3幕 ブレイズライダー2.5 ファースト・チェンジ(8)
「くっ……話には聞いていましたが、何と無茶苦茶な――あぁっ!?
ヴァッサは桃太郎さんの刀をかわしながら反撃を試みようとするが、突如として両手足に鎖が巻き付き、動きが封じられて呻き声を上げる。
「動きは止めた! やれ、桃太郎!」
いつの間にかヴァッサの近くに移動し、彼女を拘束している鎖を握りしめた雉鳴さんが止めをさすよう叫ぶ。
「弟子をいたぶってくれた分、しっかりとお返しさせてもらう!」
「させぬわ!」
桃太郎さんの目の前にダースオーガが立ち塞がり、互いに得物を打ち合わせる。
同時にヴァッサを拘束していた鎖が切断され、自由になった彼女はすぐさまその場から逃げるように離れる。
「逃げられるとでも思っているのか!」
「勿論、逃がすつもりよ!」
雉鳴さんがヴァッサを追いかけようとするが、その足元に光線が放たれる
即座に飛び退き回避するが、その代償にヴァッサの追撃を諦めざるをえなくなる。
「か弱い女の子相手に大の男が二人がかりで襲いかかるなんて、恥を知りなさい!」
「テロリストの仲間入りをして世界征服を企むのは、か弱い女の子とは言わん!」
全くもってその通り。
俺は雉鳴さんがジェネラルGと格闘する横をクロガネと共に通り抜け、離脱しようとするヴァッサを追いかける。
「俺を倒すんじゃなかったのか? 相手してくれよ!」
「しつこいですね! 水でも被って、大人しくしてください!」
近づいてくる俺目掛けてヴァッサが水の塊を放つ。
すぐさま蒸発させるべく拳に炎を灯そうとするが、俺とヴァッサの間にクロガネが割り込み、水塊を腕部から発生させた光の壁で防いだ。
「データに無い装備ですね。これほどの物を作れるなんて、多田さんを逃がしてしまったのが悔やまれます」
「君がヴァッサ……水城雨だな。妹から君の事は聞いている。手荒な真似はしたくないから、おとなしくしてくれ」
クロガネはヴァッサを目の前にして躊躇した様子を見せるが、彼女に響く事は無いだろう。
現に彼女は笑みを浮かべ、掌をクロガネに向けていた。
「そういう話は俺が何回もしたけど、聞く耳持たないから無駄だ!」
俺はクロガネを飛び越えて前に出ると、放たれた水流を炎で防ぎながらクロガネに忠告する。
「よくわかっていますね。私たちはもう、戦う以外に道はないんです!」
水と炎がぶつかり合った事により生じた蒸気の中を通り抜けたヴァッサが、俺目掛けて拳を突き出す。
「俺は何度も戦いたくないって言ってるだろ! お前が改心すれば、全部丸く収まるんだよ!」
突きだされた拳を払いのけ、カウンターに蹴りを放つが受け止められてしまう。
「貴方が私達の仲間になってくれれば争う必要もないんですけどね!」
「さっき俺にしつこいって言ったけど、そっちも大概だと――うわっ!?」
ヴァッサに足を引っ張られ、バランスを崩した俺は地面に倒れてしまう。
更にヴァッサは俺の足を手放すと、仰向けに倒れた俺の腹部に跨がるように座り込む。
「押し倒しちゃいました。さあ、これで逃げられませんよ」
「……俺だけに集中していて大丈夫か?」
俺がそう言うと同時に、クロガネの放った光弾がヴァッサに炸裂……しなかった。
突如として表れた水の壁に阻まれてしまい、クロガネの攻撃はヴァッサに届かない。
そう簡単にはいかないという訳だろうが、俺にはこれで充分だ。
「勿論、わかって――きゃあ!?」
上体を起こしつつ背中の辺りで爆発を起こして跳ね起きながら、その衝撃でクロガネに注意を逸らしていたヴァッサを弾き飛ばす。
「俺の能力ならこれくらい余裕だ。まさか、忘れてた訳じゃないだろうな?」
「大分疲弊していたようなので大丈夫と高を括っていましたが、読み違えましたね」
すぐさま態勢を立て直したヴァッサは笑みを浮かべたままだが、声色には僅かに悔しさを滲ませながら呟く。
……割りと無理はしてるのは確かだから読みとしてはそんなに間違っていなかったんだが、ここで手を抜いて負ける訳にはいかない。
「ブレイズライダー、随分と親しそうに話してたけど、知り合いなのか?」
「……親しかった訳じゃない。少し因縁があるだけだ」
周囲の機械人形へと光弾を放ちながら声をかけてきたクロガネに、簡潔かつ的確に俺とヴァッサの関係を説明してやる。
……本当の事とはいえ、元クラスメートだなんて言ってしまった日には俺の正体特定待ったなしだし、詳しく説明はできない。
「戦況が悪いみたいだし、作戦変更よ! 鬼と機械人形は各自好きに動きなさい! ヒーロー達と戦ってもいいし、周りに残っている馬鹿な奴等を襲ってもいいわ!」
突如として響いたジェネラルGの号令と共に、纏まって動いていた鬼達や機械人形が散会して思い思いに動き始めた。
半分程はその場に留まり俺達と戦うようだが、残りの半分は逃げずに観戦していた野次馬の元へと向かい出す。
「戦いはじめて結構経ってる筈だぞ! 何でまだ残ってる人がいるんだ!?」
近づいてくる敵の相手をしながら、離れていく敵に光弾を放つクロガネが驚いた様子で叫ぶ。
「それだけ馬鹿な奴が多いって事だ。兎に角、何とかしないと!」
俺も離れていく敵に炎を放って妨害するが、散っているせいか思うように数を減らす事ができない。
「そう簡単にいくと思って!」
ストームガールが叫び、敵を纏めて吹き飛ばす。
……しかし、流石のストームガールでも広範囲に広がってしまった敵を一度に倒せず、完璧に押さえ込む事はできない。
ここに至って周囲の人達もようやく自分の身に危険が迫っている事に気が付き逃げ出そうとするが、何の力も無い人にとっては鬼や機械人形でもかなりの脅威だ。
逃げ惑う人達と、鬼達の距離はどんどん短くなっていく。
「ブレイズライダー、ここは任せた!」
クロガネはそう言うと逃げる人達を助けるべく、周囲の敵を蹴散らしながら走り出した。
しかし、巨大な装甲服のクロガネの走るスピードは悲しいかな遅すぎる。
このままではクロガネがたどり着く前に、敵の魔の手が逃げる人達を襲ってしまう。
……仕方ない。
「クロガネ、先に謝っておく! すまない!」
「えっ? 今何か言った――」
クロガネが聞き返してくるが、彼が言い終わるよりも早く炎を操りその背中へと放ち、炎を爆発させてクロガネを敵と逃げる人達の間まで吹き飛ばしてやる。
「誰か、こいつの相手を頼んだ! 俺は逃げる人達の安全を確保する!」
同時に雉鳴さんがそう叫び、その場から姿を消す。
これでとりあえずは、野次馬どもが逃げる時間は稼げる筈だ。
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