒に敵に攻撃を始める。

 助けに来てくれたのは有難い。

 有難いんだけどなあ。


「……もう少し早く来てくれれば、ここまで苦労せずに済んだのに」


「あんまり文句を言わないであげて。彼等も襲撃を受けて、ここまで持ち直すのも大変だったんだよ」


 何の気なしに愚痴を放った俺を諌めるように、ストームガールがJDFを擁護する。

 彼女の言い分も勿論わかるのだが、それはそれとして先程からの苦労を思えば愚痴を言いたくなるのもわかってほしい。


「言ってみただけだから、気にするな……さて、これでお前達が唯一勝ってた人数差も無くなったけど、まだ続けるつもりか?」


 ストームガールへ適当に返事をした後、ヴァッサ達にこれ以上戦う気があるか問いかける。

 俺がヴァッサ達と同じ立場ならさっさと逃げ出すところだが、生憎テロリストになった事は無いので彼等がどう返事をするのかわからない。


「確かに貴様の言う通り、これ以上戦っても無駄のようだな」


「そうですね。彼等のようなヒーローと互角に戦ったことで、私達の名を世に知らしめるという目的は達成したようなものですし、そろそろ引き上げましょうか」


 ……なにやら御託を並べてはいるが、要するに勝てないから逃げるって事だよな。


「ただ逃げるだけだというのに、随分と偉そうな物言いだな。拙者たちが、はいそうですかと逃がすと思っているのか?」


 桃太郎さんも俺と同じような考えだったらしく、言いたい事を代わりに大体伝えてくれた。

 そして彼の言う通り、ヴァッサ達を逃がすつもりなんて最初から無い。


「そんなの勿論わかってるわよ。ただ、アテクシ達が逃げる為の策を持ってないと思ってるのなら大間違いよ」


 ジェネラルGはそう言うと懐から注射器を取り出し、近くで倒れていた鬼を掴み上げて、その首筋に注射針を刺す。


「そ、それってまさか!」


 注射器内の液体が鬼に注入されていくなか、ストームガールが驚いたような表情を見せる。


「そう、そのまさかよ。貴女達は超能力薬の工場を破壊したと思っていたみたいだけれど、既に別の場所でも作れるようになっていたのよ!」


 ジェネラルGは勝ち誇ったように胸を張りながらそう言うと、注射器を鬼から引き抜く。


「ちょ、超能力薬って、何だ?」


「服用することで超能力を得る事ができる薬品があるというのを、おばあさんから聞いたことがある。そんな物に頼って得た力に、何の意味があるかは知らんがな」


 俺の呟いた疑問に、桃太郎さんが答える。


「ほう、よく知っているではないか。ついでに教えておいてやるが、この超能力薬は改良されている。元より人間に比べて戦闘力は優れている鬼に超能力が合わさることで、最強に見えるのだ!」


 白目を剥きながら地面に横たわり、ガクガクと痙攣する鬼を見下ろしながらダースオーガが叫ぶ。


「なるほど、そいつは厄介かもな。それじゃあ早めに片付けておかないとな!」


 先手必勝。

 俺は鬼を焼き尽くすべく火を放った。

 ……燃え盛る炎が鬼を包み込まんとした瞬間、鬼の目玉がギョロリと此方を睨み付けたかと思うと、俺の放った炎は鬼を燃やす事なく消えてしまう。


「フフフ、これがオニの新しい力ですか。まるで生まれ変わったような、清々しい気分ですよ」


 立ち上がった鬼の口調……いや、纏う雰囲気などその全てが今までの鬼達とは明らかに異なっている。

 一人称がオニなせいで、色々と台無しになっている気はするが。


「そういう御託はいいんで、私達が撤退する時間を稼いでください。それが貴方の役目ですから」


「良いでしょう。ですが、オニが奴等を倒した暁には幹部の座を用意してください」


 興味無さそうに命令を下したヴァッサに、鬼は大きな口を叩きながら命令を承諾する。


「へえ、アタシを倒せるだなんて、自分の実力に相当自信があるみたいだね!」


 鬼を仕留めるべくストームガールは突撃していくが、鬼は慌てた素振りも見せずに彼女へと掌を翳した。

 次の瞬間、目の前で起きた現象に俺は目を疑ってしまう。


「うわっ! ほ、炎!?」


 鬼の掌から炎が放たれ、突然の事に狼狽えるストームガールへと迫る。

 奴が火を使うんなら、俺の出番だ!


「上に飛べ! ストームガール!」


 ストームガールは俺の声に従うように即座に上昇。

 彼女が無事に火を躱すのを見届け、放たれた炎を操り鬼へと放ち返す。


「……どういうカラクリだ?」


 しかし、先ほどと同じように炎は鬼を燃やし尽くすことなく消えさった。

 ……まるで、鬼の身体に取り込まれるように。

今回の話を読んでいただきありがとうございます。

ブクマ・ポイント・感想をもらえれば筆者のモチベーションが上がるので非常にありがたいです。

次回は来週日曜日の昼十二時投稿なので、読んでもらえたら励みになります。

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